NPO法人 TABLE FOR TWO International 代表理事 小暮真久氏interview 自分の「想い」に向き合うとは、どういうことなのか 天職に巡り会えたと実感できる生き方を考える


VOL.1 ソーシャルビジネスが世界の潮流に

なぜソーシャルビジネスが世界で注目を浴びているのか

小暮真久氏

小暮真久(こぐれ・まさひさ)氏
1972年東京生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、1999年スインバン工科大学にて修士号取得。マッキンゼー・アンド・カンパニー東京支社入社。2005年松竹株式会社入社、事業開発を担当。2007年NPO法人TABLE FOR TWO Internationalを創設、代表理事に就任。先進国の肥満と開発途上国の飢餓という2つの問題の同時解決を目指す日本発の社会貢献プロジェクト「TABLE FOR TWO」を主導する。シュワブ財団(スイス)が表彰する「アジアを代表する社会起業家(2011年度)」賞の5人の1人。 著書:『「20円」で世界をつなぐ仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)、『20代からはじめる社会貢献:400社が支援した「社会起業」とは』(PHP研究所)、『社会をよくしてお金も稼げるしくみのつくりかた』(ダイヤモンド社)

 最近、「ソーシャルビジネス」という言葉をあちらこちらで耳にする。「ソーシャルビジネス」とは、貧困や飢餓、地球温暖化など社会が抱えているさまざまな問題を解決するための事業活動を指す。一般の企業が本業の傍で社会貢献活動をするのとは異なり、ソーシャルビジネスは社会事業そのものが本業だ。
 一般の企業と同様に、結果を出さなければならないし、業績が悪ければ経営の責任も問われる。
 ただし、一般の企業が利益を最大化し、主に株主に還元しようとするのに対して、ソーシャルビジネスは、社会を変えるための活動に利益を投じる。つまり、社会的な課題をビジネスの手法で解決するのが、ソーシャルビジネスなのだ。

 こうしたソーシャルビジネスは米国を中心に世界各地で続々と誕生していて、今や世界の大きな潮流になりつつある。実際、米国ではコロンビア大学やスタンフォード大学など、トップクラスのビジネススクールに当然のように社会起業のクラスがあり、履修希望の学生も増加傾向にあるという。例えばコロンビア大学ビジネススクールで社会事業関連のクラスを希望した学生は、10年前には全体の3%~4%に過ぎなかったが、数年前から約50%が履修する盛況ぶりだ。
 ビジネススクール卒業後の進路にも変化が生じている。以前までは、卒業後はファンドに行くか、コンサルティング会社にいくか、自ら起業するのが定番だったが、近年ではソーシャルビジネスの世界に飛び込むMBAホルダーが増えているのだ。
 実際、学生の就職志望動向に詳しい米調査機関Universumによる米国大学学部学生の人気就職先ランキング(文系部門)では、グーグルやアップル と並んで「Peace Corp」(米国版の青年海外協力隊)や「Teach for America」(貧困コミュニティ向けの教員派遣機関) といったソーシャルビジネスのNPOがトップ10に食い込んでいる。

メタボと飢餓を同時解決する日本発のソーシャルビジネス

 前述のような欧米の潮流の中で、日本発のソーシャルビジネスとして世界的に注目されているのがNPO法人 TABLE FOR TWO International (TFT)だ。食の不均衡是正をテーマに掲げて活動している。
 TFTの代表理事、小暮真久氏は次のように説明する。
 「今、世界では10億人が十分な栄養を摂取できない貧困状態にあるんですが、先進国では20億人近い人々が食べ過ぎによる肥満や生活習慣病の問題を抱えています。この食の不均衡を解消して、開発途上国と先進国の双方の人々を健康にすることを目的に2007年に設立しました。ですからTABLE FOR TWOという名称も『2人のための食卓』を意味しています」

 具体的な仕組みは、社員食堂を持つ企業に低カロリーで栄養バランスのいい特別メニューを提案して採用してもらい、価格に20円上乗せして社員に提供する。社員がこのメニューを注文した場合、上乗せ分の20円がTFTを通じてアフリカ・アジアの子どもたち(現在はシリア難民にも対象を広げている)の給食費に使われる。現地では約20円で1食分の給食がまかなえるのだ。つまり、我々が20円多めに払って健康メニューを食べてメタボ解消を実行できると同時に、アフリカの子どもも一食分食べられるのである。2つの社会問題を同時に解決する画期的な“ビジネス”だ。
 創業時の2008年には100万食にも満たなかった寄付食数は、2011年に1000万食になり、2015年には3700万食にまで増えている。現在、700社の企業がTFTの活動に賛同し、社員食堂で特別メニューを提供している。

日本こそソーシャルビジネスで力を発揮すべき

 ソーシャルビジネスは、利益を株主に還元するのではなく社会貢献に役立てる点で一般の企業とは多少最終目的が異なるが、決して特殊な事業ではない。TFTは、東日本大震災前から活動してきた。かつては企業に協力を求めて回っていると、まるで革命家が訪ねてきたかのように怪訝そうな顔をされることも多かった。社会貢献活動をしているというだけで、企業側にはそんなイメージを持たれていたようだ。だが、東日本大震災以降は日本全体で社会貢献の空気が強まったと小暮氏は言う。
「企業による復興協力が活発化し、単なる利益追求で終わるのではなく、社会のためになる活動をしたいという空気が醸成されてきました。企業による復興への協力は本当に大きな力になっています。個人レベルでもボランティア活動の裾野が大きく広がるなど、社会の役に立ちたいという意識が高まったと思います」

 人生をどう生きるかという意味でも大きな影響があったと小暮氏は言う。
「株主から利益率を上げろと突き上げられて、数字だけを見て仕事をしているうちに、ふと『自分の仕事にどんな意味があるのか。それよりも社会に貢献できる何かをしたほうがいいのではないか』…。そんな想いを抱く人たちが増えているのは確かです」
 TFTに対する企業の理解も飛躍的に深まっている。例えばトヨタは、2011年から社員食堂でTFTメニューの提供を開始し、当初は本社地区の17食堂のみであったのが、2015年には、全拠点の62食堂に広がった。

 日本とソーシャルビジネスの相性は悪くないと小暮氏は言う。
「そもそも日本にははるか昔から『三方よし』のような社会貢献の精神がありました。また、世界に出てみると、日本人のモラルはとても高いことがわかります。そういう意味では、企業の事業活動として社会事業を取り入れていくのは日本の得意とするところだと思います。日本が世界に手本を示すべきではないでしょうか」
 日本にはソーシャルビジネスの素地が十分にあると小暮氏。
「こういう精神がすでに社会に根付いている日本だからこそ、ソーシャルビジネスがもっと育って欲しいし、ぜひ世界に出て力を発揮してもらいたいですね」


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