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IoT時代における企業のありかた

vol.3

IoT

IoTがもたらす
インパクト

あらゆるモノがインターネットにつながる
モノのインターネット「IoT(Internet of Things)」。
IoTのひろがりによって私たちの生活やビジネスは、
どのように変わっていくのか?
そして企業はどう対応していけばいいのか?
本格的なIoT時代が、もうそこまできている。

村井純

慶應義塾大学 環境情報学部長・教授/
IoT推進コンソーシアム会長

モノがインターネットに
つながるインパクト

 初期のインターネットはコンピューターとコンピューターをつなぐことから始まりましたが、いまやグローバルに世界をつなぐひとつのネットワークになるまでに行き渡りました。世界中のヒトとヒトが、つながりたいときに自由につながり、コンピューターを介して双方向にコミュニケーションできるようになったのです。

 そして今度は、「T=Things」という人間でない「モノ」のインターネットが注目されています。たとえばいま、テレビやプリンターはインターネットを通じてつながっていますよね。最新のエアコンでは、スイッチのオン・オフをスマートフォンでできるだけでなく、内部をクリーニングするときに室内にいるダニの数などを計測して、そのデータを健康管理に役立てることができるようになりました。もちろん、こうした分析はエアコン本体がやるのではなく、クラウド上に専用のコンピューター機能があり、そこにデータを送ることで可能になるのですが、ひと昔前は家電によって健康を管理することなど考えられませんでした。エアコンがインターネットにつながれば、メーカーは設置場所を訪問することなくメンテナンスができるようになり、ユーザーは遠隔操作や健康管理、使用電力のチェックなどを簡単に行えるようになる。これはまさしく、IoTの成果なのです。

 このようにインターネットによってモノがつながり、そこから抽出した膨大なデータが流通するようになること、それがIoTの正体です。モノがつながることで、あらゆることにデータが使えるようになったインパクトは大きいでしょう。さまざまな産業で、新たなサービスを誕生させる契機になるはずです。

 さらに、行政区分の問題にもIoTは影響を与えています。たとえばエアコンの法制度・規制の場合、省エネなどエネルギーについては経済産業省、熱中症予防といった健康問題は厚生労働省、無線機器の利用など電波については総務省と分類されてきました。そうした縦割りの状況を、IoTによって横につないでいこうという協働の動きが劇的に始まっているわけです。そもそもインターネットそのものが、国境を超えてボーダーレスに「縦を横につなげる」ものです。本当にあらゆるものが横につながったときに、いったい何が生み出されるのか。新しいイノベーションに対しての塀も乗り越えやすくなっていくでしょう。

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村井純

慶應義塾大学 環境情報学部長・教授 /
IoT推進コンソーシアム会長

1984年、日本初の広域コンピューターネットワーク「JUNET」を設立。以来、インターネット研究のパイオニアとして、日本の「インターネットの父」と呼ばれる。WIDEプロジェクト立ち上げや、政府の委員会メンバーなど幅広く活躍し、2013年には世界的権威Internet Society(ISOC)によるインターネットの殿堂に選出。SFC (慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)では創立時から、最先端のテクノロジー、サイエンス、デザイン、ポリシーを連関させながら、既存の学問分野を解体した実践的な教育に尽力する。

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「Internet of Things(モノのインターネット)」という言葉が初めて使われたのは、1999年。RFIDタグの専門家であり、マサチューセッツ工科大学(MIT)のAuto-IDラボ共同創設者のケビン・アシュトンによるもの。Auto-IDラボの日本拠点はSFC内に設立され、Architecting the Internet of Thingsを共通テーマに日々研究開発が行われている。

自動車の走行だけで得られる
ビッグデータを活用

 ほかにもIoTの身近な分野といえば、たとえば自動車。1990年代当時、IoTという言葉はありませんでしたが、私たちが本格的にインターネットについて取り組み始めたのも自動車を使った研究でした。自動車はセンサーの固まりです。車検時にチェックするためのインターフェイスを持っていて、タイヤの回転数や温度の変化、エンジンの状態、ブレーキを踏む間隔、ライトの点灯など、100以上のセンサー情報をモニターできるような仕組みになっている。こうした情報を無線でつなぎ、そこにGPSの位置情報を組み合わせれば、そこからわかることは壮大なものです。研究を始めた当初はパケット通信料が従量課金制でGPSも高価でしたが、いまは固定料金になっているのでスマホがあれば何でもできてしまいますね。

 たとえばワイパーの動きひとつとっても、ドライバーはフロントガラスに雨粒が1滴落ちてきただけでワイパーを動かすので、レーダーでは予測できない雨の降り始めが、こうした行動データによって初期検知できる。雨の強さもワイパーの動きのデータを統計処理すればわかるので、センサーの情報を大量処理することによるビッグデータの正確性はかなり高いです。

 ところが、実験を始めた当初、自動車から勝手に自分たちの情報と異なる情報が流れることを危惧した気象庁からは、懸念が示されました。ただ、こうしたデータを集合的に分析するのにほとんどコストがかからないわけですから、現在ではこうした情報も天気予報に活用されるようになりました。世界中を膨大な数の自動車が走っているわけですから、まさに自動車は地球のセンサースキャナーみたいなもの。とてつもない力を持っていると思います。

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1990年のキャンパス創立以来、世界で最先端クラスのコンピューター研究環境を構築してきたSFC。安定したインターネット環境を構築するために、構内の端にはアジア全域をカバーする巨大な衛星インターネット通信用Cバンドアンテナが設けられている。

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従来の道路交通情報は、主要道路に設置されたセンサーを基に収集されてきた。自動車がインターネットと接続することで、走行車両がセンサーとなって広範範囲な道路の状況ほか、車両内外のさまざまなデータをリアルタイムで得られるようになった。