後編
パナマ市の下水が、パナマの海と漁業を破壊する? 救ったのは、日本の下水処理技術でした

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太平洋と大西洋の魚がいっぺんに集まる市場

私が訪れているのは、パナマの首都パナマシティの海岸沿いにある水産市場「マリスコ市場」です。
ご覧ください。日の丸が掲げられています。

日本の協力で1995年に完成したパナマ市水産市場

この市場、1993年から1995年に日本の無償資金協力で約8億円を投じた「パナマ市水産市場・水産物流基盤整備計画」の一環で完成したものです。

パナマ市水産市場の場内には、太平洋と大西洋の魚が一緒に売られています

マリスコ市場ができるまで、パナマの魚市場は道端に直接魚を並べる簡素なもので、衛生上問題がありました。マリスコ市場の開設で、パナマの魚介類の消費は伸び、市場の隣には一般消費者が気軽に魚介類を購入したり、その場でシーフードを堪能したりできるシーフードレストランも併設され、週末ともなるとパナマシティの住民がとれたての魚介類を味わっています。

水産市場の隣には、一般市民や観光客がとれたての魚に舌鼓を打つ、
シーフードレストランが

マリスコ市場の脇には船着き場があり、小さな漁船が並んでいます。ここから漁師たちが太平洋に船を走らせ、毎朝新鮮な魚を市場に直接水揚げするというわけですね。

市場とシーフードレストランの先には、小さな漁港に漁船がいくつも浮かんでいます

ちなみに市場の向かいの小高い丘には、パナマの旧市街でスペイン領時代の面影が残る世界遺産「カスコ・ビエホ」があります。一時は治安が悪かったそうですが、現在は古い建物を生かしてリノベーションし、小売店やレストラン、カフェなどが入居し、パナマの観光地としてにぎわっています。

パナマ旧市街カスコ・ビエホは、世界遺産にも登録されています

カスコ・ビエホには、パナマ運河博物館があり、パナマの歴史をひとまとめで知るにはうってつけです。私もここで勉強をしてきました。

カスコ・ビエホにあるパナマ運河博物館。
パナマの歴史を楽しく学ぶことができました

それではマリスコ市場の中を歩いてみましょう。
さまざまな魚介類がところ狭しと並んでいます。タイなど、日本人になじみのある魚も並んでいれば、見覚えのないエキゾチックな魚も並んでいます。

市場に並ぶ魚は、日本の魚市場では見かけない種類がけっこう多い

大西洋からはイセエビ、太平洋からはキハダマグロ

大西洋の代表的な魚介類、それは魚ではなく、イセエビの仲間とカニです。ちゃんと生きたまま並んでいます。イセエビの仲間は2尾で日本円にして1600円ほど。日本人の感覚からすると、非常にお買い得です。イセエビとカニは、大西洋岸のサンゴ礁でとれるそうです。

生きたイセエビとカニは、水の奇麗な大西洋岸のサンゴ礁でとれるそうです

太平洋の代表的な魚介類。それはキハダマグロです。こちらも1キログラム500円ほど。パナマシティが面している太平洋側の魚種は、キハダマグロのように外洋の魚が多いそうです。海産物として重要なキハダマグロについては、日本の協力で人工養殖に向けた調査も近年行われました。

キハダマグロは太平洋側の沖合でとれるそうです。
日本の協力で人工養殖の可能性も

太平洋と大西洋の魚介類が同時に水揚げできる。パナマの水産業は実に恵まれた環境にあるといえるでしょう。

水産市場の内部には、氷を大量生産する製氷施設も完備しています。この施設も日本の協力でできたそうです。パナマは熱帯地方の常夏の国。その国で水産業を発達させるためには、近代的な冷蔵冷凍技術が欠かせません。魚の扱いに関しては、日本は世界トップ。日本の水産業のノウハウが、パナマのこのマリスコ市場に生かされているわけですね。

この市場とこの製氷施設ができるまで、
パナマ市の魚介は不衛生な状態で売買されていました

しかし、パナマの水産業は、近年深刻な環境問題の影響を受けていたのです。