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オムニチャネル時代における企業の立地展開と戦略

ほしい商品が、好きな場所で、いつでも買える革命的な流通の仕組み。それが“オムニチャネル”だ。日本でも大手流通グループが2015年にサービスを開始したことで、本格的な普及期が訪れようとしている。消費スタイルを大きく変えるといわれる“オムニチャネル”の現状や課題、流通企業が戦略を展開していくうえでの店舗や物流拠点の立地などについて、経済ジャーナリストの渋谷和宏氏に聞いた。

協力:UR都市機構

経済ジャーナリスト渋谷 和宏 氏

大正大学表現学部客員教授。大学卒業後、日経BP社入社。日経ビジネス副編集長などを経て2002年「日経ビジネスアソシエ」を創刊、編集長に。日経BPネット総編集長などを歴任した後、14年に独立。テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活躍するほか、渋沢和樹のペンネームで小説も執筆。長編ミステリー『銹色(さびいろ)の警鐘』(中央公論新社)などを上梓(じょうし)している。

業態や商圏の垣根がなくなり買い物の利便性が高まる

「“オムニチャネル”とは、ラテン語で『すべて』を意味する『オムニ』と、『販売チャネル』の『チャネル』を組み合わせた言葉。すなわち、オンラインショップや実店舗などのあらゆる販売チャネルから、ほしい商品が、いつでも買えるようになる画期的な仕組みです」と説明するのは、流通ビジネスに詳しい経済ジャーナリストの渋谷和宏氏だ。

 “オムニチャネル”が実現すると、例えばオンラインショップで購入した商品を近所のコンビニエンスストアで受け取ることはもちろん、特定の百貨店やスーパーにしか売っていない商品を注文して、提携先のコンビニエンスストアや自宅に届けてもらうといったことも可能となる。離れた場所にある百貨店やスーパーにわざわざ出向かなくて済むようになるし、コンビニエンスストアに行くだけで、コンビニには売っていないさまざまな商品も「お買い物」ができるようになるわけだ。もちろん、ネットで注文してそのまま自宅に届けてもらうという一般的なネットショッピングも可能。また、出向いた百貨店やスーパーで在庫が切れているときは、その場でネットショップの在庫状況を確認してもらい、最寄りのコンビニや自宅に届けてもらうこともできる。

「高級品は百貨店、日用品はスーパー、ちょっとした買い物なら近所のコンビニといった業態や商圏(エリア)の垣根は取り払われ、どの店に出向いてもほしい商品が手に入るようになります。消費者にとっては買い物の利便性が格段に高まり、流通企業にとっても、それぞれのチャネルにより多くの消費者を招き入れられるというメリットが生まれます。つまり、『買う側』(消費者)と『売る側』(流通企業)の双方に大きな利益がもたらされる仕組みなのです」(渋谷氏)

オムニチャネル/O2O

オンラインと実店舗を結びつける戦略としては、これまでにも“O2O(オンライン・トゥー・オフライン)”という考え方があった。しかし、「“O2O”は、オンライン上で発行した電子クーポンを実店舗で使用してもらったり、店舗に近づくとスマートフォンなどに搭載されたアプリが起動して、その店のキャンペーン情報を紹介してくれたりと、あくまで実店舗に“誘導”するためのサービスです。“オムニチャネル”は、より多彩なチャネルで買い物ができる機会を提供するものですから、考え方はまったく異なります」(渋谷氏)

より多彩なチャネルを求めて業界再編が進む?

 “オムニチャネル”の概念については、すでに2000年代後半から米国のコンサルタント会社などが提唱していたが、2011年に米国の老舗百貨店が実店舗とECサイトを融合させたサービスを実際に開始したことが、本格的な“オムニチャネル時代”の幕開けとなった。その波はやや遅れて日本にも届き、国内の流通業界に新たな変革を巻き起こそうとしている。

「きっかけとなったのは、やはり国内最大手の流通グループであるセブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン&アイ)が2015年11月、グループ各社の実店舗とオンラインショップを融合させたオムニチャネルサービス『オムニ7』をスタートしたことでした。グループ傘下に数多くの業態を抱え、流通グループとして国内最大の売上高を誇るセブン&アイがオムニチャネル戦略を本格始動したことによって、競合する流通グループ各社は、追随するにせよ、独自路線を歩むにせよ、戦略の大きな見直しを迫られることになります」と話す渋谷氏。

 より多くの顧客を囲い込むためには、できるだけ多くのチャネルを提供できることが望ましい。従って、今後はコンビニエンスストアや百貨店、スーパーなどの実店舗に、電子ショッピングモールなどのEコマース企業(電子商取引を行う企業)による資本提携や業務提携が加速し、国内流通市場の再編を促すことも考えられる。「そういった意味でも、“オムニチャネル”の本格化は、流通業界に大変革を巻き起こす可能性があるといえそうです」(渋谷氏)

日本の電子商取引(EC)市場の推移

個人消費が伸び悩む一方、日本のオンラインショッピング市場の規模は拡大の一途をたどっている。「オンラインショッピングのニーズ拡大とともに、実店舗が市場を奪われていることも、流通企業が“オムニチャネル”を志向する動きに結びついていることは間違いなさそうです」(渋谷氏)