企業に求められる障がい者の雇用比率の拡大は今後ますます増える傾向にあるが、これからは単に雇用者数を増やすことよりも、いかに障がい者が生きがいを感じながら働ける場を提供できるかということが問われていく。企業が直面するそんなジレンマを解消する手段として、エプソンの乾式オフィス製紙機『PaperLab(ペーパーラボ)』を導入したトランスコスモスの古原執行役員に、日経BP環境経営フォーラムの斎藤事務局長が話を聞いた。

「PaperLab(ペーパーラボ)」とは?

エプソン独自の新開発技術「ドライファイバーテクノロジー」の3つの技術「繊維化」「結合」「成形」によって、使用済みの紙から新たな紙を生み出す世界初※1の乾式オフィス製紙機。使用済みのコピー用紙を原料として、文書情報は完全に抹消したうえで新たな紙を生産することができる。一般的な製紙方法で必要とされている大量の水を使わないため給排水工事が不要なので、オフィスのバックヤードなどに設置可能。2016年12月に販売を開始以来、自治体を中心に導入が進んでいる。

※1:2016年11月時点、乾式のオフィス製紙機において世界初(エプソン調べ)

同製品は「日本イノベーター大賞2016」(主催:日経BP社)の大賞を受賞。環境負荷低減という社会的課題の解決と、閲読性など紙の良さをサステナブルに生かせる仕組みが評価された。

日本イノベーター大賞2016

主催:日経BP社

企業概要トランスコスモス株式会社

トランスコスモスは1966年の創業以来、優れた「人」と最新の「技術力」を融合し、より価値の高いサービスを提供することで、顧客企業の競争力強化に努めてきた。現在では、顧客企業のビジネスプロセスをコスト削減と売り上げ拡大の両面から支援するサービスをアジアを中心に世界33カ国・176の拠点で、オペレーショナル・エクセレンスを追求し、提供している。また、世界規模でのEC市場の拡大にあわせ、顧客企業の優良な商品・サービスを世界49カ国の消費者に届けるグローバルECワンストップサービスを提供。トランスコスモスは事業環境の変化に対応し、デジタル技術の活用で顧客企業の変革を支援する「Global Digital Transformation Partner」を目指している。

障がい者雇用と環境対策に合致した『PaperLab(ペーパーラボ)』

斎藤そもそも『PaperLab(ペーパーラボ)』を導入なさった経緯は?

古原弊社ではおよそ3000社のお客様と仕事をさせていただいており、エプソンさんもその1社ということで、営業関係から『PaperLab(ペーパーラボ)』を紹介されました。私が管轄している管理本部では障がい者雇用を担当していたため、まずそれがどういう機械なのか確認したところ、障がい者のメンバーが担当していた名刺作成にも使えるのではという印象を持ちました。それに私の部署では環境に関するISO14001(環境マネジメントシステム)の事務局もしているので、障がい者雇用と環境対策という2つのテーマにマッチするということで、担当者に現物を見にいってもらったときには、ほぼ導入を決めてました。

日経BP 環境経営フォーラム事務局長 斎藤 正一/トランスコスモス株式会社 執行役員 本社管理総括副責任者 本社管理総括管理本部長 本社管理総括コーポレート推進室長 古原 広行氏

斎藤実際に導入なさったのはいつですか?

古原2017年3月に納品されて、5月から稼働しています。

斎藤『PaperLab(ペーパーラボ)』は導入コストがそれなりにかかりますが、すんなりと導入に踏み切れた理由は何でしょう?

