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少子高齢化時代 医療福祉ビジネスの新たなチャンス到来

少子高齢化とともに、医療福祉に求められる「サービスの在り方」も様変わりしている。それに対し、「患者であると同時に、消費者でもある人々の新たなニーズにどう向き合うかが大切」と語る多摩大学大学院教授である真野俊樹氏に、これからの医療福祉施設に求められるサービスや、立地の重要性などについて伺った。さらに、新たな資金調達手段として注目されている「ヘルスケア・リート」「ヘルスケア・ファンド」の活用が、医療施設の建て替えや経営改革をどのように促すのかについても聞く。

協力:UR都市機構

多摩大学大学院教授/医療・介護ソリューション研究所所長 真野俊樹氏

1987年名古屋大学医学部卒業後、臨床医を経て、1995年コーネル大学医学部研究員となる。他にも、外資系製薬企業や国内製薬企業のマネジメントに携わり、その後、昭和大学医学部(病院管理学担当)専任講師、大和総研主任研究員、大和証券SMBCシニアアナリスト、多摩大学医療リスクマネジメント研究所教授を経て、現在、多摩大学大学院教授、医療・介護ソリューション研究所所長、東京医療保健大学客員教授、中央大学ビジネススクールでも教鞭をとる。コメンテーターとしてのテレビ出演や、書籍も多数出版しており、医療・介護に関して幅広く活動している。その社会性から著書は医学部や高校の入試問題にもなっている。

医療福祉のニーズはどう変化しているのか?

 世界でも類を見ないほど急速に少子高齢化が進む日本。「この課題に関する限り、日本は世界トップレベルの課題先進国であるといえます。それゆえ、医療・福祉ニーズの変化も真っ先に訪れています」と語るのは、医師資格を持ち、医療福祉分野のマーケティングを専門とする多摩大学大学院教授の真野俊樹氏だ。

 真野氏が挙げる大きな変化は2つ。それは、治療目的で病院や診療所に入通院する「患者」だけでなく、「病気が治ったわけではないけれど、それなりに日常生活ができる人、生活はできるけれど介護を受けなければならない人、という2つの新たなニーズに対応した施設やサービスが求められるようになったことです」と真野氏は語る。

 従来もこうしたニーズはあったが、その受け皿役は主に病院が担ってきた。つまり、緊急性を要する患者だけでなく、そうでない患者や要介護者なども、そのほとんどの面倒を病院が見てきたのだ。

 「しかし、2000年に介護保険が導入され、医療と介護の機能を区分する意識が芽生え始めた頃から、2つの新たなニーズに対して病院だけではなく、それぞれに合った施設やサービスで対応していくべきなのではないかという考えが広がってきました」(真野氏)

 だからといって、それぞれの施設をバラバラに設けるのではなくて、医療と介護、人々の生活の場がすぐ近くで共存し、互いに連携を取り合いながらニーズを満たしていく環境が求められるようになった。これが、厚生労働省が提唱する「地域包括ケアシステム」(住宅・医療・介護・予防・生活支援のサービスを地域ごとに包括的に提供する体制)構想に結びついていった。

生産年齢人口と高齢化率の推移

日本の高齢化率(65歳以上人口割合)は2060年までに4割近くに達し、14歳以下人口は800万人を割り込む見通し。少子高齢化と人口減少は待ったなしで進行しており、それに伴って医療福祉のニーズも大きく変化している

建て替えが進まず、老朽化に悩む日本の病院

 施設やサービスの役割分担が求められるようになったのは、これまで2つのニーズの受け皿役となっていた病院・診療所の数が頭打ちになっていることにも原因がある。

 日本は病床数の多さが世界トップレベルであることはよく知られているが、下のグラフを見ても分かるように、病院・診療所の着工件数は1970年代末をピークに減少傾向にある。

「1980年代に病床規制が導入されたことで、病院・診療所を新設する動きにブレーキが掛かってしまったのです。これによって新たな問題として浮上してきたのが、病院施設の老朽化です」と真野氏は語る。

 新設される病院の数が減った結果、築30年以上の建物を使い続ける病院が増えてきたのだ。その多くは1978年の宮城県沖地震をきっかけに耐震基準が大幅に強化された1981年以前の建物であり、万が一震災に見舞われたときに、体が不自由な入通院患者が犠牲となる危険性もはらんでいる。本来なら建て替えが望まれるところだが、「資金に余裕のある大病院や公立病院は頻繁に建て替えを行っていますが、民間の中小の病院では予算がなく、古い建物をそのまま使い続けているところが多いようです」(真野氏)。

 建物が老朽化すると、安全性ばかりでなく、病院に対するイメージにも少なからぬ悪影響をもたらす。それによって患者が離れていけば、ますます建て替えのための金銭的な余裕はなくなる。まさに悪循環だ。

生産年齢人口と高齢化率の推移

日本の病院の着工件数は、1970年代末の年間約2400件をピークにじりじりと減少。1980年代に病床規制が導入されたことが大きな原因だが、その結果、病院施設の老朽化が進んでいる