インダストリーX.0 なぜ日本の製造業はデジタルトランスフォーメーションの波に乗り切れないのか?

河野 真一郎氏:製造・流通本部 インダストリアルグループ アジア・パシフィック総括 マネジング・ディレクター
				澤近 房雄氏:デジタルコンサルティング本部 マネジング・ディレクター

モノからコトへ、品質追求からニーズ重視へ──。テクノロジーの急速な進歩と、それに伴う消費スタイルやニーズの変化によって、製造業にパラダイムシフトが起きようとしている。アクセンチュアは、その先の新潮流として「自律型エコノミー」時代が待ち受けていると予測。「インダストリーX.0」という新概念を掲げ、その具現化によって10〜20年後に訪れる新時代を生き抜くことを世界の製造業に提言している。同社で製造業向け及びIoTコンサルティングに従事する2人のキーパーソンに、「インダストリーX.0」の考え方や、「自律型エコノミー」時代に向けて日本の製造業が取り組むべきことなどについて聞いた。

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なぜ日本の製造業は
デジタルトランスフォーメーションの波に乗り切れないのか?

──シェアリングエコノミーへの対応や、ニーズの急変に即応できるアジャイルな開発・生産体制の確立など、デジタルトランスフォーメーションの急速な進展とともに、製造業は大変革を迫られています。ドイツやアメリカなどグローバル企業に対して日本の製造業は後れをとっていると言われますが、現状どこまで対応できているのでしょうか?

澤近 わたしは様々な業界のお客さまがデジタルトランスフォーメーションに適応するための取り組みをお手伝いしていますが、決して日本企業全体が遅れをとっているとは考えていません。しかし残念ながら多くのお客さまは、明確な将来のビジョンを持っておらず、十分な投資も行っていないように感じます。中には、設計システムと製造システムを基幹系に結合してアジャイルを実践している先進的な企業もありますが、大半の日本の製造業は、製造現場で何が起こっているのか、仕掛品の在庫がどこにあるのかといったことがよくわからず、急な注文に右往左往されることも多いようです。

河野 わたしは自動車や産業機械、交通機関などのお客さまにコンサルティングを行っていますが、日本の製造業がデジタルトランスフォーメーションに適応する上での最大の障害は、部署ごとの取り組みがサイロ化している点ではないかと感じています。
たとえば自動車業界なら、デジタルトランスフォーメーションの課題として、オートノマス・ドライブ(自動運転)、シェアリング(共有化)、コネクテッド(ネットワーク化)、エレクトロニクス(原動力)が注目されています。しかし、そうした課題を全社で共有していても、それにどう対応していくかという取り組みは各部署がバラバラに行ってしまう。ひとつの会社として「この方向に向かっていかなければならない」という方向感を描き出せないのです。
その根底にあるのは、たとえばシェアリングへの対応に本腰を入れた場合、他方で「クルマが売れなくなる」という反発が起こるせいではないかと考えられます。たしかにクルマのシェアリングや自動運転化がこのまま進めば、2040年には必要とされるクルマの台数が現在の7分の1になると予想されています。クルマというモノを売るだけなら、とても立ち行かなくなるのは目に見えている。長年1台でも多くのクルマを売ることに心血を注いできたマネジメントの立場からすると、「売れなくなる」行為に投資をするというのは非常に耐え難く、部署を超えた意思統一が必要だとはわかっていても、ついブレーキを踏んでしまうのです。

澤近 しかし、「モノからコトへ」というニーズの変化は待ったなしで進んでいます。発想を根底から変えていかなければ、これから10〜20年後に確実にやってくる「自律型エコノミー」時代に生き残っていくことはできません。日本の製造業はこれまで、主にサイロ化された部署ごとにおける部分最適化を得意としてきましたが、これからは部署単位における技術や品質の“カイゼン”を目的としてはいけません。「モノからコト」へ、「品質追求からニーズ重視」へと変化する時代に即時対応できるような、企業単位・業種単位の幅広い変革のために即時に投資を進めていくべきだと言えます。

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