デジタルトランスフォーメーション デジタルの力で未来を変える

Microsoft Foresight Report 01 最新デジタル技術が可能にする日本の第四次産業革命製造業におけるデジタルトランスフォーメーション。その実現に向けて

IoT、AI、クラウドなどのデジタル技術によって企業のビジネスモデルを次世代型に転換するデジタルトランスフォーメーション。日本の第四次産業革命に向けた取り組みが重要視されているが、実現のポイントはどこにあるのだろうか、製造業の変革を支えるキーパーソンからの声とマイクロソフトが考えるデジタルトランスフォーメーションについて紹介する。

※本記事は、Microsoft Foresight でのセッション「デジタル技術が牽引する次世代製造業の展望」をもとに作成しています。

まだまだ多い、IoT未着手領域
日本の第四次産業革命に向けて、より広い範囲でのIoT化が必要

経済産業省
商務情報政策局クリエイティブ産業課(製造産業局 IoT 担当併任)
課長 西垣 淳子 氏

ドイツのIndustrie 4.0と米国のIndustrial Internetに刺激されるかたちで、わが国でも「第四次産業革命」に向けた取り組みが着々と進む。経済産業省 商務情報政策局クリエイティブ産業課(製造産業局 IoT 担当併任) 課長の西垣淳子氏は講演のなかで「自律的最適化を可能にする第四次産業革命は、すべての産業における革新のための共通の基盤技術となります」と指摘。日本の製造業が時代の流れについていくにはデジタル技術を活用することが鍵となる、との考えを示した。

ただ、社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が2013年に実施した調査によれば、日本企業はビッグデータの利活用についても「聞いたことがない、よく知らない」「検討したが、利用していない」と回答する企業が合わせて約70%。「2016年6月の『2016年版ものづくり白書』でも、生産工程を見える化するためのIoT利活用はかなり進んでいるものの、設計開発やアフターサービスといった領域ではIoTはほとんど使われていないという2015年12月の経済産業省の調査結果をご紹介しました」と、西垣氏は語る。

また、製造業を含む“ユーザー企業”に所属するIT技術者が少ないことと(IT技術者の多くはシステムインテグレーターなどのITサービス企業に勤務)、IoT/ビッグデータに対する投資が生産(加工組立)工程でのM2Mに偏っていることも日本の製造業に特有の弱み。「生産工程よりもその前後の工程のほうが高付加価値というスマイルカーブを考えれば、製造業のIoT化はもう少し広い範囲で取り組むべきです。例えば、商品企画、研究開発、サプライチェーンの最適化、予兆保全などのアフターサービスを視野において生産現場の情報を活用することにも力を入れれば、今とはまったく違う構図が出現するでしょう」(西垣氏)という。

このような現状認識のもと、経済産業省は「ものづくりを通じて価値づくりを進める『ものづくり+企業』」という目標を公式に設定。2016年4月にドイツとの間で「日独IoT/インダストリー4.0協力に係る共同声明」を締結したのに続き、米国やフランスとも同じような国際協力を進めていくことになると西垣氏は語った。

製造業に求められる“自問”
生産ノウハウをデジタル化して、クラウドで販売してもよいはず

日本マイクロソフト株式会社
第二インダストリー統括本部
インダストリーソリューショングループ
製造インダストリーマネージャー
武本 大作 氏

これに続く講演は、日本マイクロソフトによる「デジタル技術が変える製造業のビジネス」である。スピーカーの第二インダストリー統括本部 インダストリーソリューショングループ 製造インダストリーマネージャー 武本大作氏は、デジタル技術による業界構造の変化にともない、製造業の領域では「製品/技術」「ビジネスモデル」「顧客の期待値」「スマートなエコシステム」のそれぞれが変わり始めていると指摘。「日本の製造業は、これからのチャレンジをどう進めればよいかを自らに問い始めています」と現状を分析してみせた。

そうした悩みをかかえる製造業がデジタルトランスフォーメーションを成し遂げるには、「あなたの業界をデジタル技術がどう変えるのか、その中であなたのコアとなるビジネスモデルをデジタル技術でどう変えることができるのか」を自問することが重要だ。武本氏は、「デジタルトランスフォーメーションにチャレンジする世界の製造業とのパートナーシップをマイクロソフトは重視しています」とアピールする。

