経営者のためのテクノロジー講座 第1回 実用段階に入ったAI Review AI導入のコストや手間を抑えて早期に運用フェーズへ 三菱重工、横浜銀行などに見るAI活用の勘所

すぐに業務に利用できるAIソリューションの条件とは?

FRONTEO 取締役CTO/行動情報科学研究所 所長 武田 秀樹氏
FRONTEO 取締役CTO/行動情報科学研究所 所長 武田 秀樹氏

AI活用を目指す企業は急速に増加しつつあるが、その一方で課題となる点も見られている。「『AIに何ができるのか分からない』『AIで何をしたらいいか分からない』といった段階は過ぎつつあるものの、理想と現実が乖離しているケースは少なくありません。AIを導入したら何でも実現できるようなイメージがありますが、実業務に適用していく上では、AIでできること/できないことを明確にすることが必要です。また、AI活用では学習や情報分析のベースとなるデータが必須ですが、これが十分に揃わずに悩まれている企業も見受けられます」とFRONTEOの武田 秀樹氏は指摘する。

加えて、AI投資の費用対効果をどう捉えるかも大きな問題だ。試験導入で一定の成果を収めた企業ですら、本導入後のメリットに確証を持てず、その後の展開を断念するケースがあるという。

さらに、こうした数々の課題を乗り越えた後にも、もう一つ大きな「壁」が待ち受けている。それは、AIシステムの構築に相当の手間と時間がかかるという点だ。「市場には数多くのAI製品ベンダーが存在していますが、実際に活用しようとした時のインテグレーションが高い負担になるケースも多い。例えばディープラーニングにしても、設計や実装を行うには専門のスキルを有するエンジニアが必要。構築コストが数億円単位と高額になることもあります」と武田氏は指摘する。

このようなAI活用にまつわる課題を解消するために、FRONTEOでは様々な業種・業務に適した専用AIアプリケーションの開発を行っている。「バラバラのパーツを組み合わせて一からシステムを構築するのではなく、すぐに業務に活用できる完成品/半完成品のアプリケーションを用意しています。これによりAI導入に掛かるコストや期間の大幅な削減が可能です」と武田氏は説明する。

具体的にはビジネスデータ支援システム「Knowledge Probe(ナレッジ・プローブ)」や特許調査・分析システム「Patent Explorer(パテント・エクスプローラー)」、電子メール自動監査システム「Email Auditor(イーメール・オーディター)」など、幅広い業務分野に使えるアプリケーションをラインアップ。これら全ての製品に、同社独自開発のAI「KIBIT(キビット)」が搭載されている。「当社ではこれらのソリューションの提供を通じて、日本企業の生産性向上に貢献していきたいと考えています」と武田氏は強調する。


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少量の学習データから精度の高い情報抽出を実行

それでは、同社のアプリケーションの中核を担うKIBITとは、一体どのようなAIなのだろうか。武田氏はその特長として「テキストに特化」「少量の学習でOK」の2点を挙げる。

ビッグデータ解析の目的の一つは、大量の情報の中から価値のあるデータを見つけ出すことだ。しかし、そのデータが他のデータと区別しづらい場合、従来型のキーワード検索やテキストマイニングなどの解析手法ではなかなか思うような結果が得られない。

しかしKIBITでは、テキスト内の重要箇所やキーワードなどを個々に指定していくのではなく、自分が探したい情報と関連を持つ文書をまるごと学ばせることで教師データを作成。そして自然言語処理技術を駆使して、それぞれの文書が持つ文脈や微妙なニュアンスをきちんと区別できる。「少量の学習データでも高精度な判別が行える上に、教師データ作成も非常に簡単。分析対象データの中から、関連性のある文書にチェックをつけるだけで完了します」と武田氏は話す。

こうしたKIBITの特長を自社のビジネスに役立て、成果を出している企業の事例が武田氏から紹介された。例えば三菱重工では、経営判断や業界動向の把握を目的とした調査レポート作成作業の効率化に「Knowledge Probe」を活用している。

同社では様々なニュースメディアに掲載された情報を収集し、その内容を分析した上で経営層向けのレポートとしてまとめている。しかし、この収集した情報の仕分けには多くの手間と時間が掛かるため、高いスキルを持つマーケターが新しい分野の掘り起こしや分析業務に注力できないことが課題となっていた。プログラミング言語を使って情報抽出の仕組みを構築することも試みたが、満足のいくような結果が得られなかったという。

