軽量化素材の提供で、モビリティの進化を支えてきた三井化学。次世代自動車に向け、さらなる軽量・高機能化、快適性向上をもたらすソリューションを開発中だ。その最前線を、ベンチャー企業との取り組みを交えて紹介する。

モビリティが変われば求められる素材の範囲も広がります。

軽量化素材のリーディングカンパニー

1912年、三井鉱山の化学事業部門から創業した三井化学。その5年前には日本最初の国産ガソリン車が誕生し、以来100年余りを自動車産業と並走し続けてきた歴史を持つ。

1958年には日本初の石油化学コンビナートを建設、国内第1号のエチレンプラントを操業。1962年に日本で初めてポリプロピレン(PP)の製造を開始し、それが後に車体のバンパーなどに使用されるようになった。現在、同社は年間約100万トンのPPコンパウンドを生産し、自動車の外装・内装の軽量化材料を供給する世界のリーディングカンパニーとなっている。

 また、高い意匠性を持ち、軽量でリサイクル性に優れた内装表皮材ミラストマー®や、異素材との接着材料アドマー®、シート材料のウレタンシステム製品など、あらゆる素材で自動車の高性能化に貢献。モビリティ事業は、同社の主力ドメインの一つとなっている。

「自動車部品は約3万点といわれ、その70%に化学メーカーの技術力が生きています。EV化、コネクテッド化により部品構成やニーズが変化していくなか、今後もより一層モビリティ社会への貢献を果たして参ります」と同社代表取締役の諫山滋氏は語る。

モビリティが変われば、求められる素材の範囲も広がる。例えば、コネクテッド分野では、各種のセンシング材料や高度な半導体材料が、自動運転分野では光を編集する光学材料や視認性を高めるコーティング材料が必要となる。快適化材料にしても、より感性に訴える新素材や音響、照明ソリューションなどの需要も高まってくるだろう。

「新たな研究開発分野の推進に加え、従来の軽量・高機能化ニーズには、マルチマテリアルで対応。独自の繊維強化複合材料や金属樹脂一体化技術で、付加価値を追求していきます」(諫山氏)

アルミ合金ジョイントとCFRP構造材3本を一体成形(左)。以前はネジやブッシュなどを使って締結していたため部品点数は20もあった。右は様々な状態を感知するセンサとしての応用が可能な圧電ライン

アルミ合金ジョイントとCFRP構造材3本を一体成形(左)。以前はネジやブッシュなどを使って締結していたため部品点数は20もあった。右は様々な状態を感知するセンサとしての応用が可能な圧電ライン

ベンチャー企業との協働でモビリティ新素材を先行開発

来る新モビリティ時代に備え、ベンチャー企業との取り組みも積極的に行っている。その一つが、エアロセンス社とのドローン軽量化プロジェクトだ。

「当社には、様々な金属と樹脂の組み合わせにより強固な接着・接合を可能とする、ポリメタック®技術があります。これを活用することで、軽量化だけでなく、部品点数の削減、製造工程の削減など新たな複合的ソリューションをご提供できます」(諫山氏)

同プロジェクトでは、ドローンのジョイント部をポリメタック®で設計することにより、当初118点あった部品を8点にまで削減。ジョイント総重量を50%も軽量化することに成功した。結果、連続飛行距離を40%も伸長する大きな成果につながったという。

一方、超小型モビリティ社会を目指すrimOnOとの取り組みでは、新たな快適性を実現する“感性材料”を提供。エアコンレスに対応するフロントウインドウの曇り止めコートや、衝撃を吸収するウレタン製の外装ボディ、薄くて軽い快適シート、空間に静粛性をもたらすシール材などを提案する。

「しっとり、ふわふわなどの触感を数値化し、化学式に落とし込んで新材料を加工設計しています」(諫山氏)

また別のプロジェクトでは、EV化に伴うノイズの周波数が変わることに着目し、素材技術からの複合的な音響ソリューションの提案を進めている。

さらに、センシング材料においては、張力変化に伴い自身が電圧を発生させる圧電ラインを新開発。車内のバイタルセンサーへの応用が期待されている。

「今後の新たなモビリティニーズや課題に対し、三井化学は様々な解決策をご提案してまいります」(諫山氏)