日本政府観光局(JNTO)によると、2017年10月の訪日外国人数は前年同月比21.5%増の259万5000人を記録している。年々拡大するインバウンドに対し、日本各地域の自治体や企業もその誘致に必死だ。だが、どこから取り組めばいいのか分からないという声も多い。そうした中、豊富な実績と経験を基に地域や企業のインバウンド戦略をトータルに支援し、訪日外国人の実際の人流創出まで取り組むのが、JTBだ。ここでは、JTB総合研究所の柴田大輔氏にインバウンドの現状を伺いつつ、JTBの強みと今後の取り組みについて紹介する。

定住人口の減少を背景に拡大するインバウンドへの期待

定住人口の減少を背景に拡大するインバウンドへの期待

株式会社 JTB総合研究所 事業開発部 主任研究員 柴田 大輔氏
株式会社 JTB総合研究所 事業開発部 主任研究員 柴田 大輔氏

―昨今のインバウンドの活況に対し、各地域の自治体や企業はどのような動きを見せているのでしょうか。

株式会社 JTB総合研究所 事業開発部 主任研究員 柴田 大輔氏
株式会社 JTB総合研究所 事業開発部 主任研究員 柴田 大輔氏

柴田少し大きな話から入ると、厚生労働省の資料では、日本の人口は2060年に9,000万人近くまで減少するといわれています。観光庁の資料では、現状の定住人口1人当たりの年間消費額は125万円ですが、これは外国人旅行者8人分、あるいは国内の宿泊旅行者25人分に相当しますので、国内消費活性の起爆剤として期待されるのです。つまり、本格的な人口減少時代に突入する中、国内外の交流人口を増やすことによって地域経済の維持・発展につなげていこうというのは必然の流れ。

インバウンドの拡大には、大きな期待が持たれています。近年の日本版DMO(※)の活発な動向にも見られるように、“稼ぐ力を持つ観光地づくり”に向けて、地域の魅力創出やPRに努める自治体は多いですね。また、民間企業の中にも「訪日インバウンド担当」という肩書きを持つ方も増えています。

※ Destination Management Organization=地域の「稼ぐ力」を引き出すとともに地域への誇りと愛着を醸成する「観光地経営」の視点に立った観光地域づくりの舵取り役として、多様な関係者と協同しながら、明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実現するための戦略を策定するとともに、戦略を着実に実施するための調整機能を備えた法人

―JTBには、そうしたインバウンド担当の方からのお問い合わせが殺到していると聞きます。どのような相談が寄せられるのでしょうか。

柴田かつては、「広告やプロモーションをどうしたらいいか」というお問い合わせが圧倒的に多かったのですが、現在のように年間2,400万人が訪日する時代ともなると、従業員の研修方法やIT技術を活用した回遊促進といったより具体的なご相談が増えてきていますね。また、やみくもに地域の魅力をアピールするのではなく、「この国の、このクラスターに届けたい」というターゲット設定もしっかりされている。観光への注目が産業の垣根を越えて高まっており、お客様が高度化してきているため、私たちもそれにお応えできるよう体制を強化しています。

4つの領域で企業・自治体のインバウンド戦略を支援

4つの領域で企業・自治体のインバウンド戦略を支援

―JTBが提供するインバウンドソリューションについてご紹介ください。

柴田JTBは100年以上の実人流をつくってきた実績と経験を基に、インバウンド誘致のためのトータルコンサルティングをグループ全体で実施しています。

具体的には、JTBグループの独自データと経験に基づく「インバウンド戦略策定支援」に始まり、海外と日本全国にあるJTBのネットワークにより発地・着地それぞれのプロモーション等を支援する「インバウンドマーケティング」、魅力的なツアーやイベントを提案する「インバウンドコンテンツ開発」、多言語対応や人財研修などの「受入環境整備」の4領域をご用意。お客様の課題やご要望に応じて、これらを最適に組み合わせたソリューションをご提供し、実際の訪日外国人の人流創りにいたるまでをトータルで支援させていただいています。

SOLUTION 4つのソリューション
インバウンド戦略策定支援
JTB独自のデータと豊富な実人流創出の実績に基づき、インバウンド戦略の策定をサポート。
インバウンドマーケティング
海外(発地)では現地イベントやデジタルマーケティングを活用し出国前に情報発信、国内(着後)では観光案内機能などの接点を生かし有効プロモーションを支援。
インバウンドコンテンツ開発
訪日外国人を実際に呼び込むことができる旅行商品の造成。地域の魅力や特性にあわせたさまざまなエンターテインメントやコンテンツ開発。
受入環境整備
訪日外国人が旅行中に快適に過ごすための受入環境の整備を実現。
JTB インバウンドソリューションはこちら
SOLUTION 4つのソリューション
インバウンド戦略策定支援
JTB独自のデータと豊富な実人流創出の実績に基づき、インバウンド戦略の策定をサポート。
インバウンドマーケティング
海外(発地)では現地イベントやデジタルマーケティングを活用し出国前に情報発信、国内(着後)では観光案内機能などの接点を生かし有効プロモーションを支援。
インバウンドコンテンツ開発
訪日外国人を実際に呼び込むことができる旅行商品の造成。地域の魅力や特性にあわせたさまざまなエンターテインメントやコンテンツ開発。
受入環境整備
訪日外国人が旅行中に快適に過ごすための受入環境の整備を実現。
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―なかでもJTB総合研究所は、最も入り口の部分である「インバウンド戦略策定支援」に大きく関わっておられるとのことですが、戦略策定の要はどこにあるのでしょうか。

