最先端の技術で広範囲にわたる電子部品を生み出してきた村田製作所では、自動車市場をこれからの重点分野と位置づけている。同社の多岐にわたる取り組みからは、自動運転の実現に求められる多種多様な技術力の存在が見えてくる。

自律走行の新たな技術開発の取り組みも加速させています。

パワートレインの変更で電子部品の需要も増加

「Innovator in Electronics」をスローガンに掲げ、最先端の技術、製品を創出する総合電子部品メーカーの村田製作所では、自動車、医療、エネルギーの3市場を“注力3市場”と捉えて全社的に取り組みを強化。中でも自動車は現在、最も力を入れている市場だ。

「売り上げの60%強を通信、特にスマートフォンに依存しているため、エレクトロニクス分野への期待が非常に伸びている自動車市場に注力するのが、会社としての喫緊の課題」と語るのは、同社代表取締役の中島規巨氏だ。同社ではこれまでも自動車向けの売り上げを右肩上がりで伸ばし続けているが、それを可能にしているのがパワートレインの電動化、先進安全装備の進化、コネクテッドカーといった自動車の進化に対応する技術力だ。

「例えば、弊社の主力製品でもあるMLCC(積層セラミックコンデンサ)の生産数は年間1兆個以上。自動車のパワートレインがエンジン系からEVに替わると、MLCCの搭載数が5倍になることが分かっています」(中島氏)

今や燃費以上に重視される先進安全装備についても、各種車載センサの需要増加が見込まれている。MEMS(微小電気機械システム)の技術を使った慣性センサがブレーキの横滑り防止やエアバッグといったセーフティ関連で採用されているほか、バックソナーなどで使われていた超音波センサも、精度が上がったことでオートパーキングシステムにも多数使われるという。

一方、コネクテッドカーの時代においてカギになるのが、車載用コネクティビティモジュールの技術だ。同社ではこれまでもカーナビゲーションの画面とスマートフォンの画面を共有化するといった取り組みに力を入れてきたが、今後はWi-Fiやスマートフォンのスピードアップに追従する形で、車内のインフォテインメントのスピードアップにも対応していくという。

「技術の進化について弊社だけでできることは限られているので、我々が保有していなかった技術エリアの獲得のために、M&Aや他社とのアライアンスを継続して進めています」(中島氏)

2012年にはMEMSの慣性センサ技術を持つフィンランドのVTIテクノロジー社を買収したほか、NECからはドアなどの開閉検知を行う磁気センサを獲得し、今年9月にはソニーからバッテリー事業を譲受。自動車という市場に特化して事業エリアを拡大するために、各種技術の構築を進めている。

自律制御技術 MEMS慣性センサ

自律走行の実現にはムラタの技術力が不可欠

こうした電子部品は今後、自律走行をはじめ、EVのインフラ、コネクション、パワートレインの電動化、ITS(高度道路交通システム)といった様々な用途で展開されていくことになる。同社ではそれを視野に入れて、電子部品の開発に取り組んでいくという。

「自律走行による交通事故の抑制、移動時間の有効活用、車内の快適性とエンターテインメント性の向上という目的を達成するためには、我々の持つ電子部品の技術が必ず必要になってくると考えています」(中島氏)

自律走行の安全レベルは段階を追って進んでいくが、実用化されているレベル1のオートパーキングシステムは、超音波センサと静的アルゴリズムによって実現されている。これがレベル4以上の自動運転では、高度なセンシングと動的アルゴリズムが必要であり、それを可能にするためにも高精度な慣性センサの開発が急務となっている。

「ヘルシンキの事業所では、ジャイロセンサと加速度センサを組み合わせたコンボセンサによって、自律走行あるいは慣性航法の精度アップに向けたフィールドテストを繰り返しトライしています」(中島氏)

一方、車と車、車とインフラ、車と人をつなぐコネクテッド技術についても、現在は車内でWi-FiやBluetoothを使うことでスマートフォンの画面をシンクロさせているが、2019年には車と車、車とインフラの通信網として、V2XのIEEE802.11pという技術が実用化されるため、そこで用いられる通信技術や通信デバイスの開発・活用にも取り組んでいくという。車と人の通信ではいつでもどこでもつながっている通信手段が必要となるが、現在のセルラーの通信網に代わる5G時代の到来に向けて、同社では開発を進めている。

長年かけて培ってきた軽薄短小化技術が生きる

これらの技術の根本となる基幹技術として求められているのが、村田製作所が保有している技術だ。例えば、スマートフォンなど民生市場で培ってきた小型軽量化技術によって、ロスやノイズなくどこにでも配置できるミリ波レーダー技術などは、その代表例だ。また、パワートレインの電動化技術については、走行距離の向上と車両価格の低減のために、高効率PCU(パワーコントロールユニット)、高エネルギー密度・高信頼性バッテリー技術の開発にも取り組んでいる。

「用途に応じたリチウム電池をはじめ、弊社が10年以上開発に取り組んでいるのが酸化物系の全固体電池です。コンデンサで培った技術によって、燃えない、熱くならない、硫化物系のような有害ガスを出さないという安全性の高さがメリットです」(中島氏)

アウディのデータによると、2030年には自動車製造コストの50%を電子部品が占めるという見通しがある。こうした状況下では、エレクトロニクスのプラットフォームを支える電子部品のモジュール化は必須となり、同時に小型、軽量、高信頼性という要素も強く求められることになる。

「電子部品メーカーとして培ってきた軽薄短小化技術が生きるはずです。弊社では全ての用途について特別な技術開発を行ってきたので、これからも個々の用途に特化した商品展開を図っていきます」(中島氏)

新たな交通インフラモニタリングの仕組みである「トラフィックカウンタ」プロジェクトの推進、EVと連動する家庭用充電インフラと蓄電技術の取り組み、衝突防止に応用できる5Gを活用した通信網への対応など、同社では自律走行の実現に向けて新たな技術開発の取り組みも加速させている。

「こうした技術の背景には弊社の基幹技術があります。それがマイクロ波帯からミリ波帯まで全てカバーできる高周波技術であり、それを小さなパッケージに収める技術、さらに正確に計測する技術です。これらを今後も進化させていきたいと思います」(中島氏)