• BPnet
  • ビジネス
  • PC
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • NATIONAL GEOGRAPHIC
  • 日経電子版
main_img

デザイン思考の先にあるもの

vol.2

DESIGN THINKING

企業経営のための
デザイン

デザイン思考というメソッドは万能ではない。
しかし、その思考プロセスは新たな“気づき”を生み、
イノベーションを生み出すきっかけとして期待されている。
日本企業の競争力やブランド力が低迷するいま、
デザインの重要性を再認識し、
デザイン思考的アプローチを経営に活かす意味は大きい。

田中一雄

GKデザイン機構代表取締役社長/JIDA理事長

経営者が正しく理解すべき
デザインの力

 デザインは貴重な「経営資源」であると同時に、国境を越えて世界に通用する「グローバルな言語」という側面も持っています。vol.1の経済産業省によるデザイン思考への取り組みのところでも少し触れましたが、これからはデザインを「経営」の中核で活用し、デザイン・シンキングできる人材を「教育」し、日本のデザインを「国際化」していかなければなりません。

 インド・デザイン・カウンシルと日本デザイン振興会が主体となって、2012年に始まったインドのデザイン賞「インディアデザインマーク(Iマーク)」は、インド版のグッドデザイン賞です。私も中心の1人として立ち上げたのですが、インド側からは最初、「インドにジャパニーズ・クオリティは要らない」と言われました。ところが、実際に日本からグッドデザイン賞(Gマーク)の製品を持っていって展覧会をやったところ、それを見たインドの人たちはとても驚いていました。自分たちもいつかはこのレベルに到達しなければならないということで、いまやIマークがそのひとつのシンボルにもなっています。

vol2-1

田中一雄

(株)GKデザイン機構 代表取締役社長 /
JIDA(公益社団法人日本インダストリアルデザイナー協会)理事長

1983年に東京藝術大学大学院美術研究科デザイン専攻修了後、GKインダストリアルデザイン研究所に入社。プロダクトから都市環境まで多様なデザインを手掛ける。グッドデザイン大賞内閣総理大臣賞、SDA大賞ほか受賞多数。現在は日本デザイン振興会理事、国際インダストリアルデザイン団体協議会(ICSID)Regional Advisor、すみだ地域ブランド推進協議会理事・審査委員長、中国・国際デザイン産業協会(CIDIU)副委員長としても活躍するほか、グッドデザイン賞、都市景観大賞、ドイツRed Dot Design賞、Australian International Design賞など国内外で審査員を歴任。

 インドだけでなく、シンガポールも“デザイン国家戦略”というものをつくっていますが、日本にも1970年代には同じような気運がありました。しかし、現在は“クール・ジャパン”などブランド戦略のほうに重点が移っていて、デザインに注力するという部分がどんどん弱くなり、結果としてテレビも家電もアジアの国々にやられてしまったわけです。もちろん、デザインがすべてではありませんが、経営者たちがデザインの重要性というものを本当に理解していなかったことが、やり方を間違えた原因になっている部分は否定できません。

 これまで何度も言い続けてきたことですが、デザインは単なる化粧ではなく、企業の命運を左右するような「新しい発想」を生んでいく力なのだということを、改めて理解してほしいですね。そして、そういうムーブメントを、国も含めて社会全体でつくっていかなければなりません。

vol2-2

GKデザイングループはヤマハ発動機の創業以来、モーターサイクルのデザインを手掛けてきた。工業デザインならではのメタルアートを金剛力士像の筋肉をモデルに施した「VMAX」(写真)は、専門性のある習熟した造形によって2009年度にグッドデザイン賞受賞。“デザインのヤマハ”の印象をさらに印象づけた。さらにヤマハは、インドの子会社が生産・販売するファミリー向けモーターサイクルが5年連続インディアデザインマークを受賞している。

これからは国際化を意識して
デザインを考える必要がある

 近年、グッドデザイン賞に外国人審査員が加わりましたが、以前から入れるべきだと主張してきた立場としては、やっと入ったかというのが正直な感想です。こうした対応の遅さの背景には、日本には1億人以上というそこそこの規模の市場があるため、国内だけを相手にしていてもそれなりに回ってきたという現実があります。しかし、国内の市場規模が小さいため、市場を海外に求めなければならなかった韓国や台湾は、最初から世界と戦うための競争力を身に付けていたのです。その結果、日本は世界で負けてしまいました。

 確かに言語障壁などのやりづらさもあったと思いますが、もはやそんなことを言ってる状況ではありません。これからはいままで以上に「国際化」ということを意識して、デザインを考えていかなければならない時代になっていきます。そして、それを可能にする思考方法が、今回のテーマでもある「デザイン思考(デザイン・シンキング)」なのです。

 私たちGKデザイングループでは、3年前に「GKデザイン・リサーチ・イニシアチブ」という部門をつくりました。デザイン思考を学んだ海外経験者でメンバーを組織した部署で、主にデザイン思考のメソッドを使ってアジアやインド市場に向けた商品開発のためのリサーチを行っています。デザイン思考的な業務はアウトプットが具体的な形にならない仕事ですが、私たちのようなデザイン企業にとって、これからの成長部門です。従来からやっている平面、立体、空間のデザインと並行して、こうした部分に活動領域を広げていく意味は大きいですね。

vol2-3

GKデザイングループは1952年の創業より組織の拡大を重ね、国内外に12社を置く国際的ネットワークで活躍してきた。その活動はインダストリアルデザインを中心とした幅広いデザイン領域に留まらず、デザインにかかわる調査研究・市場調査・商品計画・地域計画を含む総合開発計画などデザインの普遍性を人々に届けるための運動にまで及ぶ。