図1 三菱重工によるAI活用のイメージ

図1 三菱重工によるAI活用のイメージ

収集した外部ニュースやWebメディアの膨大な情報を目的に合わせてKIBITが自動仕分け。これによりマーケターはより質の高いレポート作成と分析結果へ付加価値を加えることに注力できるようになった

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「この問題を解決するために、経験豊富なマーケターの視点をKnowledge Probeに学習させました。その結果、有用な記事を抽出する時間を従来の約1/2に短縮。また、マーケターが分析業務に専念できるようになったことで、レポート品質の向上も実現できました(図1)」と武田氏は話す。

また、コンプライアンスチェックの効率化で大きな成果を上げているのが、地方銀行最大手の横浜銀行だ。金融商品取引法では、オプションやスワップなどのデリバティブ取引が含まれる案件の勧誘・契約において、適切な対応を行うことが求められている。しかし、そのためには過去の取引の経緯や資産状況、顧客の年齢などに対して気を配る必要があり、適切かどうかの判断が難しく、営業担当者が記載した顧客との応接記録の内容をすべてチェックすることは管理責任者の大きな負担となっていた。また、案件数そのものも膨大な数になるため、判断のブレや漏れの発生を防ぐことも重要な課題だった。

そこで同行では、顧客との応接記録に書かれたやりとりを基に、金融商品取引法への抵触の発生についてKIBITが分析。コンプライアンス違反などの可能性が疑われる順にスコアリングを行うことで、リスクの高そうな取引を効率よく発見できるようにした。これにより、以前のチェック方法と比較して、抵触の可能性を持つ取引の抽出効率を約15倍にアップ。早期フォローによる訴訟リスクの低減や、管理責任者のチェック時間削減により、本来の業務である訪問先数の増加に寄与できたという。


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ベテランの知見を継承する仕組みとしても効果を発揮

もう一つの興味深い事例が、知財業務への適用だ。新製品開発を行う際などには、自社が開発した技術と同様の特許が存在しないか調査する必要がある。しかし、特許出願数は年々増加傾向にあり、技術そのものの高度化・複雑化も進んでいるため、これまでの人的リソースでは対応しきれなくなりつつある。「しかも従来型の検索方法は、それ自体が特別なスキルであり、誰にでもできるものではない上に、検索された大量の文書をすべて一つひとつ読み込むにも多くの時間を要してしまいます」(武田氏)。

図2 Patent Explorerによる「無効資料調査」の効果

図2 Patent Explorerによる「無効資料調査」の効果

KIBITの精度の高さは、新製品開発などを行う際に欠かせない無効資料調査業務でも絶大な威力を発揮。ある事例では、作業工数を従来の約1/5にまで削減することに成功している

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そこで同社では、トヨタグループの知的財産戦略を支えるトヨタテクニカルディベロップメントと共同で特許調査・分析システム「Patent Explorer」を開発。知財担当者が見つけたい特許公報を、調査対象の中からKIBITで迅速に発見・抽出させることで、知財業務を効率的に行える環境を実現した(図2)。

「特許業務の場合、最少で1件のデータから必要な情報を見つけなくてはなりません。KIBITには少量データで高精度な分析が可能という特長が備わっているため、こうした用途にも問題なく適用が可能です。また、ユーザーが必要/不要と判断したデータから学習を行いますので、精度と網羅性の両方を備えた調査が行えます。最近では先行技術調査だけでなく、出願されている特許の内容から、最新の技術情報を調べる技術動向調査など、お客様自らが新たな利用方法により活用の範囲を広げてくれています」と武田氏は話す。

これら以外にも「社員の離職防止」などの事例が紹介されたが、さらに見逃せないのが、AI活用を進めている企業の多くで様々な業務変革が進んでいる点だ。「AIの判断の根拠は自社の熟練者の知見なので、若手への知の継承をスムーズに進めることが可能。また、自分が書いた文書が、人間のチェックでは見逃されていた場合でも、AIでは有効活用されるため、文書の価値や、現場で記録を作成することのモチベーションも高まっています」と武田氏。人の能力をさらに発揮させていく上でも、AIが大きな役割を果たしているのである。


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お問い合わせ

株式会社 FRONTEO ビジネスソリューション本部
TEL:03-5463-7577
URL:http://www.kibit-platform.com
E-mail:kibit-info@fronteo.com

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