——KDDI「カラオケVR」に見る、革新的サービス実現の勘所 「場」「コンテンツ」「技術」の融合で新たなビジネスチャンスを創り出す
VR(仮想現実)技術が、いよいよ収益化可能なフェーズに突入している。そうした中、業界横断的な企業とのコラボレーションで、新たなビジネスモデルの確立を目指すのがKDDIだ。中でも、カラオケ店を全国展開するスタンダード、エンターテインメント大手のポニーキャニオンとの協業で生まれた「カラオケVR」は、VRの特性を生かした先駆的サービスとして大きな注目を集めている。

「仮想ショールーム」など幅広い分野で
ビジネス活用がスタート

 VR(仮想現実)といえば、これまでゲームなど限られた分野で使われる技術というイメージが強かった。だが最近は、それ以外にも広範な産業分野で活用されつつある。

KDDI株式会社 ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部 ビジネス開拓1グループ 課長補佐 並木 慎氏
 例えば、不動産業界ではVRを使ったマンションの内見サービスが登場。わざわざ現地を訪れなくても、間取りなどをリアルに確認できるようになった。また、自動車業界では新車の試乗体験コンテンツを開発。加えて、ウェブサイト上に仮想ショールームを作るといったアイデアも具現化されている。

 このように、街中のさまざまな施設でVRが活用されるようになった現在は、技術を軸に新しいサービスの創出を目指す企業も増えている。だが、ここでネックになるのは、ビジネスに欠かせない「収益化」をどう図るかということだ。これが見えないために、取り組みが頓挫してしまうケースは多い。

 その点、自社にない強みを持つ企業とのコラボレーションは、革新的サービスを具現化するためのカギとなる。このアプローチのもと、さまざまな取り組みを成功させてきたのがKDDIだ。「当社は、企業がVRサービスを開発する際の基盤となるプラットフォームサービスを提供しています。同時に、当社自身もこれを活用することで、さまざまなパートナー企業様と一緒に新たなVRサービス開発を進めています」とKDDIの並木 慎氏は説明する。

カラオケルームの稼働率向上と、
新規客層の開拓に手応え

 コラボレーションによる最新の成果が、カラオケ店舗「JOYSOUND」を全国展開するスタンダード、エンターテインメント業界大手ポニーキャニオンとの3社協業で生み出された「カラオケVR」だ。
KDDI「カラオケVR」
KDDI「カラオケVR」
 これは、カラオケ店を訪れた顧客に、スマートフォンとヘッドマウントディスプレー(HMD)を貸し出すことで、曲を選ぶのと同じ感覚でさまざまなVRコンテンツを楽しめるサービス。2017年8月から、都内のJOYSOUND直営店で提供開始されている。「実現に当たっては、『場』『コンテンツ』『技術』の3つの要素をそろえることが必須でした」と並木氏。それらを持つ3社が互いに強みを持ち寄ることで、具現化できたものだという。

株式会社スタンダード 営業企画部 販促グループ長 尾崎 智則氏
 このサービスが、3社にどんなメリットをもたらしたのか。順に見ていこう。

 まず、「場」を提供するスタンダードにとって大きいのが、カラオケルームの稼働率向上だ。これについて、スタンダードの尾崎 智則氏は次のように話す。

 「カラオケが国民的レジャーとして定着した現在、業界各社はサービスの差別化に日々頭を悩ませています。特に、部屋の稼働率をどう上げるかは、収益に直結する大きな課題。当社もさまざまなチャレンジを続けており、その中でVR技術にも注目していました」。そんな折、KDDIからカラオケVRのアイデアを持ちかけられ、パートナーシップを組むことにしたという。

 カラオケVRは、まずJOYSOUND品川港南口店で提供が開始されている。まだ開始から日は浅いが、尾崎氏は手応えを感じている。

KDDI株式会社 ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部 ビジネス開拓1グループ 課長補佐 並木 慎氏
 「日々のお客さまの利用状況を見守る中で、店舗ごと・時間ごとにさまざまな傾向があるのですが、カラオケVRの開始後は、そのパターンから外れるお客さまが多く見られました。これは、今回の取り組みが新しいお客さまの開拓につながっているということ。同時に、JOYSOUNDのブランドイメージ向上にも寄与してくれているものと思います」(尾崎氏)

