炎を遮る新しい価値 GULFENG® 燃えにくいだけでなく、炎を通さない、薄く、軽く、成形可能なテキスタイル素材が、東レの繊維複合・構造化技術で誕生した。

 近代建築の歴史は建築素材の工業化の歴史でもあり、新たなマテリアルが空間の質やデザインの自由度を高め、建築を進化させてきた。こうした素材と建築の関係の未来を予感させる革新的なマテリアルが、素材メーカー東レのR&Dで紡ぎ出された。難燃性と一定時間の遮炎機能を両立させた高機能不織布、織編物「GULFENG®(ガルフェン)」である。

 動画でわかるように、燃えにくい、燃え広がりにくい素材であるだけでなく、炎に晒されても焼け穴や燃え抜けが起こらず、遮炎により、反対側にある可燃物への引火や延焼を防ぐことができる。

炎の延焼を防ぐ「GULFENG®」の遮炎の仕組み

 開発成功の背景には、同社が推進する「繊維複合・構造化技術」がある。「GULFENG®」は、火力発電ボイラーのバグフィルターに使われる難燃・耐熱性を持つ熱可逆性繊維「PPS繊維」と、同じく難燃・耐熱性を有し、航空機のブレーキパッドや溶接用スパッタシートなどに用いられる炭素繊維の前駆体である「耐炎化糸」を複合した素材だ。

 PPS繊維は燃えにくいが約300度で溶解する欠点がある。一方、耐炎化糸は非溶融だが、糸としての強度が低い。東レの繊維複合・構造化技術を用いて、この2つの素材を複合することで、それぞれの欠点の補完だけでなく、従来からの特性に加え、炎を通さない新たな機能と価値が編み出された。

 「GULFENG®」を炎に晒すと、熱で溶けたPPS繊維が骨材の役割を担う耐炎化糸の隙間に膜状に広がり、酸素を遮断させた状態で加熱された耐炎化糸がグラファイト構造に転化、さらにPPSも炎の熱で炭化し、二つの素材が変化することで炎を遮る炭化膜になる。これが「GULFENG®」の遮炎の仕組みだ。

図1 遮炎メカニズム

薄く、軽く、成形可能で、遮炎できる素材で、建築の火災リスク軽減へ

 既存の難燃繊維素材は、遮炎には相応の厚みが必要であり、無機物の遮炎シートは柔軟性に欠け薄膜化も難しかった。これに対し「GULFENG®」は、薄さ60μの紙、織編物、厚手のフェルトと、最終用途に応じてさまざまな形態への加工が可能だ(わずか60μの厚みでUL-94規格*VTM-0クラス同等の性能を実現し、炎も遮断する)。

 難燃性と遮炎機能を有しながら、紙は折り曲げたり、ハサミでカットしたりでき、織編物は、衣類に用いる布と同様にしなやか、かつ、強靭で、縫製加工を施して立体的に可燃物を包むこともできる。

 厚手のフェルトは、保温性やクッション性、吸音性といった性能も兼ね備えている。

図2 製品ラインアップ

 一定量の接着剤であれば、遮炎性を維持しながら壁紙、床材、天井材、下地材などに貼り合わせることが可能なので、デザインの自由度を高め、日用品の防炎性能や建築防火工学に革新的イノベーションをもたらす可能性を秘めている。

 「GULFENG®」は、未来の建築や社会にどのような価値と市場をつくりだすのか。今後の展開に期待したい。

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