経営者のためのテクノロジー講座 第1回 実用段階に入ったAI Review 30年以上の研究から生まれた人工知能 4分野の活用事例に見るその実力とは?

ビジネスイノベーションを加速する富士通のAI

富士通 執行役員 原 裕貴氏
富士通 執行役員 原 裕貴氏

新たなビジネスモデルの創造や日本の産業構造変革を促す新技術として、様々な分野への応用が進んでいるAI。富士通でもこうした取り組みを下支えすべく、ZinraiのAI技術を多様な製品やサービスに組み込んで提供を行っている。

「富士通には30年以上にわたるAI研究の歴史があり、200件以上の特許も申請しています。これらの知見や技術群を体系化し、人の判断や行動をスピーディにサポートしていくことがZinraiの狙い。人を中心としたHuman Centric AIでお客様の成長に貢献していきます」と同社の原 裕貴氏は話す。

今回発表された「Zinraiプラットフォームサービス」の注目点としては、まず世界最速クラスの能力を誇るディープラーニング基盤「Zinraiディープラーニング」が挙げられる。ここでは、スーパーコンピュータ「京」の開発で培った大規模並列処理技術などをフル活用し、AIによる学習/推論を短時間で実行できる環境を実現。また、AI活用のベースとなる18種類の「基本API」と、様々な業種・業務に関する富士通の知見を盛り込んだ12種類の「目的別API」も提供される(図1)。


図1 Zinraiプラットフォームサービス

図1 Zinraiプラットフォームサービス

今回リリースされた「Zinraiプラットフォームサービス」では、卓越した処理能力を誇るディープラーニング基盤と基本/目的別APIを提供。学習と利用の両面でAI活用をサポートする

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図2 「ディープテンソル」を利用したグラフデータの解析

図2 「ディープテンソル」を利用したグラフデータの解析

人やモノの間のネットワークを表すグラフデータ。今までAIでは学習困難だったデータを富士通独自の技術Deep Tensorを用いて自動抽出することに成功。わかりやすく視覚化することで、様々な解析や判断が行えるようになる

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「世界トップレベルの最先端・独自AI技術に加えて、社内実践やお客様との共創で培った業種・業務ノウハウをAPIとしてサービスメニュー化できる点がZinraiの大きな強み。また、上流のコンサルティングサービスやシステム構築・導入支援サービス、運用サービスなど、現場でのAI活用を支援する多彩なサービスも用意しています」と原氏は続ける。

例えば、予兆監視や需給計画などの現場主導によるビッグデータ×AI活用ソリューションを提供していることはその一つ。ある顧客では、AIにより予測精度を従来の3倍にアップさせ、その結果、平均在庫月数を約65%短縮するなど大きな成果を上げているという。

Zinraiで提供される富士通独自技術の中には、今まで困難と思われていたことを可能にするものも多数存在する。例えば、人やモノの関係性を表すグラフデータから新たな知見を導く新技術「Deep Tensor(ディープテンソル)」もその一つ。「SNSを利用するユーザーのつながりや金融機関の取引履歴、通信ログなど、世の中には様々なグラフデータが存在します。こうした様々なデータのつながり(関係性)をディープラーニングで分析することは困難とされていましたが、当社ではグラフデータの直接入力と特徴量の自動抽出に成功。学習精度の大幅向上や今までにない新たな発見の導出につなげています」と原氏は話す。こうした取り組みを加速させるべく、ディープラーニング処理専用プロセッサの開発なども進めているという(図2)。


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幅広い技術を組み合わせ、人の判断や行動をサポート

富士通ではすでに幅広い企業に対してZinraiの提供を行っており、すでに400件以上の案件を抱えているが、今回はその中から「コールセンター」「ナレッジ活用」「ヘルスケア」「社会インフラ」の4分野での具体的な活用事例も披露された。

まず1点目の「コールセンター」では、富士通自身の顧客サポート業務にZinraiを適用。ここでは約8万件のサポート用FAQを機械学習すると共に、顧客からの新たな問い合わせ内容を即座に解析して、より正解に近い複数のFAQ候補を提示できる環境を構築している。「単純なキーワード検索だけでは、必ずしも適切なFAQがヒットするとは限りません。しかし自然言語処理や機械学習などの技術を加えたことで、経験の浅いオペレーターでも、従来の約半分の時間で問い合わせを解決できるようになりました」と原氏は話す。

