「変革の時代に新たな視点を提供する」

グローバルな人材最適化が急務となる日本企業

日本企業の海外展開により人事面でもグローバル化が進む一方で、従来型の人事マネジメントでは対応できない課題が浮上し、各社は対応を迫られている。今後、日本企業が取り組むべきグローバル人事のあり方とは——。KPMGコンサルティングの寺崎文勝氏とKPMG税理士法人の宮原雄一氏に話を聞いた。

あずさ監査法人 次世代監査技術研究室室長/パートナー 公認会計士 小川 勤 氏
KPMG税理士法人
アカウンティング&ピープル サービス
グローバル モビリティ サービス

パートナー/税理士
宮原 雄一
KPMGコンサルティング
People & Change
パートナー
寺崎 文勝

報酬制度の標準化なくしてグローバル人事は成功しない

少子化により内需縮小が進む中、新たな成長機会を求めて企業の海外展開が加速。各地での事情に精通し、幅広い視野と行動力を備えた「グローバル人材」の採用ニーズが高まっている。

「日本企業のグローバル人事は、第3ステージにさしかかっています」と、指摘するのは寺崎氏だ。日本企業のグローバル人事は、日本から特定の国に駐在員を派遣する形で始まった。その後は新興国への進出が進み、約10年前にグローバル人事ブームが到来。海外駐在員の渡航先も多様化し、人事の多国籍化が進んだ。

「これらの人事異動はいずれも日本が起点でしたが、今はタイからベトナムへ、アメリカからアフリカへと、あらゆる国を起点として人材配置が行われるようになりました。国の垣根を越えて最適な人事マネジメントを行わない限り、真のグローバル化は進まない。これが、日本企業における経営課題の1つとなっています」(寺崎氏)

グローバル経営を実践するためには、国籍を問わず、いかにグローバルで人材を最適化できるかが鍵となる。特に、事業全体に影響を及ぼす役職者などの重要なポジションについては、全世界の拠点からいかに最適な人材を選抜・登用できるかが、企業の命運を左右するといっても過言ではない。

「そのために必要なのは、ローカル人事とグローバル人事の2本立てによる制度設計です。その上で、グローバル人材については現地拠点ではなく本社が管理し、『どの国にどんな人材がいるか』を“見える化”していく必要がある。そのためグローバル企業を中心に、世界規模で人材配置を最適化するタレント・マネジメント・システムの導入が進められています」(寺崎氏)

とはいえ、グローバル人事制度の構築にあたっては課題も山積している。なかでもボトルネックとなっているのが、報酬制度の問題だ。グローバル・モビリティ(国際間異動)を拡大するためには、ポストに応じて給与・報酬規定を標準化する必要がある。だが、日本企業の役員の報酬水準は欧米企業よりも低いため、標準化にあたって報酬水準を上げざるをえないケースが多い。これが、グローバル人事制度の導入が進まない理由の1つだ。

人事の主要業務やグローバル展開の強化のために外部への業務委託が進む

本社主導による税務ガバナンスの構築が急務

それだけではない。報酬制度の標準化を難しくしているのが、国ごとに異なる法制度や税制だ。たとえば、役員報酬としてストックオプションや現物株を支給すると、国によって税負担などが異なるため、手取り額に大きな差が生じてしまう。各国の法や税制に精通していなければ、グローバルに標準化された報酬制度を作ることは難しいのが実情だ。「グローバル・モビリティを実現するためには、各国間を異動する人材に不利益がないよう調整しなければならない。その上で、グローバルに統一された報酬制度を検討する必要があります。しかし、そのレベルに到達した企業はごく一部にとどまっているのが現状です」と宮原氏は語る。

たとえば、海外拠点間に異動した結果、税負担が増えて報酬の手取り額が減るような場合には、何らかの形で補填しながら条件を揃えていく必要がある。だが、こうした想定以上の税負担が増加した場合であっても、現地人事部が本社と問題意識を共有化していないため、本社への報告がされないケースも少なくない。

さらに、赴任国によって税制が違うため、税金の申告作業も煩雑になりがちだ。もし海外駐在員の申告漏れが発覚すれば、追徴課税の対象となるだけでなく、企業にも重大なレピュテーション・リスクをもたらしかねない。

「従来、日本企業の海外拠点の税務は現地の人事部が主導するケースが多く、現地での処理がブラックボックス化しがちでした。また、税務アドバイザーの選定も現地任せで、サービスの質にバラツキが目立つ。もし、税務アドバイザーから提供される情報の精度が低ければ、本社の経営戦略立案やリスクコントロールに支障をきたします。

一方、欧米のグローバル企業では、本社主導で各国拠点の税務ガバナンスを強化する、グローバル・タックス・マネジメントが主流となっています。日本企業もまた、本社主導でグローバル人材の税務ガバナンスを確立しない限り、戦略的なグローバル人事・報酬制度を確立することはできません。まずは、税務も含めた人事オペレーションの基盤を整備することが急務となっています」(宮原氏)

こうした中、グローバル人事業務で社外リソースを活用する動きも広まっている。KPMGインターナショナルの調査「Global Assignment Policies and Practices Survey 2017 results」によれば、人事部門の人員不足と事業拡大のために、グローバル人事に関する業務の外部委託が進んでいる。こうしたニーズに対応するため、KPMGでは世界152カ国に広がるグローバルネットワークを活用し、各国の税制や報酬水準の最新情報をいち早く入手。アドバイザリー・税務・会計のプロフェッショナルが結集し、グローバルな人材戦略の策定や税務マネジメント、実務面のアドバイスなど幅広いサービスを提供している。

「グローバルな人事・報酬制度の構築に向けて、戦略的な仕組みを提案すると同時に、税務の立場から実効性を検証できるのがKPMGの強み。各法人が連携し、真のグローバル人材マネジメントの実現に向けて貢献したいと考えています」(寺崎氏)

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