混雑時のエレベーター待ち時間をなくし、ビルの付加価値とテナント・サービスが向上。セキュリティーシステム連動・エレベーター行先予報システム「ELE-NAVI(エレ・ナビ)」鉃鋼ビルディング(東京・千代田区)

出勤時のエレベーターの混雑解消は、大型オフィスビルの深刻な課題の1つ。オフィスビルのエレベーターの利便性と運用効率を飛躍的に高める三菱電機の「ELE-NAVI(以下エレ・ナビ)」は、その解決の切り札として期待されている。同システムをいち早く導入した、オフィス機能を中心とした大型複合施設「鉃鋼ビルディング」を訪ね、計画から採用の経緯と導入後の成果をうかがった。
(写真左)石橋 健次 氏 株式会社鉃鋼ビルディング 管理営繕部 担当部長 (写真中)髙谷 貴之 氏 株式会社三菱地所設計 設備設計一部 ユニットリーダー (写真右)寺山 直宏 氏 株式会社三菱地所設計 建築設計二部 ユニットリーダー

 東京駅に隣接し、1951年に戦後初の高層ビルとして竣工した「第一鉃鋼ビルディング」は、戦後復興の象徴であり、当時、来るべき高度成長期のビジネス活動に必要な機能を、すでに装備した未来志向の建築物でもあった。

 完成から約60年後、2012年にビル再開発が計画され、2015年に「鉃鋼ビルディング(以下・鉃鋼ビル)」は、前身の進取の気性を受け継いだ新オフィスビルとして竣工する。その中高層階用エレベーターに採用されたのが、三菱電機の「エレ・ナビ」だ。

 「エレ・ナビ」とは、利用者の行き先階に応じてエレベーターを割り当て、運行を自動制御するシステム。セキュリティーゲートを通ると、社員証などに登録された階に応じ、行き先階に向かうエレベーターが示され、誘導されたカゴに乗ると行先階ボタンを押さなくても、自動的に利用階まで到着する。

 「ゲートを越えると、エレベーターホールでほとんど待つことなく、目的のエレベーターにすぐに乗れ、自動的に利用階に到着する。その一連の動きがシームレスで、ゲートでセキュリティーカードをかざした瞬間にオフィスに着くような感覚がある」(鉃鋼ビル管理営繕部担当部長・石橋健次氏)。

 旧「鉃鋼ビル」では、混雑時には9階の最上階到着まで3分以上の時間を要したが、「エレ・ナビ」を導入した高層階エレベーターでは、セキュリティーゲート通過から24階まで約50秒で到達すると石橋氏はいう。

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「エレ・ナビ」の主な特長
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出勤時のエレベーターの混雑解消は今日のオフィスビルの大きな課題

 旧「鉃鋼ビル」に限らず、出勤時や昼食時のエレベーターの混雑解消はオフィスビルの大きな課題だ。設計に携わった三菱地所設計 建築設計二部 ユニットリーダー 寺山直宏氏はこう振り返る。

 「利便性の高さから、エレベーターのバンク単位で賃貸借を希望する企業があると考え、中・高層バンクはバンク貸しを設定した。この場合、同じ出勤時間に人がエレベーターホールに集中し、利用者には不便やストレスを与える例が多い。『鉃鋼ビル』の設計では、この問題をどう解消するかが課題だった。同時に、テナントにはより高度なサービスを提供したいという想いもある。『エレ・ナビ』は、その解決の切り札になると考えた。

 当時は納入例はほとんどなかったが、テナントの利益になる先進的なシステムであれば、将来のためにも積極的に採り入れたいとの施主の要望を受け採用が決まった」。

 意匠設計で腐心したのは、ゲートでの乗降エレベーターの指示と、実際に乗るエレベーターの表示の視覚的な連動、エントランスホールの雰囲気と、最新の設備や表示サインとの調和だ。また、カードリーダーとフラッパーゲートのアプローチ距離や反応時間なども検討した。

 「オフィスビルの設計では、オーナーのリーシングコンセプトを把握し、テナントを含めた多様なニーズに応えられる計画とすることが必要であり、最終的にはそれをビルのブランディングに統合しなければならない。エレベーターもビルのコンセプト具現化を支援する機能のひとつであると考える」(寺山氏)。

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図1: 「鉃鋼ビルディング」中高層階用エレベーター利用者数
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「エレ・ナビ」はオフィスビルの設計思想を進化させる可能性がある

 「エレベーターの台数や能力は当初より高く設定して設備設計に当たった。『エレ・ナビ』を導入することで、エレベーターの運行サービス基準は確実に向上する。ただし、セキュリティーシステムとの連携で成立する仕組みなので、ビルとしてどのようなセキュリティーシステムを構築するかを十分に検討しなければならない」と、三菱地所設計 設備設計一部 ユニットリーダーの髙谷貴之氏は言う。

 「エレベーターはハードとしては成熟した技術。今度は、建物や利用者に合わせた運用ソフトの進化と制御の高度化で、サービス向上と効率化を考える時代になる。『エレ・ナビ』はその先駆けと言っていい。今回はサービス向上が目的だったが、将来的にはエレベーターの進歩によってカゴや台数、コアを縮小でき、その分、床面積を広げ空間効率を高めることに期待したい」(髙谷氏)。

 図1のグラフは今年7月の出勤タイムの「鉃鋼ビル」の「エレ・ナビ」を導入した中高層階用エレベーターの運用状況を表したものだ。棒グラフの稜線は、1分当たりの利用者が20〜30名に収斂するゆるやかなカーブを描いている。26人乗り12台のエレベーターが効率よく運行している様子が窺える。「エレ・ナビ」がない場合、順次到着するエレベーターに人が殺到するような状況となり、グラフは極端な高低を繰り返す非効率な状態を示すと考えられる。

 「1分間に最大48名がエレベーターを利用し、その1分後には38名が利用している。非常にスムーズな誘導ができている」と石橋氏は見ている。

 「『エレ・ナビ』は今日的なユニバーサルデザインにかなうシステムだと思う。私たちは、ユニバーサルデザインの設計思想を超え、社会的弱者やハンディキャプトが直接設計に関わるインクルーシブデザインを実践している。こうした視点で、ユーザーとして『エレ・ナビ』をさらに進化させるお手伝いをしたい」(石橋氏)。エレベーターを次世代に進化させるシステムが動き始めている。

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