ナイジェリアのコンクリート建造物の品質検査を行う日東建設の現地スタッフ

第2章 - その1:中小企業の力は、アフリカで2度輝く
インフラ検査・農業の土壌改良・リサイクルで燃料づくり

2016年8月末、ケニアの首都ナイロビに100社を超える日本企業が集結しました。

第6回アフリカ開発会議=TICAD Ⅵに参加するためです。

かつて、アフリカに対する日本の経済協力は、さまざまなインフラの整備であり、アフリカでのビジネスといえば、石油やレアメタルなどもっぱら「資源」が主流を占めていました。そのアフリカでは今、経済成長に伴い、資源以外のビジネスの芽がいくつも生まれています。

アフリカは今、日本企業に何を期待しているのでしょう。前回は、ITを駆使したベンチャー企業が、「キオスク」を舞台に、「健康」と「電力」をアフリカの人々にもたらす話を紹介しました。今回、取り上げるのは、日本の地方の中小企業です。

TICAD Ⅵ の会場には、日本国旗と並んでアフリカ各国の国旗がはためく

アフリカで活躍する日本の中小企業は、どんなビジネスを展開しているのでしょうか?
日本の下町製造業お得意のモノづくり? きめ細かな小売りサービス? 

今回取材させていただいた3社はいずれとも異なりました。

1、日本では普及してすでに「当たり前になった技術」を、
2、これから経済が発展するアフリカに持ち込み、
3、日本クオリティの「安心安全」「環境にやさしい」ビジネスとして普及する。

というものだったのです。

アフリカの多くの国では、経済成長が始まったばかりでインフラが整備途中だったり、食料の自給率が低かったり、電力やエネルギーに事欠いている状態が、まだまだ続いています。日本ではとっくに解決されている分野の仕事が、アフリカにはたくさん現在進行形で残っている。

日本では、市場が飽和していたり、すでに需要が満たされてしまったりした仕事が、アフリカにおいては、欠かすことのできない重要な役割を果たす。そんなチャンスに気づいた中小企業が、アフリカを目指しているというのです。

今回は、JICAの中小企業連携の仕組みを使って、いまアフリカでビジネスを展開する3企業にお話をうかがいました。いずれも、東京や大阪などの都会に本社があるわけではなく、北海道、鳥取、そして広島と、地方の会社です。最近元気がない、と言われることの多い地方企業が、日本では出番が少なくなった技術を携えて、遠くアフリカの地にビジネスチャンスを求めて切り込んでいる。なんとも勇気の出る話を、どうぞ!

その1: コンクリートの品質チェックで、
アフリカのインフラを安全に!

ケーススタディ 日東建設
北海道紋別郡雄武町→ナイジェリア

オホーツク海に面する人口5000人に満たない北海道紋別郡雄武町。そこに本社を置く日東建設は、土木建築のほかにコンクリート構造物の健全性診断が得意な会社です。

オホーツク海に面した雪深い北国の本社から熱帯のナイジェリアへ

同社は、アフリカ最大の人口を抱えるナイジェリアで、コンクリート製の道路や橋、各種建築物の強度検査に活躍しています。

なぜ、北海道の建設会社がナイジェリアで仕事を? 取締役で技術開発部部長の久保元樹さん、技術開発部開発課の岡本真さんに話を伺いました。

技術開発部部長の久保元樹さん(左)、技術開発部開発課の岡本真さん(右)

―ナイジェリアでどんなビジネスを展開しているのですか?

JICAが行っている平成25年度(2013年度)の普及・実証事業として、道路橋梁に代表されるコンクリート構造物の点検機器の販売と技術指導を行っています。

ナイジェリアは、鉄道がほとんどなく、内国交通の9割以上を道路交通に依存しています。にもかかわらず、その道路や橋など交通インフラの品質はばらばらでした。整備したばかりの道路が開通数カ月後に凸凹になってしまったり、せっかくかけた橋にすぐヒビが入ってしまったり。

そこで、私たちの出番となりました。長年培ってきたコンクリートの品質検査の技術を駆使して、道路や橋、その他コンクリートを使った建造物の強度を検査しています。ナイジェリアの交通インフラの品質管理を行い、経済発展の礎となる。それが私たちのミッションです。

—どうやって調べるんですか?

