自動車関連企業の戦略立案から実行まで一貫して支援するデロイト トーマツ コンサルティング自動車セクターでは、2030年のモビリティーの存り方をどう見ているのか。自動車産業の未来に迫る。

日本の自動車産業は世界の社会課題解決を目指すモビリティーソリューション産業へ。

社会課題先進国としての日本の姿

日本は世界的に見ても様々な社会課題が急速に進行している“社会課題先進国”だ。例えば、人口問題。

「2010年をピークに人口は減少傾向に入っており、2030年には約8%、2050年には約20%の人口減少が見込まれています。また、高齢化も2030年には約30%まで進むとの見込みです」と語るのは、デロイト トーマツ コンサルティングの田中義崇氏だ。

「それに伴い増えていくのが、移動弱者や交通事故の増加という深刻な社会課題で、これらの課題に対し日本がこれから作っていくモビリティーソリューションが果たす役割は大きいと思います」(田中氏)

また、日本は世界で最も都市化が進んでいる国でもあり、交通渋滞や駐車場不足といった社会課題が深刻化するのは間違いない。さらにエネルギーセキュリティが国際情勢の影響を受けやすい状況にある日本では、必然的にクリーンエネルギーへのシフトを前提としたモビリティー社会の実現が不可欠であり、CO2排出量の削減についても今後は世界で最も厳しい削減率を求められる可能性があるという。

「これ以外にも資源枯渇や地方の過疎化、高速道路などの社会インフラの老朽化といった問題もあり、こうした状況下で日本がどのようなモビリティー社会を実現するか、そしてそこで生まれたソリューションを輸出し日本の自動車産業はモビリティーソリューション産業へと変貌を遂げられるかが、非常に重要になります」(田中氏)

「2050年新車CO2▲90%」を達成するのに必要な新車販売台数の推移(日米欧中印)

出所:各種公開資料を基にデロイト作成
※2015年以降の販売台数は2014年の新車販売実績、保有台数推移、買換えサイクル等に基づく予測値であり、実績値ではない

未知なる脅威にも対応するセキュリティの提供

クルマの知能化・IoT化の発展と同時に、「所有」から「利用」への価値観の変化も起きており、やがて完全自動運転車両をシェアリングする社会が訪れるだろう。また、英仏で2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する声明が出たことで、車両のZEV(ゼロ・エミッション・ビークル=無公害車)化も加速するはずだ。

「ドイツ・フランクフルトのモーターショーでも注目されたのは電動車でした」(田中氏)

「パリ協定」の達成には、乗用車のCO2排出量を2050年に2015年比で90%削減することが必要である、と同社は試算しており、この実現を考えた場合、2050年の新車販売台数の86%は電動車などのZEVになる、とも見込む。

「EVとFCV(燃料電池車)の比率については、現時点でのインフラ状況や世界の動きを見るとEVが優勢です。ただ、EVの不得意な領域である商用領域の大型バスやトラックでは、FCVのほうが有利という考え方もあり、将来的には7:3になると見込んでいます」(田中氏)

一方でシェアリングの市場が拡大し、大口フリート化や地域ごとのモビリティー化が進行すると、シェアリングが新車の価格や形状などに及ぼす影響も大きくなると予測される。また、完成車メーカーだけでなく、グーグルなどのICT企業、ボッシュなどのメガサプライヤーなども参入し、新たなプラットフォームやサービスの開発などの動きを活発化させているが、最終ステップに到達するためには解決すべき課題は多いという。

「技術面だけでなくコスト面、あるいはAI搭載自動運転車両で事故が起きたら誰が責任を取るのかなど、社会的な課題もまだあります」(田中氏)

最後に、自動車産業への提言として、田中氏は次のように結んだ。

「世界的にCASEが同時並行的に進行する状況では、サプライヤーは今までにない技術の獲得や製品の転換などを求められ、自動車産業にも異業種との連携や事業モデルの転換などが必要です。自動車産業の周辺にある製造業のみならず、あらゆる関連産業を巻き込んだオールジャパンでの投資や生産革新が、これからの日本のモビリティー産業発展のカギになるでしょう」

※CASE=ケース/コネクティビティ(接続性)、オートノマス(自動運転)、シェアード(共有)、エレクトリック(電動化)