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近年のインドネシアを知るうえで最も重要なのは、産業の発展、経済成長、そして積極的な熱帯雨林の保護活動である。世界最大級の総合製紙メーカー アジア・パルプ・アンド・ペーパー・グループ(以下APP)は2013年、自然林伐採ゼロを含む「森林保護方針(FCP)」を発表し、世界を驚かせた。インドネシアの経済を支える財閥、シナルマスグループの一翼を担う企業が、世界に誇る熱帯雨林を守り育てるため、国際環境NGOや地域コミュニティなどとも連携しながら、着実に活動を続けている。

APPは、インドネシアに十数ヵ所の生産拠点を持つ世界最大級の総合製紙メーカー。世界120カ国以上で多様な紙製品を販売しており、1997年より日本にも進出している。

紙製品は、その多くが木材チップから作られるため、他の産業以上に森林保護など環境への配慮が求められてきた。そこでAPPは2013年、世界に先んじて自然林伐採ゼロを含む「森林保護方針(FCP)」を発表。世界有数の生物多様性を誇るインドネシアの熱帯雨林を保全していくと誓ったのである。

この方針は世界的に驚きをもって迎えられ歓迎されたものの、環境NGOなどからはその実効性に対する疑念も指摘された。そこで、国際的な環境保護団体レインフォレスト・アライアンスにFCPの進捗状況の評価を依頼。その進捗をモニタリングサイトで公開すると同時に、毎年報告会も実施している。

2014年4月には、インドネシア国内の広大な景観レベルの森林保護・再生支援を発表。グリーンピースやWWFなどの国際環境NGOとも緊密に協議できるようステークホルダー諮問部会を設置した。

しかし、植林には困難も伴う。いくら植林によって温室効果ガスを削減したとしても、泥炭地の開発によって温室効果ガスを排出しては意味がないと、既に稼働中の植林地7,000haの操業を中止した。企業としては、既に多大な投資をした植林地の操業を中止するのは苦渋の決断だったと推察されるが、真の目的を見失わない英断だったといえよう。

2015年12月には熱帯雨林の保護・再生支援を目的とした「ベランターラ基金」も設立。この基金を活用し、前述の南スマトラ州では、地元政府、ロンドン動物学会、地域NGOと協働で、南スマトラの森林景観管理を行うための覚書を南スマトラ州と締結するなど、地域コミュニティとの連携も進めている。

他にも地域連携の一例として、2015年12月パリで開催されたCOP21でAPPが発表した「総合森林農業システム」がある。インドネシアでは、森林火災の原因のひとつとして、住民による焼畑農業がある。焼畑農業は森林消失だけでなく、周辺諸国への煙害の原因ともなるため世界的に抑止が求められている。しかし、住民にとっては重要な生計手段であるため、一方的に禁止するわけにはいかない。そこで、同プログラムでは、地域住民に効率的な農業技術などを指導し、焼畑農業に代わる持続可能な代替の生計手段を定期称するなど、森林消失問題の根底にある貧困問題にも取り組んでいる。

このプログラムは、ジャンビ、リアウ、南スマトラ、東西カリマンタンの5地域、500カ所の村落を対象に実施。地域住民に寄り添いながら、森林保全を実現するための協力体制の地盤を着実に固めている。

日本人が深く関わるプロジェクトもある。植物生態学の世界的権威である横浜国立大学の宮脇昭名誉教授は、スマトラ島の自然保護区を視察し、自然林再生の可能性を確信。APPの景観レベルでの森林保護・再生支援プロジェクトに賛同し、APPに対して1万本のフタバガキ科の苗木を植樹することで、スマトラから世界へ自然林保護・再生の推進を発信しようと提案した。これをきっかけに新たなプロジェクトが発足。リアウ州ギアム・シアク・ケチルの荒廃地24haと保護林1haの計25haに、1万本の植樹を決定した。地域コミュニティにも参加を促し、継続的な植樹・保護活動による地域固有の森林再生を目指すことに。さらに、日本に本拠地を置く国連条約機関ITTO(国際熱帯木材機関)とリアウ州などの森林研究開発機関が苗木の供給や植樹で協力することも決定し、2015年8月に実際の植樹が実施された。

この取り組みは1回で終わらず、翌年8月にも実施。日本からもボランティアが参加し、現地の高校生や宮脇教授と親交の深い日本の環境団体代表らと共に植樹を行った。さらに、2017年8月にも第3回 1万本植樹プロジェクトを開催。スマトラの森を保護・再生したいという宮脇教授の想いが、着実に実りつつある。

2013年にFCPを発表して以来着実にその歩みを進めてきたAPPは、これからもインドネシアの豊かな森林を守り育てるため、活動を続けていく。

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