例えば、電気自動車(EV)用の充電ステーション建設を進めるスイスの重電メーカーABBに対しては、充電ステーションネットワークの構築で協力。航空機用ジェットエンジンを製造するRolls-Royceには、ビジネスモデルを“エンジンの製造販売”から“時間あたりエンジン出力の販売”に転換するための技術的な支援を提供しているという。

講演の最後に武本氏が日本の製造業に示したのは、強みのある生産ノウハウをデジタルサービス化してクラウドでグローバルに販売するという“処方箋”である。「それには、IT基盤のような非競争領域はマイクロソフトから調達し、競争領域についてはグローバルなエコシステムを形成して支配力を高めるといったメリハリのきいた戦略が必要です」と武本氏は語る。IoTを成功に導くデジタル技術としては、Azure IoT Suite(コネクティビティ)、Cortana Intelligence(インサイト)、Dynamics(アクション)の3つを紹介した。

生産ノウハウをサービス化して収益源とし、
IT基盤のような非競争領域はマイクロソフトから低コストで調達する

変革へデジタル技術適用が拡大
日本の製造業もIoTをビジネスモデル変革に活用し始めている

日本の製造業は、デジタル技術を実際にどのように活用しているのだろうか。

パネルディスカッションでは、IoT化やデジタルトランスフォーメーションで一歩先を歩む3社がそれぞれの取り組みを紹介した。

横河電機株式会社
マーケティング本部
事業開発センター
センター長 
谷口 功一 氏

DMG森精機株式会社
執行役員
ビー・ユー・ジーDMG森精機株式会社
社長 兼 ソフトウェア商品部長
川島 昭彦 氏

パナソニック株式会社
全社CTO室
ソフトウェア戦略担当理事
梶本 一夫 氏

プラント向け制御機器で世界的なシェアを持つ横河電機でマーケティング本部 事業開発センター センター長を務める谷口功一氏は、「2020年には、当社がお客さまに提供したセンサーからのデータ容量が一日あたり1ペタバイト(PB)を超える見込みです」と語り、データ分析やビッグデータ処理でのデジタル技術活用時代を見越す。具体的には、データ分析に強い専門企業との協業を通じてデータから知見を引き出し、顧客のプロセスを改善するというシナリオだ。改善の対象についても、生産プロセスからサプライチェーンや製品ライフサイクルに拡大し、やがては製造業や産業・社会インフラへと広がっていくイメージだ。

一方、工作機械の製造・販売ビジネスをグローバルに展開しているDMG森精機は、工作機械の稼働データを携帯電話網経由で取得する仕組みを2004年の段階で構築済み。現在は、より多くの種類のデータを集めて、予兆保全サービスとしてビジネス化する第2ステージへと移っている。ここで同社が思案中なのが、顧客の製造現場のネットワークとどう付き合っていけばよいかということ。DMG森精機 執行役員 ビー・ユー・ジーDMG森精機株式会社 社長 兼 ソフトウェア商品部長 川島昭彦氏は、「お客さまの“匠の技”が外部に流出してしまわないようにするには、セキュリティ保持が不可欠です。さらに、当社の工作機械だけでなく、他社機やロボットもつなぎ込めるようにしなければなりません」という。

さらに、一般には消費者向けのB2Cビジネスのイメージが強いパナソニックも、企業向けのB2BビジネスではIoTとロボティクスを核とする“技術10年ビジョン”を策定・推進中だ。顧客価値に着目して同社が設定している主な注力領域は「AIロボティクス家電」「自動運転・コミュータ」「店舗・接客ソリューション」「次世代物流・搬送」の4つ。パナソニック 全社CTO室 ソフトウェア戦略担当理事 梶本一夫氏は、「ニーズとシーズだけでなく、ソフトウェアや汎用LSIといったプラットフォーム領域でのエコシステムを構築することによって、松下幸之助が提唱した『共存共栄』が実現する」と抱負を語る。