“見える化”でムダが見えてくる  新時代の業務改善「HIT.s法」

シナノケンシ株式会社 100年企業は未来創造企業へ HIT.s法の導入で働き方改革を実現

“業務のムダ取り”で約29万時間もの「時間の余裕」を創出。
技術開発など生産性の高い仕事に費やせる時間を増やし、
週4日「ノー残業デー」の実現など社員のワークライフバランスまで
充実させた企業がある。小型モータを主力製品とする長野県の
産業機械メーカー、シナノケンシだ。これらの“働き方改革”を
実現させた「HIT.s法」の導入経緯や効果などについて、
同社の金子元昭代表取締役社長に聞いた。

絹糸紡績業から小型モータの製造へ

シナノケンシ株式会社
本社:	長野県上田市上丸子1078
資本金:	6億円
売上高:	単独314億円/連結481億円(2016年2月期)
従業員数:国内850人、世界全体5000人
業務内容:精密小型モータの製造・販売

――「シナノケンシ」とはユニークな社名ですね。

信州の「信濃」、絹糸紡績の「絹糸」を表したものです。名前のとおり1918年の創業当初は、長野県内の地場産業であった生糸の生産によって発生する糸くず(副蚕糸)を大量に集め、それを材料に絹糸を生産する会社でした。

創業者である明治生まれの祖父は、英語教師を務めた後、日露戦争の終戦交渉の通訳として働き、その後は新聞記者となって世界中を飛び回りました。当時としては非常に珍しい国際派で、当社が現在、グローバル事業を積極的に展開し続けているのも、そうした祖父の開明的な遺伝子を受け継いでいるからではないかと思います。

――現在の主力は小型モータ製造です。事業転換のいきさつは?

2代目として会社を引き継いだ父が「絹糸だけではいずれダメになる」と考え、当時取引のあった総合商社を通じて、音響機器メーカーからテープレコーダー用の小型モータ製造を請け負ったのが始まりです。化学繊維が「糸へん産業」(繊維産業)の主流になりつつあった1962年のことでした。

その後、家電用から複写機・ファクスなどの事務機器用、医療機器用と対応領域を広げ、今日のように幅広い分野向けの小型モータを製造する企業に成長しました。2002年にはハイブリッド車のバッテリー冷却用ファンを駆動させる小型モータなど、自動車向けの小型モータ製造にも本格参入しています。

このほか、これまで音響機器や画像処理システムなどの製造に関わってきた経験を生かしながら、補聴器をはじめとする福祉・生活支援機器や、製造業の開発・生産・品質管理現場で使用する動作検証・解析ツールなどを自社ブランドで製造しています。

絹糸紡績資料館

シナノケンシ本社内にある、「絹糸紡績資料館」。同社の祖業である絹糸紡績の歴史に関する展示品が見学できる。

経営を立て直すためにHIT.s法を導入

シナノケンシ株式会社 代表取締役社長
金子 元昭氏 Motoaki Kaneko

――シナノケンシは2012年9月、「HIT.s法」を生かしたビジネスプロセス革新活動である「S-BPI活動」(Shinano-Kenshi Business Process Innovation)をスタートさせています。きっかけは何だったのでしょうか?

1999年に父から経営を引き継ぎ、新たな事業の柱としてCD-ROMやCD-Rなどの光ディスクドライブ事業を拡大しました。一時は小型モータの売り上げを3倍以上も上回るほど急成長を遂げたのですが、2007年ごろになると台湾勢など海外メーカーの台頭とともに採算性が著しく悪化。追い打ちをかけるように2008年9月にリーマンショックが発生したことで、当社の屋台骨は大きく揺らぎました。

当社は2018年に創業100周年を迎えますが、「果たしてそこまで会社が生き延びられるのか?」と思うほどの崖っぷちに追い込まれてしまったのです。

そこで、起死回生のため「VISION100」というV字回復プランを策定しました。会社として生き残り、生き延びる力を持つためには、組織のあり方や仕事の進め方、さらには社員1人ひとりの“働き方”を抜本的に改革していくべきだという考えに基づく取り組みです。

その実践のために有効な手段のひとつとして出会ったのが、システム科学のHIT.s法でした。

――具体的にどのような形で導入されたのでしょうか?

当社は事務機器向け、医療機器向け、自動車向けなど客先の業種ごとに部門を分けるビジネスユニット制を採用していますが、そのうち自動車向けを担当するCMビジネスユニットのリーダーが外部セミナーを通じてHIT.s法に出会い、手始めに同部門が単独でHIT.s法に基づくS-BPI活動をスタートさせました。2012年9月のことです。

HIT.s法の開発元であるシステム科学からカウンセルを招き、「手取り足取り」と言っても過言ではないほど密接で熱のこもった指導を受けながら、「間接業務のムダをいかに取り除くべきか?」というHIT.s法の考え方を徹底的に学ばせていただきました。そこで、これは“間接業務の可視化”に留まる問題ではなく、経営全般を左右するものだと気づいたのです。

活動開始から6カ月で工数の減少、それに伴う作業時間の短縮という実際の効果が如実に表れました。それを受けて2013年上期からは事務機器向け、医療機器向けのビジネスユニットに加えて調達、技術管理などの5部門がS-BPI活動に参加しました。同下期からはさらに9部門が参加。現在は全16部門、44ブロック、470名の社員が活動に取り組んでいます。まさに「全社を挙げての取り組み」として行っています。

HISTORY

1918年 絹糸紡績事業として創業
信濃絹糸紡績株式会社
(資本金50万円)
1962年 モータ事業参入
1973年 シナノケンシ株式会社に社名を改称
1982年 増資により資本金3億円となる
シナノケンシ・コーポレーションを
ロサンゼルスに設立
1998年 資本金を6億円に増資
1999年 現・代表取締役社長、金子元昭氏就任
業務用光ディスク事業でモータを超える
500億円以上の成功を収める
2001年 CD-R/RWドライブでグッドデザイン賞受賞
2007年 光ディスク事業、諸外国企業の新規参入に
伴い事業縮小
2008年9月 リーマンショックで受注3割ダウン
2011年9月 「日経ビジネス 課長塾」にて
システム科学石橋社長と出会う
2012年9月 HIT.s法導入
システム科学のカウンセル活動開始
「S-BPI活動(シナノケンシのBusiness
Process Innovation活動)」開始(第1期)
2013年5月 改善提案データベースの構築
2014年8月 システム科学カウンセル期間終了
(定期支援は続行)
定着活動に向けた「S-BPI推進チーム」開始
2015年 S-BPI社内資格制度の設立
2016年9月 S-BPI改善提案賞、BPRIIテーマ活動賞設立
2018年3月 創業100周年へ
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協力

株式会社 システム科学
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