サラヤは、ウガンダの衛生環境を改善するアルコール消毒剤を現地生産している

その2:CSRから始まった
アフリカとの関係は次のステージへ

サラヤ×ウガンダ

サラヤは、CSRの世界では先進的な企業として広く知られています。社長の更家悠介さんは、私を含めアフリカでビジネスを展開する経営者にとって、尊敬すべき目標のおひとりです。

サラヤを率いる更家悠介社長

たとえば、石鹸の原材料であるパーム油は、アブラヤシからとれるのですが、このアブラヤシはマレーシア・インドネシアのプランテーションで栽培されています。結果、多くの熱帯雨林がプランテーションとなり、生物多様性が損なわれてきました。サラヤは、同地での熱帯雨林の再生プロジェクトにいち早く着手し、「ヤシノミ洗剤」など対象商品の売り上げの一部を還元して熱帯雨林の再生に努めています。

アフリカでは、2010年からウガンダでユニセフが展開する石鹸を使った正しい手洗い促進活動を支援する「SARAYA 100万人の手洗いプロジェクト」というCSR活動を展開しています。

ウガンダの村で「100万人の手洗いプロジェクト」を実施中

しかもそのきっかけは、もともと青年海外協力隊の隊員としてウガンダで活動していた宮本和昌さんというキーパーソンとの出会いがあったからでもあるのです。

詳しくは日経ビジネスオンラインで過去に掲載された『池上彰のアフリカビジネス入門』をご覧ください。宮本さんの活躍もあって2011年に現地法人を設立した同社は、2014年からはウガンダでアルコール手指消毒剤の製造、販売も行っています。

アフリカの公衆衛生の改善とビジネスの発展の両立を目指してきた更家社長に、TICAD Ⅵのジャパンフェアの会場でお会いすることができました。現在のビジネスの課題とTICAD VIの感想を中心に話を伺ってみましょう。

―サラヤはもともと手洗いプロジェクトでウガンダに進出されましたが、その後の状況はいかがでしょうか?

先日、ウガンダ入りしたときに入国審査官に「あなたはサラヤって言うのか。サラヤっていう会社を知ってるぞ。石鹸の会社だ」と言われました。日本では、ご年配の方に、「昔、学校でサラヤの緑色の液体石鹸で手を洗っていたよ」とよく言われるのですが、それと同様にウガンダでも手洗いプロジェクトの効果がずいぶん広がったのかなとうれしく思いました。

2010年からスタートした「SARAYA 100万人の手洗いプロジェクト」は、ウガンダ各地に手洗い施設をつくり、石鹸を供給し、学校で手洗い教育を実施しました。その成果がようやく見えてきたといえます。

2015年には、120万人のウガンダに暮らすお母さんたちへの啓発が進み、ガイドブックの配布や学校教育の補助もあり、簡易手洗い施設も普及しました。結果、啓発運動を行う前は、トイレに行ったあとに手洗いをする人の比率がたった14%だったのが、2015年には33.2%にまで向上しました。

ウガンダの村で手洗いを実践指導する

さらに、病院での院内感染を防ぐためにアルコール手指消毒剤の使用普及を行う「SARAYA 病院での手の消毒100%プロジェクト」を、ウガンダからスタートして進めています。

ウガンダの病院を回り医師や看護師にアルコール消毒剤の有用性を説明

ただ、ビジネスの側面から見ると、現状はマーケティングの第一段階を終えたくらいです。ウガンダの人たちの健康に寄与しながら、ビジネスを広げていくのはこれからです。次のフェイズに入りつつあるという感触も得ています。

―そのときにハードルになるのは何ですか。

人材育成です。信頼できる現地のマネジャークラスの育成が課題です。日本人だけでアフリカにおけるビジネスをマネジメントするのは限界があります。日本人に代わってマネジメントもできる人材をウガンダで育てたいです。そうすることでよりきめ細かなサービスを提供でき、中国企業などライバル企業との差別化も図れるでしょう。

―ほかに課題はありませんか?

先ほども触れましたが、ウガンダではアルコール手指消毒剤を国内で生産しています。ただし、アルコールは取扱注意の商品ですし、イスラム圏では使えない場合もあります。このため現段階では、東アフリカ地域以外へ広く普及させることは考えていません。必要な場所で生産しないと、コストも見合いませんから、アルコールを使わない商品については、ウガンダからほかのアフリカの国へ出していきたいと考えています。

ウガンダで製造しているアルコール消毒剤

ウガンダを拠点にアフリカ全域を商圏とするには、アフリカの物流インフラが不十分で難しい点が多いですね。たとえば、日本からケニアのモンバサ港へは約1ヵ月で船便が届くのですが、そのモンバサからウガンダの首都カンパラまでそれを陸送するのにまた1カ月かかります。こういった物流網の整備は一企業にはできません。これまでは、アフリカの現地政府と日本の国際協力が、こうしたインフラの整備を積極的に進めてきました。今後は2015年に国連が定めた新たな目標「持続可能な開発目標」(SDGs)に即した活動が企業に求められます。JICAをはじめとした政府機関には、インフラのさらなる整備に加えて、資金面や現地との仲介などを含めた企業支援を期待したいところです。

―アフリカで初めて開催されたTICADの印象はいかがですか?

日本企業とアフリカ市場の関わり合いが可視化された、という側面がとても大きいですね。私たちにとっても、さまざまな分野の企業がアフリカで活動を開始していることを「ジャパンフェア」の会場を回って知ることができ、とても有意義でした。安倍首相をはじめ、政府の要人も来訪し、日本にとってアフリカの市場が将来有望であること、アフリカにとって日本の国際協力が必須であることを、日本、アフリカ双方の人々に実感いただけたと思います。アフリカで日本企業がこうして集まる機会を、今後も増やしてほしいですね。

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