客室単価引き上げ狙い観光需要の取り込みを

既存の宿泊施設でも、訪日外国人旅行者の観光需要を取り込もうとする動きはみられる。収益性を確保することを考えても、ビジネス需要に比べ観光需要が有利だからだ。

高林氏はこう指摘する。「客室料金の仕組み上、客室当たりの宿泊人数が多いほど、売り上げが増えます。そのため、2、3人で宿泊する観光客はありがたい存在です。ビジネスホテルも、客室単価をより上げられる観光客の取り込みに動いています」。

具体的には、客室に手を加え、複数人の宿泊に対応する。「室内のレイアウトを工夫し、ベッドを大きめのものに取り換えたり追加したりして収容人数を増やそうとしています」(高林氏)。

つまり、平均客室単価(ADR)や販売可能客室数当たり客室売上(RevPAR)を引き上げる戦略だ。

高林氏はこう解説する。「人手不足の影響もあるため、ホテル側は客室稼働率(OCC)を多少落としてでも、総売り上げを増やしたい。客室単価を上げられれば、在庫として抱える客室も高く売れる可能性が生まれます」。

図3/国内ホテル需要(1)東京・宿泊主体型ホテル
図4/国内ホテル需要(2)沖縄・リゾートホテル

では、客室の稼働率や収益性は、実際どのように推移しているのか――。東京、沖縄、それぞれに立地するホテルの稼働率や収益性の推移を示したのが、図3、4だ。

まず東京の場合。ADRとRevPARは5年前に比べ伸び続け、OCCは多少の増減はあるものの88%台を保ってきたが、2017年1~8月には前年同期に比べ、ADRやRevPARが減少し、潮目の変化が見られるようになってきた。ちなみに大阪の場合も、大まかな傾向は東京と共通している。

これに対して、沖縄のリゾートホテルは依然として好調さを保つ。ADR、RevPAR、OCCという3つの指標は、2012年以降一貫して増え続けている。2017年1~8月はADRで前年同期比4%近く、RevPARで同7%近くの伸びを見せた。OCCも前年同期と比べ2.4ポイント増の86.6%を記録した。

CASE STUDY
ホテルアクアチッタナハ by WBF(沖縄県那覇市)
概要
ホテルアクアチッタナハ by WBF(沖縄県那覇市)
開発型AM事業で屋上プール付きのホテル立地条件を生かし、レジャー需要にも対応

ホテルアクアチッタナハ by WBFは、東急リバブルが開発型アセットマネジメント(AM)事業の一つとして那覇市中心部に建設したシティリゾートホテルだ。オープンは2017年10月。WBFリゾート沖縄が運営を担う。立地は、沖縄本島の主要幹線道路である国道58号線沿い。那覇空港から車で約15分、沖縄都市モノレールの最寄り駅から歩いて約7分、と交通アクセスに優れる。

こうした条件の良さから、東急リバブルでは土地を取得した2015年6月当時からホテル開発を見込んでいた。折しも、沖縄県の入域観光客数は毎月過去最高を更新し続けていた時期。格安航空会社(LCC)などの航空路線の拡充が見込まれ、那覇空港では2020年3月供用開始を目指し新滑走路の建設が始まっていた。

東急リバブルでは取得した土地を自ら出資し設立した特定目的会社(SPC)に売却し、自らはそのSPCとの間でプロジェクトマネジメント(PJM)兼アセットマネジメント(AM)契約を締結。収益性を確保できるという具体的な根拠を示しながら資金を調達する一方で、設計者や施工者、ホテルオペレーターを選定し、ホテルの開発を進めてきた。この段階から集客力の確保に向けた差別化を強く意識。宿泊特化型の施設ではあるもののレジャー需要にも対応できるプランを採用した。ビジネスとレジャー、両方のニーズを取り込むことで、年間を通じて高い稼働率を実現する狙いだ。

具体的には、シングルルームでも最大3人が宿泊できるように、客室の間口を広めに確保した。さらに、最上階からは那覇の街並みを一望できることから、屋上を人が集まる空間にしようと、県内初のシースループールやルーフトップバーを配置した。これらの設えによって、通常のビジネスホテルとは異なる、ワンランク上のグレード感を醸し出している。

