駅伝もビジネスも、
勝者は「時」を制した者だ。

無限の情報があふれるインターネット時代、誰もが公平に持っている一番貴重な資源は「時間」だ。わずか10年で青学陸上部を駅伝最強チームに進化させた原晋監督が、ポール・スミス六本木店で「必勝のタイムマネジメント」を伝授する。

ポールスミス六本木店外観
原晋監督

青山学院大学 陸上競技部

原 晋 監督

1967年広島県生まれ。89年、中国電力に入社し、陸上競技部に入部。2004年から現職。15年には箱根駅伝初優勝、16年に同大会2連覇、39年ぶりの完全優勝を果たした。17年は3連覇に挑む。

ポール・スミスとは

1976年、パリでメンズウェアを発表して以来、英国を代表するブランドとして多くの著名人にも愛されているポール・スミス。クラシックなアイテムのなかに、絶妙な遊びごころを加えたデザインが最大の魅力。ウォッチラインも2015年に20周年を迎え、更に進化を続けている。

締め切りの設定と規則正しい
生活からまず始めよ

イベントの様子

会場を埋めた60名以上の参加者は、日経ビジネスアソシエ読者、日経ビジネスオンライン会員のビジネスパーソン。原監督の言葉に、大きくうなずくシーンも多かった。

 今、最も注目されるスポーツ指導者の一人、青山学院大学陸上競技部・原晋監督が、箱根駅伝2連覇、出雲駅伝、全日本駅伝優勝と弱小チームを常勝チームに変えたマネジメントの秘密を明かす。12月初旬、ポール・スミス六本木店で開催されたトークショーには、たくさんのビジネスパーソンが集まった。

 テーマは「限られた時間で最大の成果を出す方法〜必勝のタイムマネジメント〜」。インターネットの発達とスマートフォンの普及で、現代人はより効率的に時間を活用できる。その一方で、時間の本質的な価値を逆に見失いがちだ。原監督は力説する。

「人間は生まれも育ちも不公平だが、たったひとつ公平なものがある。それは、1日24時間という有限で貴重な『時間』という資源だ。時間をいかに有効活用するか。時間との戦いである陸上競技での勝敗はこの1点で決まる」

 2004年の就任時、原監督は「10年以内に優勝争いできるチームにする」と、まず自らの目標に「締め切り」を設けた。

「大学は4年周期で学生たちが入れ替わるから、理想のチームをつくるには、4×2で最低8年、おそらく10年はかかる。その間に自分で考えて行動できる選手を育てよう」

 就任前の10年間、原監督は陸上競技の現場を離れていた。監督就任で陸上の世界に戻って感じたのは「古い悪癖が残ったままの業界だ」ということ。指導者と選手の関係は上意下達が基本で、選手は自分で考えて行動が起こせない。「自分で考えることができる選手を育てれば、十分に優勝争いができるはず」と確信した原監督は、最初に選手たちに徹底的に「規則正しい生活」を守ることをあえて強制した。

「成果を得るにはまず基礎を身に付ける必要がある。陸上競技にとって、規則正しい生活は、数学でいえば四則計算のようなもの。規則正しい生活をベースに、箱根駅伝優勝のような大きな目標を設定し、スケジュールの要所に小さなゴールを設けながら、クリアできるか自分でチェックしていく。その繰り返しで自信がつき、自分で考えて行動できるようになる」

 6年目には「規則正しい生活」を軸とした原監督の「タイムマネジメント」に対する思想が選手たちに浸透し始めた。そこで次に行ったのが、選手たちに1年カレンダーをA4用紙1枚にまとめさせて、合宿所に張り出すことだった。

「2月に新チームを始動、翌年1月2日、3日の箱根駅伝を最終的なゴールとして、その間に自分がすべきことを紙に書き出させる。時間が有限であることを肌で感じ、1分1秒でも無駄にできないと意識できるようになる」

 選手自らがタイムマネジメントを行えるようになった青学陸上部は、かくして大学駅伝界で最強のチームとなった。