2018年の春までに、時代を象徴するかのようなホテルが3つ、開業する。

先陣を切って2月に東京・渋谷に誕生するのは、「hotel koe tokyo」。運営は、アパレルブランドを複数展開するストライプインターナショナルだ。

「KOE」は同社が展開するグローバル戦略ブランド。その旗艦店の最上階3階部分がホテルとなる。客室は4タイプ・10室。1階は飲食・イベントスペースに、2階はアパレル・雑貨ショップに充てる。

神奈川県箱根町の強羅温泉で春の開業を予定するのは、ホテルを核とする複合施設「箱根本箱」である。日本出版販売が所有する築20年ほどの保養所をリノベーションし、ホテルのほかに、書店、飲食・物販施設、コワーキングスペースなどを整備する。総合監修・企画を担当したメディア会社の自遊人が運営も受託する。

ライフスタイル提案で一般法人が宿泊事業へ

ホーワス・アジア・パシフィック ジャパン取締役マネージングディレクター 高林 浩司氏
ホーワス・アジア・パシフィック ジャパン取締役マネージングディレクター 高林 浩司氏
ホーワス・アジア・パシフィック ジャパン取締役マネージングディレクター 高林 浩司氏
ホーワス・アジア・パシフィック ジャパン取締役マネージングディレクター 高林 浩司氏

箱根本箱のホテルは、「本のある暮らし」を提案する宿泊者専用スペースという位置付け。客室は19室で、各室にオリジナルの本棚を設置する。このうち18室には温泉露天風呂が併設される。

さらに4月末には、京都市内で「京の温所(おんどころ)」という宿泊施設がオープンする。これは、その価値・特性を生かしながら京町屋を現代の住空間としてリノベーションするものだ。

事業主は、ワコール。グループ会社が運営する複合文化施設「スパイラル」と連携する。京都の文化やコミュニティーとつながる場を創出し、その場を通じた印象深い滞在体験を提供する。

これら3つのホテルは、一般法人が宿泊事業に取り組む点が共通している。しかも、単なる宿泊の場ではなく、ライフスタイルや滞在体験を提供するという方向性も重なる。

強みは、ライフスタイルブランドの力だろう。ストライプインターナショナル、自遊人、スパイラルと、いずれもそれぞれの世界でブランドを築いている。それが、集客力として作用する。

先行例には、東京・渋谷に2017年5月にオープンした「TRUNK(HOTEL)(トランクホテル)」がある。このホテルは、「自分らしく、無理せず等身大で、社会的な目的を持って生活すること」を意味する「ソーシャライジング」というライフスタイルをコンセプトに掲げる。運営は、結婚式場運営のテイクアンドギヴ・ニーズのグループ会社が手掛ける。

ホテル投資・開発へのコンサルティングサービスを世界中で提供するホーワスHTLで日本地区の責任者を務める高林浩司氏も、「独自に展開するライフスタイルブランドを武器に宿泊事業に参入し、顧客を確保しようという戦略でしょう」とみる。

異業種からの参入が相次ぐ宿泊事業。その背景にあるのは、言うまでもなく、インバウンドの増加によって宿泊需要の伸びが見込まれるという点だ。

あらためてインバウンドの増加ぶりをみておこう。

図1/訪日外国人旅行者数と延べ宿泊者数の推移
図2/宿泊施設の着工棟数の推移

図1のグラフで示したのは、訪日外国人旅行者数と延べ宿泊者数の推移だ。訪日外国人旅行者数はここ数年右肩上がりに増え続け、2016年は前年比21.8%増の約2404万人に達した。それに伴い、外国人に関しては延べ宿泊者数も増え続け、2016年は前年比5.8%増の約6940万人泊を数えた。

いきおい、こうした需要を取り込もうと、宿泊施設の建設にも弾みがつく。

図2は、東京、大阪、京都の1都2府に関して、宿泊施設の着工棟数を年度別に示したものだ。いずれの地域でも、2014年度以降、急増していることが分かる。2016年度の着工棟数は3年前に比べると、東京や京都は5倍前後、大阪は約15倍にまで増えている。

TREND
独自性打ち出す「ライフスタイルホテル」グローバルブランドも続々進出 次世代の顧客層を開拓する狙い

「ライフスタイルホテル」というカテゴリーはもともと、既存のホテル業界から登場していたものだ。ホーワス・アジア・パシフィック、ジャパン取締役マネージングディレクターの高林浩司氏によれば、1980~2000年生まれのミレニアル世代に代表される、行動スタイルや好みが従来の顧客層と全く異なる層を獲得しようと打ち出されたものだという。

最近は、グローバルチェーンの「ライフスタイルホテル」が日本国内に進出する例が目に付く。2017年11月には東京・錦糸町と大阪・本町に、米マリオット・インターナショナルの「ライフスタイルホテル」である「モクシー」がオープン。2020年には東京・虎ノ門と東京・銀座に、同じく米マリオットの「ライフスタイルホテル」である「エディション」が開業する予定だ。「ラグジュアリー」「プレミアム」「セレクト」と大きく3つに分けられたブランドの中で、「モクシー」は「セレクト」に、「エディション」は「ラグジュアリー」に位置付けられている。

高林氏はそのビジネスモデルの本質をこう分析する。「好みのライフスタイルを経験することができるなら高価格を支払うことをいとわない顧客層を獲得することで、客室当たりの投資効率を従来のブランドより高めることにあります」。グローバルチェーンの「ライフスタイルホテル」なら、増加の見込まれるインバウンドに受け入れられる素地がある。高林氏は「今後、こうした『ライフスタイルホテル』を日本に誘致する例が増えていくでしょう」とみている。