ZEVやPHEVの開発を急ぎながらも、ホンダがその先に見据えるのはFCVをはじめとする水素を活用した様々な取り組みだ。1980年代から燃料電池車の基礎研究を続けてきた経験と実績に加え、近年は同じく燃料電池車開発で長い歴史を持つGMとの協業で、水素社会に向けた開発を加速させている。

既存ビジネスの体質強化と新ビジネスの創出が今後の取り組みの方向性

自動車の価値の多様化や社会課題の深刻化、あるいは産業構造の変化によって、自動車業界はこれまでの自動車会社同士の競争から、IT企業など新規プレーヤーとの競争に直面している。既存ビジネスの体質強化を図りながら、自動運転や電動化、コネクティビティー、さらにその先の新ビジネスを生み出していかなければならない。

「想定以上に早くZEV、PHEVの動きが進んでいるので、ホンダとしてもこれらの開発を急いでいる」と、本田技術研究所 取締役 専務執行役員の三部敏宏氏。

ホンダでは2030年までに電動化比率を3分の1以上にすることを目指しており、実現に向けた課題解決に取り組んでいる。また、自動運転については、事故の9割以上を占める「ヒューマンエラーゼロ」と「自由な移動の喜びの提供」をビジョンとして定めている。

「自動運転やコネクテッドカーの実現に向けて、シリコンバレーのオフィスをさらに拡充し、革新ベンチャーとの協業なども進めています。また東京・赤坂を中心としたR&DセンターXを作り、AIとデータを組み合わせた新しい価値を生み出す取り組みも開始しました」(三部氏)

ゼロエミッションビークルであるFCV「CLARITY FUEL CELL」は1充填走行距離約750kmを実現した

ゼロエミッションビークルであるFCV「CLARITY FUEL CELL」は1充填走行距離約750kmを実現した

水素の活用によってスマートコミュニティーの形成を目指す

ブラジルにある工場で9基の大規模風力発電設備を稼働させるなど、再生エネルギーの活用にも積極的なホンダが注目しているのが水素だ。水素を軸としたスマートコミュニティーを形成し、再生可能エネルギーを水素に換えてFCVに充填する「スマート水素ステーション」や、家庭のエネルギーをマネジメントし、必要に応じてFCVからの電気供給も可能とした、「スマートホームシステム」の実用化に向けた実証実験も進めている。

1980年代からFCVの基礎研究を行ってきたホンダでは、燃料電池を従来型よりも33%小型化し、世界初の5人乗りFCV「CLARITY FUEL CELL」を昨年発売した。しかし、FCVの普及に向けては品質保証やコストといった大きな課題が残っているのが現実。

「GMとの協業で、共通のビジョンを持って日米ワンチームでさらなる開発を 進めています」(三部氏)