結局は、すべての仕組みが見てわかる
機械式の腕時計が頼りになる

スマホ1台あれば正確な時刻がわかる時代に、なぜ 腕時計を使い続けるのか。それも200年以上も前から基本構造が変わっていない機械式の腕時計を。

腕時計を選ぶ理由は明白だ。スマホと違い、取り出したり起動したりする手間がいらないから。時刻を知る上で腕時計以上に合理的な道具がないことは、懐中時計に取って代わった歴史が証明している。

もっとも、そこまで急いで時刻を知りたがる理由は、必ずしも時間に厳しいからではない。少なくとも私の場合は、むしろ時間にルーズだから。しばしば遅刻す るからこそ、どのくらい遅れているかを把握しておか ないと不安になる。逆にいえばそこさえわかれば、ど のくらい急いでどんな言い訳をすればいいのかもわか るから、安心できるというわけだ。

理由はともかくそんなに時刻が気になるなら、なぜ日進月歩のクオーツ式ではなく旧態依然たる機械式の腕時計を使うのかという疑問もおありだろう。

たしかにソーラーバッテリーや電波あるいはGPS受信機能を搭載したクオーツ式なら、ゼンマイを巻き忘れる心配もなく、秒単位まで正確な時刻が知れる。

だが、電子機器たるクオーツ式は、ひとたび故障すると素人の手には負えない。その点、すべての仕組みが目に見える機械式ならば、どこがどう故障してどう修理すればいいのかがすぐわかる。

機械式には遅れや進みもつきものだが、これも実は大した問題ではない。遅刻と同じで、どのくらい誤差があるかわかってさえいればすむ話だから。

トラブルを完全に防ぐことは不可能だ。ならば単にトラブルが少ないものより、トラブルが起きたときの対処法がわかっているものの方が頼りになる。

編集者・評論家山田 五郎氏
1958年、東京都生まれ。講談社を経てフリーに。時計、西洋美術、街づくり、など幅広い分野で講演、執筆活動中。近著に『人生を面白くする「好きになる力」』(海竜社)。

掲載の内容は2016年11月時点の情報です。製品価格は税抜表記となっております。
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