[シリーズ] 一億総活躍社会の雇用 人手不足の時代を勝ち抜く生涯現役の実現
日本の高齢化率が21%を超え「超高齢社会」となってから、まもなく10年を迎えようとしている。
今なお65歳以上の高年齢者は増え続け、平成27年のデータでは総人口に占める割合も26.7%と過去最高を更新した。
少子化による労働力人口の減少が見込まれている中、一億総活躍社会の旗印が掲げられ、企業にとって高年齢者の雇用は差し迫った重要課題となっている。
いかにして高年齢者の高い就労意欲と経験、技能を役立てるか。企業が実践すべき新たな改革の指針を探る。

Special Interview

就業ニーズの多様化を認め、多様な働き方の提示を

 平成27年度「高年齢者の雇用状況」集計結果によれば、65歳までの従業員の安定した雇用を確保するために何らかの措置を実施している企業の割合は99.2%に上る。「法令で定められているということはもちろんですが、人手不足という企業側の事情もあり、ほとんどの企業が希望次第で65歳まで働ける環境に向かってきたことは間違いありません。平成29年1月から65歳以降に雇用された場合も雇用保険に加入できるようになることも、今後の追い風となるでしょう」と北浦正行氏は語る。とりわけ、ものづくりの現場においては、技術者に長く勤務してもらいたいというのが顕著だという。「経験ある人材は、豊富な知識と高い技術を持つ企業にとっての財産でもあります。それをいかにして残し、伝承していくかを、企業は考える必要があります」。

企業の人事担当者への調査によると、高年齢者の仕事ぶりに対し専門能力 (専門知識・熟練技能等)をはじめ、総じて満足度が高い。
※「60歳代前半層」とは、59歳以前に正社員として雇用し、かつ60歳以降も 正社員、または非正社員として雇用する60〜64歳の社員のことをいう
出典:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「高齢者の人事管理と 人材活用の現状と課題─70歳雇用時代における一貫した人事管理のあり方 研究委員会報告書─(平成26年)」
労働省に入省し、各局勤務を経て平成8年退職。同年(財)社会経済生産性本部(現日本生産性本部)に入職。「平成27年度生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」講師。武蔵大学客員教授。

 多くの高年齢者が継続雇用される一方で、高年齢者の有効求人倍率は低く、再就職の厳しさが指摘される。こうした実情の中、「雇用機会の増大が見込まれるサービス業では、今後、高年齢者の活用が進むでしょう。最近では、介護関連の求人も多くなっているようです」と北浦氏は分析する。年齢と経験を重ねてきた高年齢者の持つ人間関係を築くスキルが、対人サービスに期待されているためだ。

 定年後も継続して働きたいと考える高年齢者にとって、その働く動機やニーズは多岐にわたる。その現状を踏まえ、「高年齢者を一律に捉えてしまうのは良くない」と北浦氏。「経済的な事情で長時間働きたいという人がいる一方、短時間だけ働きたいという人もいます。体力や健康の差もあるでしょうし、経験値だってそれぞれ異なります。こうした多様性を尊重し、各人の希望に見合った多様な選択肢をいかに用意できるか。それこそが高年齢者の継続雇用における最大の課題です」。個人の個性と自主性を認めながら、企業がいかに成長していくか。まさにダイバーシティの思想だといえる。

多くの企業が、高年齢者の雇用には、本人のモチベーション維持・向上が課題と感じている。就労意欲にも個人差があるため、多様性を認めた上で、個々に見合った選択肢の提示が重要になる。
出典:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「高齢者の人事管理と人材活用の現状と課題-70歳雇用時代における一貫した人事管理のあり方研究委員会報告書—(平成26年)」

 一方で新たな課題も浮き彫りになっている。「生涯現役を目指すなら、高年齢者自身も組織に寄りかからずに自立することが大事です」と北浦氏は指摘する。「組織や立場に依存するのではなく、組織とちょうど良い距離感を保つことが理想的です。そのためにも、定年を迎えるまでに目指すべき自分自身の姿を、キャリアの節目ごとに見直していく必要があります」。定年が近づいてくると、モチベーションを失うバーンアウト(燃え尽き症候群)に陥る人が多いといわれる。先々のキャリアを見据え、定年をポジティブに捉えることが、こうした事態の回避にもつながる。もちろん、ビジョンを描くだけでなく、日頃からの自助努力や能力開発を怠らないことも重要だ。

 企業にとっても、高年齢者が働きやすい環境づくりが求められる。「一つは設備の改善が挙げられます。重い物を運ぶ工程を機械化したり、つまづくのを防ぐために通路を広くするなどです。また、年を重ねるにつれ、一般的に抵抗力も低下します。高い温度や機械の騒音などといった環境が、少なからず体に影響を及ぼすこともあるため、できる限り快適な職場環境を保つようにしたいところです」。「これら環境面の改善は、結果的に全社員にとって働きやすい職場環境に通じます。だからこそ、投資する価値がある」と北浦氏。高年齢者のための職場環境改善には、高年齢者雇用安定助成金などの制度もある。そういった支援制度の活用を検討するのも、ひとつの手段となる。

高年齢者雇用安定助成金(高年齢者活用促進コース)

高年齢者の活用促進のための雇用環境整備の措置を実施した事業主に対して
支給される助成金。支給対象となる措置は主に以下の通り。

(1)高年齢者が働きやすい新しい事業分野への進出等
(2)高年齢者の就労機会を拡大するための機械設備、作業方法、作業環境の導入・改善
(3)高年齢者の就労機会を拡大するための雇用管理制度の導入・見直し 
(4)高年齢者に対する健康管理制度の導入 
(5)定年の引き上げ等
支給額 費用の3分の2(中小企業以外は2分の1)

または、活用促進措置の対象となる1年以上継続して雇用している60歳以上の雇用保険被保険者1人につき20万円(下記(a)〜(c)に該当する場合は30万円)のいずれか低い額(上限1000万円)

(a)建設・製造・医療・保育・介護の分野に係る事業を営む事業主
(b)65歳以上の高年齢者(高年齢継続被保険者)の雇用割合が4%以上の事業所
(c)上記(2)の措置を実施した事業主
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Archive
2014年
経験、知識とスキルある高年齢者の戦力化
2015年
シニアの活力が企業を救う働き続けられる環境整備が鍵
最新の好事例・制度を知る「エルダー」

高年齢者雇用の好事例や助成金制度、高年齢者雇用問題等を取り上げた事業主向けの月刊誌。毎月1日発行。デジタルブックも公開中。

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高年齢者雇用開発フォーラム開催

10月の「高年齢者雇用支援月間」に合わせて「高年齢者雇用開発フォーラム」を開催。高年齢者が働きやすい職場環境改善事例を募集した「平成28年度高年齢者雇用開発コンテスト」の表彰式や記念講演、トークセッションなどを実施。

開催日 平成28年10月5日(水) 午前10時〜午後4時30分 場 所 イイノホール(東京都千代田区) プログラム 高年齢者雇用開発コンテスト表彰式 神代 雅春 氏(一般財団法人日本予防医学協会理事長)による記念講演 事例発表・トークセッション
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