点検にはコンクリートテスターを使います。一般的な測定器はバネ式で、測定には力が要りますし、向きによっては正しく測定できないこともあるのですが、当社のコンクリートテスターはハンマー状のもので叩くだけなので、楽に測定できます。

コンクリートの柱をテスターで検査中、アブジャ郊外の橋梁にて

このテスターはもちろん日本でも使われています。コンクリート建造物の残存強度の確認のほか、現在進行中の工事をスムーズに進めるためにも利用されます。コンクリートの建造物は、型枠に生コンを流し込み、強度が十分になったことを確認してから型枠を外します。その型枠を外すまでの時間を短縮するため、十分な強度が得られたかをこのテスターで確かめるのです。

—私の暮らすエチオピアでも数年前、世界中からVIPがやって来る大きな国際会議の直前、中国企業によって突貫工事でメインロードが整備されましたが、会議が終わってVIPが帰国された途端、その道路に穴が空きました。アフリカはどこも似たような問題を抱えているのが現実ですが、そんな中で進出先としてナイジェリアを選ばれたきっかけは何だったんですか?

ナイジェリアは人口が1億7000万人、アフリカ1の巨大市場です。そのうえ内国交通の9割以上を道路交通に依存しています。ならば、コンクリート検査の需要も大きいはず――というのは後づけの理由です(笑)。

コンクリートの壁をテスターで検査中、アブジャ郊外の橋梁にて

2012年に、イギリス・スコットランドのエディンバラで開かれた学会に出席したときに、ナイジェリア人のビジネスパーソンと知り合い、当社のコンクリートテスターを試してもらうことになりました。その結果、このテスターを気に入ってもらい、追加注文してもらうほど評価され、ナイジェリアの企業とパートナーシップを得られたからというのが、実際の理由です。

ただし、本格的にアフリカへ進出しようと思った一番のきっかけは、日本の市場変化です。日本の公共事業が下火になり、当社のコンクリート検査技術を活かせる場が減ってしまった。

一方、発展途上国はかつての日本と同じ成長の道筋を必ず通ります。つまり、道路や橋、建物といったコンクリート製のインフラがどんどん増えていく、という。そう考えると、世界中に当社の技術を活かせる場はたくさんある。

現地技術者に対して実習内容を説明している状況、アブジャ郊外の橋梁にて

当初は、アジアやアメリカなどで実績を積みました。そしてJICAの民間企業支援の制度を利用し、ナイジェリアで本格的にビジネスを始めたのです。

—ナイジェリアで実際にビジネスをしてみてトラブルは?

ご存じの通りナイジェリアでは過激派組織「ボコ・ハラム」によるテロ行為や誘拐行為がしばしば起き、治安が悪化します。そのときには移動のたびに警備員のプロを雇わなければなりません。当然コストがかかります。

それから、ナイジェリア人はビジネスに結構シビアなんです。

アフリカに進出するとき、とある専門家に言われました。
「ナイジェリアでビジネスができれば、アフリカのどこへ行ってもうまくいくよ」

ナイジェリアでのビジネスでは、粘り強さが求められます。また、彼らの「チャンスを逃すまい」とするエネルギーとバイタリティには驚かされます。ただ、当社は最初にナイジェリア人のパートナーをヨーロッパで見つけることができたおかげで、彼を通じて安定的に仕事を広げることができました。

現地女性技術者によるテスターを使った検査状況
誰にでも簡単に使うことができます。アブジャ郊外の橋梁にて

—JICAと中小企業の連携についてはいかがですか?

非常にありがたいですね。当社はアフリカではまったく無名の存在ですから、アフリカで知名度の高いJICAの事業に採択されたことはナイジェリア政府に対して大きなアピールになりました。JICAから適切な面談相手などを紹介してもらえたこともメリットでした。当社のような地方企業が海外進出して現地の経済発展に協力しながら事業を伸ばそうと考えるとき、JICAとの連携は有効な選択肢になると思います。

—私がいまビジネスをしているエチオピアも道路ががたがたなんです。ぜひ進出して、道路の品質向上のために活躍してください!

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