古原合理的に考えた結果、障がい者の雇用促進と環境対策にピッタリと合ったということに尽きます。障がい者の雇用率は現在の2%が来年から2.2%になりますが、おそらくさらに2.3%に上がると思うので、弊社のような社員数の多い会社ではかなり頑張らないとその数字を達成できません。障がい者雇用のポイントは、もちろん採用することも大事ですが、雇用した人たちの仕事を確保することです。そういう意味では、この『PaperLab(ペーパーラボ)』は障がい者の働く場をつくるという目的にも合っています。さらに紙を社内で再生できるというのは、会社の環境への取り組みとしてとても重要なことだと考えています。

斎藤紙を自社内で再生してリユースできるわけですからね。

古原この本社ビルでは重要書類はフロアごとに専用のボックスに入れて回収し、シュレッダーにかけて溶解に出しているんですが、その回収とシュレッダーを担当しているのが障がい者のメンバーです。『PaperLab(ペーパーラボ)』を入れたことでシュレッダーにかけずに再生に回せるようになったので、全てを社内で完結できるようになりました。本社における、情報の管理をきちんと司る体制をつくるうえで、紙の中の情報が社外に出ないというのは情報セキュリティーの点でも大きなメリットだと考えています。

障がい者の雇用率ではなく「どう働いてもらえるか」が重要
『PaperLab(ペーパーラボ)』の操作にもすっかり慣れ、テキパキと作業をこなしていく関口さん

『PaperLab(ペーパーラボ)』の操作にもすっかり慣れ、テキパキと作業をこなしていく関口さん

斎藤御社ではおよそ300人の障がい者を雇用していて、そのうち約30人が知的障がい者の方ということですが、『PaperLab(ペーパーラボ)』を担当しているのは何人で、仕事内容はどのようなものですか?

古原現在は7人の知的障がい者が担当しています。具体的な作業はボックスからの紙の回収、ステープラーの針やクリップを外す仕分け、そして紙を整理して機械に入れ、できた紙で名刺を作るというのが一連の作業になります。

『PaperLab(ペーパーラボ)』で作った最も厚みのある紙を活用した名刺と、名刺を入れる箱

『PaperLab(ペーパーラボ)』で作った最も厚みのある紙を活用した名刺と、名刺を入れる箱

斎藤新しく作った紙は主に名刺として使っているわけですか?

古原名刺と名刺を入れる箱も作っています。本社の管理系だけでも300人ほどのスタッフがいますから、年間で約3万枚ほどの名刺が必要になります。実際に使ってみると、外部の人からも「高級感があっていい色の名刺だね」とほめていただくこともあります。全社的に広げていきたいと考えています。

斎藤『PaperLab(ペーパーラボ)』ではもっと大量の紙を再生できるわけですが、新しく作った紙を名刺以外に活用なさったりはしていますか?

古原障がい者の雇用を担うトランスコスモス・アシストの会社案内なども、『PaperLab(ペーパーラボ)』で作った紙を使っていて、デザインも障がい者のメンバーが担当しています。あとは弊社では年に何度かお客様をお招きしてセミナーやフォーラムを行っていますが、そのときのノベルティとして『PaperLab(ペーパーラボ)』で作った紙を使ったノートやメモ帳なども企画していきたいという計画もあります。

自社の会社案内をはじめ、今後活用を考えているノートなどにも『PaperLab(ペーパーラボ)』で新しく作った紙を使っている

自社の会社案内をはじめ、今後活用を考えているノートなどにも『PaperLab(ペーパーラボ)』で新しく作った紙を使っている

斎藤こうしてお話を伺っていると、御社では非常に障がい者の雇用に力を入れていることが分かりますが、その理由は何ですか?

古原きっかけは行政からの要請に対する責任でしたが、当初は障がい者にやってもらう仕事がないというのが実情で、8割はバックオフィスの補助的な仕事でした。しかし、現在は8割がプロフィットセンター系の仕事へと逆転していて、デザイナーやホームページの制作担当として働いているメンバーもかなりいます。障がい者だからという分け隔てはせずに、なるべく前面に出て仕事をしてもらうというのが弊社の考え方です。