 また、現在は「通常のルーム料金+VR端末の貸出料(1台につき30分300円)」という価格体系でサービスを提供しているが、より柔軟な利用を促進するため、将来的にはコンテンツ単位で課金する方法も検討している。「その場合、課金手段を考える必要があり、お客さまにとっては使い勝手がよく、システム側にとっては堅牢性の高いものでなければなりません。携帯キャリアとして多様なコンテンツの提供経験を持つKDDIなら、その点でもサポートが期待できると考えています」とスタンダードの本吉 幸太氏は付け加える。

“体験重視”にシフトする市場で
新たな武器となる「自由視点VR」

株式会社ポニーキャニオン 事業戦略Div. 収支管理部 部長 福場 一義氏
 コンテンツ制作を担うポニーキャニオンにとってもメリットは大きい。注目すべきは、ものづくりの可能性が大きく広がったことだ。

株式会社ポニーキャニオン ミュージッククリエイティヴDiv. 制作3部 1グループ 島村 譲氏
 「当社がカラオケVRのコンテンツづくりに挑もうと決めたのは、KDDIの独自技術『自由視点VR』がきっかけでした。これは、その名の通り、ユーザーが視点を自由に移動させながらコンテンツを見たり、体験したりすることができる技術。存在するオブジェクト(物)の裏側に回ってみることもできるため、これまでのVRとはまったく違う表現が可能になる。そこに、作る側として大きな魅力を感じました」とポニーキャニオンの福場 一義氏は語る。

 実際、現在は音楽・映像作品を発表する同社所属アーティストの多くが、新たな表現手法としてVRに関心を持っているという。会社として、率先して新しい技術を取り込むことは、それらのアーティストにとってもメリットがあると同社は判断した。

 コンテンツに登場するのは、2017年夏にメジャーデビューを果たしたばかりの5人組アイドルグループ「マジカル・パンチライン」である。
マジカル・パンチライン
マジカル・パンチライン
 「アイドルの魅力をユーザーの方々にお伝えするには、ライブやイベントを体験してもらうことが一番です。ただ、各地を回ることもそう簡単ではなく、地方在住のファンの方からは、『リアルに会える機会が少ない』という要望もいただいていました。自由視点VRを使えば、全国のどこに住んでいる人でも、彼女たちを身近に感じられるコンテンツができるのではないか。このアイデアが、そもそもの発端となりました」とポニーキャニオンの島村 譲氏は説明する。

 こうしてポニーキャニオンは、マジカル・パンチラインのダンスが全方位から見られる自由視点コンテンツや、握手会コンテンツ、メンバーと架空の学園生活が楽しめるコンテンツなどを、カラオケVR向けに制作、提供を開始した。JOYSOUNDの店舗を訪れる顧客層の変化については先に紹介したが、マジカル・パンチラインが“キラーコンテンツ”となり、その傾向を後押ししていることは間違いないだろう。
自由視点コンテンツ(左)と握手会コンテンツ(右)
自由視点コンテンツ(左)と握手会コンテンツ(右)

協業で得たノウハウは
多様なビジネスに生かしていく

 このように、それぞれが持つ強みを生かしながら、「カラオケVR」というひとつのサービスを創り上げた3社。「テクノロジーが進化すればするほど、すべてを1社で手掛けることは難しく、かつ非効率になっていきます。こうした協業プロジェクトは、今後も一層増やしていきたい」と並木氏は述べる。

 事実、既に別の事例も多数動きだしているという。その一例が、高速路線バス事業などを展開するWILLERとの協業だ。WILLERはKDDIと共同で、高速バスの移動中にVRコンテンツが楽しめるサービスを開発。例えば、ミュージシャンのライブ会場に向かうバスの車中で、そのミュージシャンと会話できるコンテンツを提供するなど、ライブへの期待感を一層高めるサービスとして提供している。

 また、日本航空、阪急交通社とは実証実験を進めている。JALのチャーター便を利用したアイスランド行きの旅行商品では、ビジネスクラスシート利用者に対して、往路の機内で独自のVRコンテンツを提供した。

 KDDIにとっては、こうしたコラボレーションによる新しい「つながり」やノウハウこそが、今後のビジネスの糧となる。VR技術の高度化に生かすことはもちろん、それ以外のビジネス領域にも、さまざまな側面で生かされることだろう。

 「スタンダード様、ポニーキャニオン様をはじめ、VRビジネスという領域に向けて、ともに一歩を踏み出していただいた企業様には本当に感謝しています。これからもVRの可能性を追求していきたいと思います」と並木氏は語った。
マジカル・パンチラインの沖口 優奈さん(左)、佐藤 麗奈さん(右)
マジカル・パンチラインの沖口 優奈さん(左)、佐藤 麗奈さん(右)
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