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不動産証券化の新たな投資先として高まる首都近郊エリアの魅力

不動産証券化の新たな投資先として、“千葉ニュータウン”や“つくばエクスプレス(TX)沿線”といった首都近郊エリアが注目を浴びている。都心では十分な利回りが得にくくなっているのも一因だが、郊外なら経済潮流の変化に応じて、次世代型の投資物件を開発しやすいことも大きな魅力だという。最新事情について、不動産証券化などに詳しいノースアジア大学 経済学部教授の野口秀行氏に聞いた。

協力:UR都市機構

ノースアジア大学 経済学部教授 野口秀行氏

日本開発銀行(現・日本政策投資銀行)都市開発部・地域開発部にて不動産開発プロジェクトを数多く担当。東京大学などで不動産ファンド・プロジェクトファイナンス等の講義を行うほか、地方都市における不動産証券化スキームの普及に携わる。UR都市機構まちづくり支援専門アドバイザー、東大まちづくり大学院および東京工業大学の非常勤講師も兼務している。

不動産証券化はどのように発展してきたのか?

 不動産証券化とは、ビル1棟、タワーマンション1棟なら数十億円から数百億円単位になる不動産の投資規模を小口化(証券化)して、より多くの投資家が「買いやすい」ようにする手法である。そもそもは1960年代に米国で生まれ、1980年代後半に発展したものだ。

「当時、米国で不動産バブルが崩壊し、不良債権化した担保不動産を米国の大手投資銀行が安く買い取って証券化したことが、本格的な普及に結び付きました。投資家から集めた資金で、安く仕入れた物件を高い賃料が得られる高級物件に再開発すれば、より大きなリターンが投資家に還元できるという仕組みです」と野口秀行氏は説明する。

 やがて、不良債権化した物件だけでなく、高収益の既存物件や新規開発物件をポートフォリオに組み込む不動産証券化商品も登場。小口化した証券を株式のように上場させて、不特定多数の投資家が売買できるようにするREITの仕組みも生まれた。

 日本にその仕組みが「輸入」されたのは1990年代初めのバブル崩壊以降。かつての米国と同じように銀行が多額の不良債権を抱え込み、金融システムの正常化を図るため、米国で発展した不動産証券化の仕組みが採り入れられたのだ。

「日本では1997年頃から不動産証券化の動きが始まり、2001年9月に日本版REITと呼ばれる“J-REIT”が初上場しました。その後、しばらくは資金流入が続いたものの、2008年9月に発生したリーマンショックによって“J-REIT”の相場は大きく下落。いったん冷や水を浴びせられた後、2012年末に始動したアベノミクスによって再び、“J-REIT”市場への資金流入が拡大しています」(野口氏)

 これらの流れを受けて現在は、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催への期待などから、“J-REIT”が運用する都心のビルやマンション、ホテルなどの価格が上がり続けていることも、投資ブームに拍車を掛けている。

不動産証券化の仕組み

取得した不動産を小口化して流動性を高め、より多くの投資家から資金を集めるのが不動産証券化の仕組みだ。

既存物件の取得だけでは、キャッシュフローの確保に限界が
野口氏

 とはいえ、“J-REIT”が取得する物件の価格が高くなると、相対的に運用利回りは下がり、キャッシュフローも回りにくくなるというジレンマもある。

 不動産の運用利回りは、大まかに言えば、取得価格に対する年間賃料の割合である。現在のように不動産価格が上昇している局面では、どうしても分母(取得価格)が大きくなるので、利回りは低くなってしまう。実際、足元の“J-REIT”全銘柄の平均利回りは3.47%(2016年8月12日時点)と、歴史的に見てかなりの低水準だ。利回りが下がると、投資家が“J-REIT”を買う魅力が薄れるため、さらなる資金調達が困難となりやすい。

 また、一般に“J-REIT”などの不動産証券化商品は、投資家から集めた資金に、金融機関などからの借入金を加えて不動産を取得する。借り入れの返済には取得した不動産の賃料収入を充てるが、取得価格が上がれば借り入れ金額も増えるので、キャッシュフローが減ってしまうのだ。

 このほか、現在のように都心の不動産価格が上昇している局面では、“J-REIT”が新たな物件をポートフォリオに組み入れにくくなるのも大きな問題だ。

「不動産証券化では、投資家に還元する利益を維持するため、安定収益が確保できる物件を選ぶことが鉄則です。そのため“J-REIT”の場合、入居者が確保できるかどうか確約できない新規開発物件よりも、すでに入居者がいて一定の賃料収入が見込める既存物件を“居抜き”で購入する傾向が強いようです。しかし、都心の不動産価格の高騰とともに、入居者は確保できても、高い利回りや安定的なキャッシュフローが得にくい既存物件が増えているのです。多くの“J-REIT”は、既存物件一辺倒だったこれまでの投資戦略の見直しや、発想の転換を迫られています」と野口氏は指摘する。

 では、どのような戦略の見直しや発想の転換が求められているのか?

 野口氏がポイントとして挙げるのは、①新規開発物件への投資②経済潮流の変化に対応した新たな用途の物件を組み入れることの2つだ。

 新規開発物件は、たしかに入居を確定しにくいリスクはあるが、マーケティングや企画をしっかり行えば、既存物件を大きく上回る利回りやキャッシュフローを確保できる高収益物件を開発できる可能性もある。それでも投資家に相応のリスクを取ってもらう必要があるのなら、公募の“J-REIT”ではなく、リスク許容度が比較的高い富裕層や機関投資家向けの不動産投資ファンド、私募REITなどを設定する方法もあるだろう。

 また、既存物件を取得するとなると、どうしてもオフィスビルや商業施設、マンションといった用途に限られてしまうが、これら物件の多くはすでに供給が飽和気味なので、高い収益性は期待しにくい。

 そうした中、「収益性の高さに着目して、都心ではなく、首都近郊や地方で新たな用途の物件を開発する動きも広がりつつあります。ただし、現在その主体となっているのは、日本のREITではなくアジアのREITです」と野口氏は語る。