石川直樹

CHANGEMAKER #09

世界の果てだから野生の自分が出る。
そのとき出会った驚きをフィルムに収める。

写真家

石川直樹

ISHIKAWA naoki

2015. 12 .15 公開

interview : SAKIYA miho 
photo : KIM yongduck

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北極から南極までを人力で踏破。当時最年少で世界七大陸最高峰を登頂。ミクロネシアの島々を古代のカヌーで航海。石川直樹さんは常に文明の及ばぬ場所に身一つで訪れ、身体の限界に挑戦する。命のかかったぎりぎりの状態。眠っていた内なる野生が目を覚ます。フィールドをひたすら歩きながら世界をとらえ、驚き、恐れ、喜ぶ────。その瞬間、シャッターを切る。目の前に届けられた写真は、私たちの中に眠る五感を直撃し、世界を見る目を変えてくれる。

山に登ると、自分の中身が全部入れ替わる

── 今回は、北海道博物館で開催されている石川さんの写真展「Across Borders:」の会場で取材をさせていただくことになりました。

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北海道とカナダ・アルバータ州の両方で撮影した、風景、人々の暮らし、先住民文化などの写真を展示している「Across Borders:石川直樹写真展」。北海道博物館で2016年の1月17日(日)まで開催

「Across Borders:」では、北海道とカナダのアルバータ州姉妹提携35周年を記念して、北海道とアルバータで撮影した写真を展示しています。アルバータと北海道。突き刺すような冬の空気がよく似ているなあと感じました。
北海道で撮った写真で思い出深いのは、ウトロで撮影した流氷ウォークの写真ですね。知り合いの子どもたちと一緒に行きました。ウトロは、知床半島を観光する拠点となる町です。流氷ウォークはウトロでは、冬の人気のレクリエーションですね。ドライスーツを着込んでいるので、氷の海でも寒くない。

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その隣の写真は、この斜里の河口で撮影したザトウクジラの写真です。

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── なんだか、普通のクジラの生態写真と雰囲気が違いますね。海上でお腹を向けていて。すごく不思議な写真。

これは斜里川の河口に打ち上げられたザトウクジラの子どもです。だからお腹を上に向けている。前日に大きな嵐が来て、泳ぎの達人であるはずのザトウクジラが溺れて、港に浮いていた。それを見つけたのが夜だったので、こういう写真になっています。
昭和新山を撮影した写真も僕は好きですね。山がどうやってできたのか、よくわかりますから。

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有珠郡壮瞥町にある昭和新山の写真。昭和新山は、1944年から1945年にかけての火山活動で一気に形成されためずらしい山であり、国の特別天然記念物に指定されている

── わっ、山がいきなり大地から生まれてくるぞって感じが……。

溶岩ドームが盛り上がってできたわけですが、山の成り立ちがわかりますよね。昭和新山は、火山活動でできた若い山です。ちなみに、ここ数年通い続けているヒマラヤ山脈は、ユーラシアプレートにインド・オーストラリアプレートがぶつかって、大地が押されて少しずつ盛り上がっていったできたものです。

── 昭和新山って1944年、戦争中にいきなり畑が盛り上がって火山が噴火してできあがった、まさに昭和に生まれた山、というのは本で読んで知ってましたが、石川さんの写真を見ると、「山が生まれる!」って驚きがばーんと絵になっています。

プレートとプレートがぶつかって大地が盛り上がったり、火山活動でぼこっと膨らんだりして山は生まれていく。地球上のそういう出っぱりに、人間は一つずつ名前をつけて、登山をしているわけです。時々自分は何をやっているんだろう、と思いますよ。下から見るととてつもなく高く見える山も、地球レベルで見下ろせば、ただの大地の出っぱり。その出っぱりにわざわざ苦労して登る「登山」って何なんだろう、と考えることがあります。世界とは何か、山とは何か、人間はどうして生きているのか、そんな普段は考えないようなことを遠征中の長いベースキャンプ生活で、ぼんやり考えたりも。

── 登山をしない身からすると、なぜそんなつらいことに積極的に挑戦されるのか、と思うのですが……。

たしかに登山はつらい、というイメージがありますよね。たしかに実際に苦しいこともあるんですけど、それ以上に楽しいんですよ。言葉にできない喜びがある。それは実際に登ってみないとわからない(笑)。
雨が降ってきて、寒さに凍える。日暮れが近づいてきて、闇の到来に怯える。そうした経験は街に生きているとほとんどないですよね。こうした状況に追い込まれることによって、自分の強い部分や弱い部分がわかるし、たくさんの驚きや変化や発見がある。そういうことが嬉しいんです。

── じゃあ、山登りの一番の楽しさは?