柴田インバウンド戦略といっても、海外だけに目を向けるのではなく、日本の国内旅行者の動向も見据える必要があります。端的にいえば、盆・暮れ・正月・GWなどの期間はどの観光地も国内旅行者で混雑している一方、平日は比較的空いている。この繁閑差を、日本人とは異なる価値観や期待を持つ訪日外国人を誘客することで平準化してくかがポイントとなります。

では、どのように戦略を立てるか。実はここが観光業の面白いところで、地域の魅力というのはスポットの当て方次第でいかようにも変わるのです。例えば、北海道などはグリーンシーズンとウインターシーズンでがらりと印象が変わる。グルメという通年の魅力もあります。

こうした可変要素を、対象とする国の国民性や文化、価値観等と照らし合わせ、丁寧に紐解いたうえで戦略を錬っていく。当社ではこれらを読み解く人財と3つの訪日インバウンドマーケティングツールを備えています。

他業種との連携で新たなインバウンドソリューションを創出

他業種との連携で新たなインバウンドソリューションを創出

―訪日インバウンドマーケティングツールについて、詳しく教えてください。

柴田1つは「訪日インバウンド市場概観ツール」。文字通り、対象地域の訪日外国人市場の概観を把握するためのダッシュボードツールで、訪日外国人のトレンドや国籍別構成比、消費支出や情報入手経路などをマーケティングレポートとして作成します。

2つ目は「訪日インバウンド地域診断ツール」といって、地域別の受入力(集客力・魅力度・消費額など)を当社の独自データも加味して定量化し、競合地域と比較することで地域の強みや課題を客観視するためのツールです。そして3つ目の「訪日インバウンドデータクロス集計ツール」は、JTBが独自に調査した主要15カ国訪日外国人の属性・旅行動向・購買履歴・情報入手経路などの定量データを基にクロス集計を行うツール。

これらのツールも駆使することで、インバウンドにおける自治体や企業様の課題抽出から解決の方向性までを導き出していきます。

JTBの訪日インバウンドマーケティング支援ツール
訪日外国人のトレンドや国籍別構成比、消費支出および情報入手経路・体験期待などをマーケティングレポートとして作成するダッシュボードツール。
JTB独自データを含む各種データを用いて地域の訪日インバウンド受入力(集客力・魅力度・消費額など)を診断するツール。競合地域との比較により対象地域の強みや弱みを客観的に把握することができる。
主要15カ国の属性・旅行動向・購買履歴・情報入手経路などJTBが独自に調査したデータを基に現状を把握し、自治体・企業が抱える課題解決に繋げるツール。
JTBの訪日インバウンドマーケティング支援ツール
訪日インバウンド市場概観ツール
訪日インバウンド地域診断ツール
訪日インバウンドデータクロス集計ツール

―豊富なデータや実地観測から得られた現在のインバウンドのトレンドと、それに対応した今後の取り組みについてお聞かせください。

柴田大きなトレンドでいくと、訪日外国人の消費行動はモノからコトへと変化しています。ターゲット設定においても、国籍だけではなく、行動や価値観に基づいたセグメントが重視される傾向にあります。

こうした旅行者の動向を可視化し、実際の人流創出につなげるために、当社では現在、移動データやSNSデータなどを有機的に結び付けて、地域の課題やニーズに応じて利活用できるサービスを産学連携で研究する等の取り組みを行っています。また、訪日外国人の消費行動をより精細に可視化するために、金融機関と連携した新しい取り組みも始めたところです。

旅行業をドメインとするJTBが新たな人流創出に向け、独自のデータや経験知、海外と国内のネットワークを用いながら他業種と連携することで、さらに価値あるインバウンドソリューションが生まれると確信しています。

CASE STUDY
CASE STUDY

クライアントは、訪日外国人が多く訪れる大型ショッピングモール。いわゆる“爆買い”ブームが一段落し、新たな顧客を呼び込む必要に迫られているという。調査してみたところ、周辺を訪れる外国人旅行者は多いにもかかわらず、モールでの消費には結び付いていない。つまり、課題解決のカギは「購買動機作り」にあった。そこでJTBが提案したのは、「ないもの体験」の演出。

母国では味わえない体験型のコンテンツを前面に打ち出し、それをテコにお金を落としてもらう仕組みをつくった。その動線として、JTBが運営する空港のグローバルカウンターや街なかのツーリストインフォメーションセンターで、モールで使えるクーポンを配布。好奇心旺盛で消費感度の高い旅行者をインフルエンサーとすることで、再び人の流れをつくることに成功した。

地域事情に精通する支店網と、旅行者とのリアルな交流接点を豊富に持つJTBらしい戦略事例といえる。

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