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イノベーションが生まれる場

vol.6

INNOVATION

コラボレーション
の重要性

持続可能な社会の実現のために
企業が描くビッグピクチャーにはその大目的と
社会課題解決のビジネスモデルが描かれなければならない。
そのためには部門や企業の枠を超えた
知識、技術、アイデアのコラボレーションが不可欠である。

紺野登

多摩大学大学院・教授/
KIRO(知識イノベーション研究所)株式会社代表

社会課題から描く大目的が
イノベーションを起こす

 社会貢献を考えていたらイノベーションなんて起こせないというのが、マジョリティの意識だと思います。しかし、ここでいう社会貢献とは、企業はある程度利益を出したら社会に還元すべきだという古典的なイメージを引きずっています。経営学者のマイケル・E・ポーターが提唱したCSV(共通価値の創造)という考え方さえも、社会の価値観を吸収して競争に勝とうとしているという意味ではやはり経済的な便益が目的にあり、そこには限界があるという批判があります。

 モノ中心の品質経営の時代には、よいものを造って売って儲けるという話で済んでいたものが、イノベーション経営の時代になると、社会の何かを変え、社会をよくすることで新しい需要を生み出し、そこでビジネスをするという考え方へと変わっていきます。つまり、社会課題を起点にしながらイノベーションを起こすことで、その課題を解決していく「社会課題主導型のイノベーション」でなければ、ビジネスとしての成功は望めない状況になりつつあるといえるでしょう。

 たとえば、途上国の貧困層を対象としたBOP(Base of the Economic Pyramid)ビジネスでは単価が低すぎるから利益にならない、と最初から考えるのはイマジネーションの欠如にほかならない。これからは、まずビジネスモデルを考えて、それを可能にするイノベーションに向けて試行錯誤するという立ち位置が求められます。

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紺野登

多摩大学大学院・教授 /
KIRO(知識イノベーション研究所)株式会社代表

イノベーション、デザインマネジメント、ワークプレイスなどの観点から知識創造経営の研究を行う。大企業・中堅企業のイノベーション経営や、「場」の支援にも尽力。京都工芸繊維大学新世代オフィス研究センター(NEO)特任教授や、東京大学i.schoolエグゼクティブ・フェローなどとして活躍するほか、日建設計顧問、一般社団法人Japan Innovation Network(JIN)やFuture Center Alliance Japan(FCAJ)の代表理事を務める。近刊は『イノベーションの起こし方』(東洋経済新報社)。

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20世紀初頭に経済学者ジョセフ・シュンペーターが経済発展の原動力になるものとして、起業家という個の供給側(サプライ・サイド)が消費者の心をつかみ市場を独占したような場合に起こる概念としてイノベーションを打ち出した。しかし、イノベーションが日常化、現場化している現代では、顧客や社会の共同体など、需要側(ディマンド・サイド)から問題を捉える方法が求められる。

ビッグピクチャーを描けない
日本企業の未来

 この考え方を突き詰めていくと、先にお話ししたビッグピクチャーの話になるわけですが、日本企業はこのビッグピクチャーを描くという部分が非常に弱い。社会のことを考えるというのは、社会貢献するかどうかという古典的な問いではなく、これからの社会をどうしていくのかという「ビッグピクチャーに基づいたイノベーション」の話になっていくのです。

 たとえば、米テスラモーターズのCEOであるイーロン・マスクの大目的は、石油消費型の経済から太陽エネルギー型経済に移行するというとても大きなものです。そのための第一歩としてイーロンはまず電気自動車をつくり、次にバッテリービジネスを手がけ、さらにソーラーシティを買収して太陽光発電に参入し、現在は火星移住計画にも挑んでいます。アメリカ政府(NASA)は2030年代には火星移住計画に着手するというナショナルコミットメントをすでに出しており、その地球周辺の部分は民間主導で進めようとしています。これはまさにビッグピクチャーであり、そこには従来の社会貢献とはまったく違う社会的なインパクトがあります。

 21世紀は環境やテクノロジーが激変し、さらに人口社会構造の激変が起こり、世界の経済構造や政治情勢も大きく変わってくるでしょう。こうしたあらゆる激変の予測に対して社会の側からイノベーションを起こすというのは、極めて当たり前のことです。しかし、イノベーションを起こすためには、それを仕事としてやろうとしてもなかなか前には進みません。なぜなら、通常の業務はスペックとして意志がそれほど強くなくても可能ですが、新しいことをやるには試行錯誤しなければならない。そのため、そこには目的が必要になります。目的へ向けた意志がなければやり遂げることは難しいからです。ただし、ここでいう目的というのはいわゆる国家的な目的などではなく、みんなが民主的によいと思う共通目的のことです。その実現のために企業は大きなビジョンを出し、個々人は各自が持っている技術や技能、知識や労働力をそれに使っていく。こうしたいくつかある目的をコーディネーションしていくのが「目的工学(Purpose Engineering)」という考え方です。

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イノベーションマネジメントの国際標準規格化の動きはグローバルでひろがっている。逆にいうと、イノベーションに取り組まない企業が株主から経営を指摘される可能性もあるということだ。

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通常、目的は他から与えられるものだが、イノベーションには「何のために」「何を」という議論が欠かせない。そうした目的そのものをエンジニアリングするのが「目的工学」だ。多くの組織では目標と目的が混合されがちだが、営業利益を目標ではなく目的化すると、本来の企業目的が達成できないこともありうる。目的工学とは、そうしたことを成し遂げようとする、経営者や技術者などの当事者間による、相互作用的な目的群の組織的調整(オーケストレーション)を行う方法論、手法だ。