急速なデジタル化により、変革を余儀なくされる自動車業界。今後のビジネスを成功に導くには、従来思考からの脱却とアプローチの刷新が必要だ。世界最大級グローバル総合コンサルティング会社アクセンチュアは、その実践的手法をインダストリーX.0の観点から説く。

「ものづくり」から「ことづくりへ」の転換

インダストリーX.0(http://www.accenture.com/jp/industryX0)とは、デジタル産業革命。アクセンチュアが提唱する、製造業における価値創造の新概念だ。

「わずか数年でスマートフォンが世界中に普及したように、デジタル化がもたらす変化は迅速。デジタル企業の成長速度も同様で、Fortune 500企業が時価総額1000億円達成までに平均20年要するのに対し、Googleは8年、Uberは2年というスピードです」と、同社でインダストリーX.0日本統括を担当する河野真一郎氏は言う。パワフルなデジタル化の波は、自動車産業の在り方も変える。カーシェアと自動運転の普及により、2040年には1台の車が7台分の仕事をこなす。それに伴い、自動車販売台数も2019年をピークに下降し、2030年には実台数ベースでも減少するという。

「オープンプラットフォームによって携帯電話がコモディティー化したように、今後は自動車というハードの設計・生産・組み立てよりも、企画やアフターサービスといったソフト面に収益がシフトしていくでしょう」(河野氏)

「ものづくり」から「ことづくり」への変化に対応した好事例が、独ダイムラーの「moovel(ムーベル)」だ。従来のカーシェアリングとともに、公共交通機関やタクシーも含めて最適な移動方法を提案するサービスを展開し、現在150万ユーザーが利用。メーカーの枠を超えたモビリティ・プロバイダーとして、他業界も巻き込んだエコシステムを成功させている。

「これからのモビリティサービスには、顧客起点でのビジネス変革が必要。自前式から脱却し、サプライヤーはもとよりエコシステムプレーヤーたちとの関係も重要になります」(河野氏)

スピードが求められるデジタル社会で、成功に向けた初期アクションとして河野氏が挙げるのは、「シャークフィン理論」だ。

「小さな規模でスタートしてTry & Learnを繰り返し、一気に大きく立ち上げる。そして、ダメだと思ったら、すぐにやめる。実証実験ではなく、ベータ版サービスで製品のフィードバックをしていく。これまでの前提条件や発想を転換しないと、イノベーションは起こせません」(河野氏)

『インダストリーX.0』

アクセンチュアのエリック・シェイファー氏が、デジタル時代に創造すべき価値について、実用的な提言を行う1冊。日本語版は河野氏が特別章を執筆、および監訳を担当