特にヒマラヤの高峰を登ったときの感想ですが、山に登ると、自分が空っぽになってすべてが入れ替わる感じがするんです。
これは、短距離を全力疾走しても得られないんじゃないかと。息切れはしますが、走り終わったあともどうにか動けますよね。でも、標高8000メートルを超える山に登ってベースキャンプに帰り着くと、本当にくたくたになって動けなくなる。翌日は全身が痛くて…。自分の身体をぎりぎりまで使うからでしょうね。そんな「使い果たし感」があります。
こういう感覚は街ではなかなか得られない。水平方向の旅でもあまりないですね。垂直方向に向かう旅特有のものだと思います。最近は、1年に1回〜2回、そうしたヒマラヤ遠征を行っています。1年に2カ月から3カ月ほど遠征に出ることで、都市の生活で崩れたリズムや、ひずみのようなものを、いったんゼロに戻すことができる。

── 2015年には、パキスタンと中国の国境に位置する、世界で2番目に高い山K2に挑戦されていました。

今回は頂上に到達することができませんでした。
K2はエベレストと比べても格段に難しい山です。ここからいくと登りやすい、というルートが存在しない。どこから登っても非常にリスクが高い。今回も、雪崩や落石が頻発して負傷者も出ました。K2は少しの無理もきかない山ですね。

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極地にいると、自分が生き物であることを実感します。
ちょっとした風邪なのに、すぐに悪化して回復も遅い。指先に切り傷を負っただけなのに、それが登攀に影響するほどの致命傷になったりもする。自然界で病気だったり傷ついたりしている動物をあまり見かけないのは、そうなったら他の動物に襲われたりして、死んでしまうからでしょう。
明日動くために食べ、自分の体を整え、力を回復させるために眠り、高所に体を慣らすために深く早く呼吸する。極地では、常に自分の体の一挙一動が生きることに直結していることを意識しないといけない。

都市では、寒かったら暖房をつける。暑かったら冷房に切り替える。文明の利器を使い、周りの環境を変えようとする。でも、ヒマラヤや北極・南極のような極地では、自分の周囲の環境を変えることができません。ヒマラヤなら高所順応をして薄い酸素の中でも動けるように体を慣らし、自分を変えていかないといけない。
生き延びるためには、まず自分自身が変わらなければいけないわけです。都市での生活は逆ですよね。僕はまわりを変えるのではなく、常に変幻自在の自分でありたいと思うんです。柔らかくしなやかな精神を持っていたいな、と。

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CLÉ DE CARTIER ─ SIMPLE IS AN ART ─

Style

シンプルで美しいフォルム

CLÉ DE CARTIER写真

クレ ドゥ カルティエ ウォッチ WG(ブレスレット)40mm ¥4,600,800

Style

シンプルで美しいフォルム

カルティエのすべてのタイムピースは、建築物を構想する際と同様のアプローチで、3次元の観点から設計される。個性的かつ複雑なラインで構成されるフォルムは、一目でカルティエと分かる強いオリジナリティを持つ一方、一切の無駄をそぎ落としたピュアでシンプルなスタイルへと昇華される。

カルティエの新コレクション「CLÉ DE CARTIER」も、もちろん例外ではない。完璧な円を基調としながら、それを凛としたカーブが取り囲むデザインからは、全く新しいフォルムを見出そうとする意思が汲み取れる。
ケースサイドは、流れるようなアーチを描き、滑らかにして自然。人間工学も考慮され、手首に心地よくフィットする。丸みを帯びたベゼル、次第に細くなるラグ……、計算し尽くされたディテールが、ひとつになって完璧に調和し、気品に満ちた秩序を生み出している。

斬新でありながら、以前から存在していたかのような、時を超えた本質的な美を、目で、そして身に着けたときに肌で、感じることができるに違いない。

CLÉ DE CARTIER クレ ドゥ カルティエ

─ Cartier - カルティエ オフィシャルサイト ─