斎藤いわゆるノーマライゼーションを推進していこうということですね。

古原障がい者の雇用率にこだわると絶対にどこかに弊害が出ます。あくまでも採用後にどう働いてもらえるか、生きがいを持ってやってもらえるかということに重点を置いています。そのためには時間もかかりましたが、会社全体として障がい者を受け入れるインフラが整い、社員のリテラシーも上がっています。実際にデジタルマーケティングの業務を担当する部署からは、今年はどれくらい障がい者を入れてくれるのかと確認が入るほどですし、健常者に対する研修を行う障がい者もいます。

斎藤障がい者雇用は、何人雇ったかということよりも定着率のほうが重要であり、それが企業の社会的責任に結びついていくのだと思います。

古原そうですね。その点でも『PaperLab(ペーパーラボ)』の導入によって職種をより増やすことができたのは、とても意味があると思います。

『PaperLab(ペーパーラボ)』担当 関口孝平さん

『PaperLab(ペーパーラボ)』担当の関口孝平さんに聞く

これまで事務補助業務を担当してきた関口さんは、細かな作業が得意ということで『PaperLab(ペーパーラボ)』の担当に。上司が1週間一緒に作業して見せて使い方を指導し、現在はほとんどの作業を一人でこなせるようになったそうだ。「やったことのない仕事だったので最初は不安でしたが、やっていくうちに少しずつ操作に慣れてきました。パネルに説明内容が表示されるので、機械と協力しながら新しい紙を作れるのが楽しいです」

『PaperLab(ペーパーラボ)』が企業価値を上げるきっかけに
管理部門の責任者として障がい者雇用の促進と、環境面での取り組みの陣頭指揮を執る古原氏

管理部門の責任者として障がい者雇用の促進と、環境面での取り組みの陣頭指揮を執る古原氏

企業を取り巻く環境対策などのテーマを中心に、豊富な現場取材の経験を持つ斎藤事務局長

企業を取り巻く環境対策などのテーマを中心に、豊富な現場取材の経験を持つ斎藤事務局長

斎藤話を環境に転じると、『PaperLab(ペーパーラボ)』の導入による効果は紙の3Rの実現だけではないと思います。これをきっかけにして従業員への環境教育や、地域とのつながりを深めていくというようなことはお考えですか?

古原弊社のノーマライゼーション推進部では、年に何回か地域の学校を訪問して、ボランティアで障がい者への理解を深めてもらうための手話などの催しを行ったり、障がい者施設にパソコンとソフトを寄付したりしてきました。今後は子供たちに『PaperLab(ペーパーラボ)』で新しい紙を作る体験をしてもらう、社会科見学のような使い方も考えてみたいですね。

斎藤最近はCSR(企業の社会的責任)だけでなく、ESG(企業や投資家が持続可能な社会の形成のために配慮すべき環境・社会・ガバナンスという3つの要素)が企業の価値として注目されていますが、そういう部分でも活用できるのではないでしょうか?

古原弊社ではESGへの取り組みを始めたばかりですが、投資家がどういう視点で企業を見ているかということも検討しながら、少しずつベースをつくっていきたいですね。弊社はメーカーのように製造したものを再利用するといった大がかりなことはできないので、まずは消費するもの、例えば電気や水、紙をなるべく減らすというところからやっていくことが大切だと考えています。

斎藤まだ使い始めて4カ月ほどですが、『PaperLab(ペーパーラボ)』に対して要望などはありますか?

古原現在は再生に使える紙の質がある程度決められているので、そのあたりを選ばなくてもいいようになると、利便性も上がると思います。あとはやっぱり価格ですかね(笑)。2台目の導入も考えたいので、ぜひ前向きに検討していただけるとうれしいですね。

取材を終えて

障がい者雇用を考えるとき、定着率をいかに向上させるかは大切な視点です。働きがいを持つことで定着率は確実に上がります。この点、トランスコスモスは障がい者雇用のモデルケースになりうる企業だと感じました。『PaperLab(ペーパーラボ)』は障がい者の雇用の幅を広げるといった点で貢献しています。3Rの推進といった枠を超え、利用の現場で社会課題解決型の製品に育っていました。

(斎藤正一)

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