開発型AM事業では、ホテルオープン後、SPCは土地・建物の所有権を国内投資家に譲渡した。東急リバブルはSPCを組成する段階でエクイティ投資の機会を、出口の段階で実物投資の機会を提供。投資機会の創出に一役買っている。

併設レジデンス分譲で投資資金の早期回収も

東京や大阪で好調さに若干の陰りが見え始めた点を、高林氏はこうみている。「ADRやRevPARはここ数年、急速に伸びたこともあって、2017年になって調整期に入ったと考えられます。新規の供給が相次いでいるため、需給バランスを考えると、以前ほど需要超過ではないとみられます」。

こうした市況の下で新規にホテルの開発事業に取り組む場合は、「市場の中でのポジショニングを意識することが不可欠です」と、高林氏は言い切る。要は差別化だ。ライフスタイルブランドの力を武器に事業参入を果たす冒頭の例は、そうしたポジショニングを意識したものとも言える。

開発事業に取り組むうえでもう一つ課題になるのは、建築コストの高さだ。それによって事業収支が圧迫されるのを和らげる必要がある。

対応策は、すでにみられる。「ホテルにレジデンス部分を併設し、そのホテルのブランドに見合う価格で分譲するという対応策が取られています。そうすることで、投資資金の早期回収を図る狙いです」(高林氏)。ホテルのブランド力を生かした手法でもある。

実際、レジデンス併設のラグジュアリーホテルは少なくない。オープン済みのものとしてフォーシーズンズホテル京都の例があるほか、北海道ニセコ地区で2019年開業予定の「パークハイアットニセコHANAZONO」でも総戸数114戸が計画されている。

2020年東京オリンピック・パラリンピック後のインバウンド需要を心配する向きも見られるなか、中長期の需要はどうみればいいのか――。

高林氏は「今後、海外旅行できる人口はアジアを中心に億単位で増える見通しです。それだけの需要増をまだ見込めます」とみる。実際、国連世界観光機関の長期予測では、世界全体の国際観光客到着数(宿泊を伴う訪問客)は2010~30年に年平均3.3%増加し、2030年には18億人に達する。

政府が掲げる訪日外国人旅行者数の目標は2020年時点で4000万人。高林氏は「2017年は2800万人程度の見通しです。厳しめに見積もっても、それがさらに2、3割増えて、2020年時点で三千数百万人に達するというのは、異論がないはずです」と期待を懸ける。

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東急リバブル FOR BUSINESS
東急リバブル ソリューション事業本部 事業戦略部長 菊池 秋雄
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東急リバブル ソリューション事業本部 事業戦略部長 菊池 秋雄

異業種から宿泊事業に取り組む際に心強いパートナーとなるのが東急リバブルだ。不動産仲介の東急リバブルは、法人や個人投資家を対象に投資用・事業用不動産のソリューションサービスを提供している。既存のホテル・旅館の売買サポートはもとより、オフィスビルやマンションをホテルにコンバージョンした案件も手掛けている。

「ホテルアクアチッタナハ」は東急リバブルが2015年に立ち上げた「開発型アセットマネジメント(AM)事業」の第一弾で、ホテル開発の基本計画から設計、建築までの一連の工程をマネジメントした。すでに投資家へ売却しており、確かな出口戦略とコスト・工程管理を実現している。

開発型アセットマネジメント事業のスキーム(例)

東急リバブルの開発型AM事業の特徴は、「プロジェクトマネジメント」と「アセットマネジメント」の機能を併せ持つ点だ。全国から集まる豊富な不動産情報をベースに物件をソーシングするとともに、ゼネコンや設計会社、オペレーター、売却先の選定でも、広範なネットワークを通じた強みを発揮。同時に、アセットマネジャーとして豊富なノウハウを活用してファイナンスのアレンジから対応し、一般的に難しい開発資金の調達をスムーズに進めた。

東急リバブルの菊池秋雄氏は「今後も、エリアやアセットを問わず、仲介会社ならではの目線で、優良な投資機会を創り出していく。開発利益はIRR(内部収益率)で20%以上を目標としている」と話す。

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お問い合わせ先 | 東急リバブル株式会社 ソリューション事業本部