また、顧客窓口業務を支援する対話システムについて損保大手の東京海上日動火災保険の協力の下、同社の顧客対応業務を基に技術検証を行った。「これは利用者がAIと対話しながら、様々なサービスを利用できるというもの。例えばこの技術を旅行代理店の窓口業務に活用すればレストランやオプショナルツアー、土産宅配サービスの手配などを含む複雑な窓口業務でも、お客様と自然に対話を行いながら内容確認を行うといったことが実現できます。また、リコメンド機能も備わっており、お客様の希望に100%合致する商品がない場合に、別のツアーやオプショナルサービスをお薦めするといったことも可能です」と原氏は話す。

さらにその他にも、人の声の高さや変化パターンから満足度を測定する新技術も開発。約70%の精度で顧客の感情を推定することができており、今後さらに精度を上げた上で提供を開始する予定だという。

続いて2点目の「ナレッジ活用」では、企業内に存在するデータやドキュメントから、新たな価値を見出すための取り組みを支援。「いくら社内に膨大な情報が蓄積されていても、個々の情報の関連性が把握できないことにはなかなかうまく活用できません。そこでこの仕組みでは、大量の企業内文書を専門家の見方で学習させ、その文書が持つ本質的な概念に基づいてグラフ構造として表示。これにより経験の浅い方でも、熟練者と同じような情報活用が行えます」と原氏は話す。マーケティング部門なら「ブランド」、品質管理部門なら「不具合情報」といった具合に、それぞれの業務の視点で有用な情報が引き出せるようになるわけだ。

また、社内外に存在する企業情報をリアルタイムに収集し、法人営業用ダッシュボードに表示するソリューションも開発。「企業ニュースやプレスリリース、株価など取引を行っていく上で重要だと思われる情報をスピーディかつ精査して表示してくれるため、得意先との関係強化や新規顧客開拓に向けた活動をタイムリーに行えます」と原氏は説明する。


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健康な暮らしや効率的な社会作りにも大きく貢献

3点目の「ヘルスケア」では、医療機関の診断業務や製薬会社の創薬業務にAIを活用する取り組みを展開中だ。診断業務では、スペインのサンカルロス医療研究所と共同で実証検証を実施。「ここでは約3万6千名分の匿名患者データをAIで分析。その結果、85%以上の確率で患者の健康リスクを算出できることが実証できました」と原氏は話す。ここで注目すべきはそのスピードだ。従来は患者一人の診断を、5名の専門臨床医が20分かけて行っていた。しかしAIは、同じプロセスをわずか5秒以内で完了したのである。「この技術をスクリーニングなどに利用すれば、医師の負担も減り、より重要な業務に専念できるようになります。AIと専門家のコラボレーションの一つのあり方と言えるでしょう」と原氏は続ける。

また日本国内でも、日本医療研究開発機構が推進する「臨床ゲノム情報統合データベース整備事業」にAI技術担当として参画。膨大な医学論文や世界中の知識データベースを収集・分析し、今後のゲノム医療に役立てる取り組みを支援していくという。

最後の「社会インフラ」では、サイバー攻撃予測にAIを活用。「ここでは富士通クラウド基盤への攻撃検知に用いていたチャートの情報をビジュアル化し、特異な構造を持つデータ集団を一目で把握できるようにしました」と原氏は話す。これにより従来は人手で3カ月掛かっていた未知攻撃の抽出を、極めて短時間で行えるようになったという。

また、人の行動をAIでシミュレーションすることで、適切な誘導や混雑緩和につなげる取り組みも推進。「福岡空港の国際線旅客ターミナルに適用した事例では、シミュレーション結果に基づいて保安検査レーン数を変更することで、各種手続きの待ち時間短縮などの効果を実現しました。さらに福岡空港内では、大型施設内にデジタルサイネージを配置し、サイネージの配置や店舗の変更によって生じる人の流れの変化や滞留、さらに各店舗の売り上げを可視化する取り組みを行っています。これは、大型施設内の人間行動をシミュレーションし、回遊率をアップさせることが狙いです」と原氏は説明する。

このようにすでに様々な分野で成果を上げつつある富士通のAI。さらに同社では研究を推進し、将来的には、人と同じように想定外の突発的な事象にも柔軟に対応できる次世代型AIの開発を目指す考えだ。


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