“見える化”でムダが見えてくる  新時代の業務改善「HIT.s法」

シナノケンシ株式会社 100年企業は未来創造企業へ ワークライフバランスと生産性を両立させる力

システム科学の「HIT.s法」に基づいて「S-BPI活動」という
独自のビジネスプロセス革新を推進する長野県の産業機械メーカー、シナノケンシ。
最終回は、“業務のムダ取り”によって
ワークライフバランス改善とともに生産性向上に成功した現場の取り組みに迫る。

現場が語るシナノケンシのいま

これまで見てきたように、シナノケンシはワークライフバランス改善と業務の生産性向上の両立という究極の“働き方改革”を実践すべく、2012年9月から「HIT.s法」をベースとした「S-BPI活動」(Shinano-Kenshi Business Process Innovation)というビジネスプロセス革新活動を推進している。

活動開始から4年半余りが経過した現在、トップダウンによる活動の推進や専任チームによる徹底したサポート、資格制度、表彰制度などの充実によって、能動的かつ継続的に改善が図られていく仕組みが社内にしっかりと根付いてきたようだ。

本来は“間接業務のムダ取り”を狙いとするHIT.s法であるが、シナノケンシはその考え方を製造現場の合理化にも積極的に応用している。

これまで「職人工の暗黙知」として引き継ぎにくかった業務も、業務プロセスを共通のチャートに落とし込むHIT.s法によって継承しやすくなる。多能工化に繋げることが可能だ。

例えばリードタイムの短縮。小型モータ製造を主力とする同社は、多品種・少量生産、変種・変量生産にも柔軟に対応できる“モノづくり”を大きな強みとしている。そこで重要になってくるのは、どんなに特殊な仕様のモータでも短納期で供給できる“早さ”だ。

同社はそれを実現すべく、HIT.s法の「Sチャート」を用いて、開発、設計から生産、出荷に至るまでのムダな作業の“見える化”を実践。設計の段階から、生産時に発生する作業のムダをなくすように工夫を凝らし、後工程の時間短縮を図るなど、具体的な改善効果がいくつも表れている。「作業のマニュアル化によって工場作業員の多能工化を推進し、製造時間の短縮を図っているのもHIT.s法の応用例です」と同社の工場責任者は語る。

HIT.s法の考え方は、生産ラインのレイアウトにまで応用されている。シナノケンシの本社内にあるモータの組立工場は、中央部に「国道1号線」と社内で呼ばれる広く長い通路が設けられ、それに面して製品ごとの組立ラインが整然と並ぶレイアウトになっている。

「各組立ラインで作られたモータは、そのまま『国道1号線』を経由して入庫前検査のためのスペースに運ばれる仕組みになっています。“モノの流れ”が整流化できるだけでなく、『国道1号線』を歩くだけでも、製品ごとの作業の進捗状況をひと目で見渡せることが大きなメリットです」(工場責任者)

ムダのそぎ落とされた製造現場は、見た目にも整然として機能的である。シナノケンシの“モノづくり”の力は、HIT.s法の応用によってさらに洗練されたようだ。

工場の中央部に広く長い通路を設定

「国道1号線」と呼ばれる広く長い通路に面して、製品ごとの生産ラインが整然と並ぶ。出来上がった小型モータは、すべてこの通路を経由して入庫前検査用のスペースに運び込まれる。

入庫前検査用のスペースを整理

以前は出来上がった製品をバラバラに積み上げていたが、顧客ごと、運送会社ごとなどに仕分けして置くように改善された。

1個からの小ロット注文にも対応

シナノケンシは、1個からの小ロット注文にも短納期で対応できる標準品モータ「プレクスモーション」を製造している。写真はその生産ライン。手前には見学客用に見本品の展示コーナーも設けている。

クリーンルームも設置

自動車向け、医療機器向けなど、非常に精密な加工が求められる小型モータも手がけるシナノケンシ。一部の製品については、埃の入らないクリーンルームで製造が行われている。

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協力

株式会社 システム科学
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