言われるがままに支払い続けていると、たいへんな損失につながりかねない。不動産の保有コストである。保有期間中はずっとかかり続ける費用だけに、余分な出費は時間とともに膨れ上がる。

例えば電気使用料金や上下水道使用料金では、使用量を抑える設備を取り入れたり電力会社を見直したりするなど、工夫の余地がある。現在のコストが保有する不動産にとって適正なものなのかは、確認しないと分からない。

ここ数年、とりわけ問題視されるようになったのは、固定資産税と都市計画税である。ともに、市町村が土地・建物の固定資産評価額に一定の税率をかけて課税するもの。市町村の税額通知を基に土地・建物の所有者が納付することから、賦課課税と呼ばれる。

2012年8月には、この2つの税目で税額の修正が相次いでいる実態が総務省の調査で明らかになった。

要因トップは評価額の修正 J-REITでも還付計上相次ぐ

ホーワス・アジア・パシフィック ジャパン取締役マネージングディレクター 高林 浩司氏
ホーワス・アジア・パシフィック ジャパン取締役マネージングディレクター 高林 浩司氏

調査回答団体数は1592市町村(岩手県、宮城県、福島県の市町村は調査対象外。東京区部は未回答)で、調査対象期間は2009~11年度の3年間。この間に税額修正した納税義務者が1人以上いたという市町村は累計で1544団体にも及ぶ。調査に回答した市町村の実に97%で税額修正が発生していたのである。

実際、国内の証券取引所に上場するREIT(不動産投資信託)の決算資料を見ると、こうした税額修正の結果として固定資産税の還付金を受け取る例が相次いでいることが分かる。

MIDリート投資法人(現MCUBS MidCity投資法人)が営業外収益に固定資産税等還付金約1530万円を計上したのは、2012年6月期。以降、日本ビルファンド投資法人は2013年6月期に同約2億520万円を、グローバル・ワン不動産投資法人は2014年9月期に同約970万円を計上した。

このほかジャパンリアルエステイト投資法人は2014年9月期に固定資産税等還付金約840万円を計上したのに続き、15年3月期には約2170万円を、16年3月期には約150万円を立て続けに計上。この3期分だけで還付金の合計は3000万円を超えた。

これらの投資法人のポートフォリオは、大都市部の事務所が中心。一般事業法人が保有する不動産でも税額修正が起こり得る可能性がうかがえる。

では、税額修正に至った要因は何なのか――。先に紹介した総務省の調査では、土地と家屋に分けて税額修正の要因を明らかにしている(表1)。

トップは、土地・建物ともに「評価額の修正」だ。評価額が誤っていたというのである。土地ではそれに、「負担調整措置・特例措置の適用の修正」や「現況地目の修正」などが、家屋ではそれに、「家屋滅失の未反映」や「新増築家屋の未反映」などが続く。

表2は、評価額の修正にまで至った主な原因を、家屋を例に列挙したものだ。これを見る限り原因はさまざまだが、根っこには評価の仕組みそのものの問題がありそうだ。

一級建築士事務所でもある建物鑑定の代表取締役、佐藤雅宣氏は、「評価の詳細は納税義務者に知らされません。知らされないので、検証しようがない。誤りが混入する恐れが、仕組み自体にあるわけです」と喝破する。

表1/税額修正の要因
表2/評価額の修正(家屋)に至った主な原因
表2/評価額の修正(家屋)に至った主な原因

竣工図面と工事内訳書を基に建築実務の未経験者が評価

図1/固定資産税評価額(家屋)の決定から課税までの流れ

評価の流れは図1に示した通り。建物オーナーはその登記を終えると、課税庁(自治体の資産税課)から竣工図面や工事内訳書などの提出を求められる。評価の担当者はこれらを基に建物に使われている資材や設備を拾い出し、同じ建物を再建築した場合に必要な費用を評点化して、固定資産税評価額を算出する。

佐藤氏が問題視する第一の点は先のコメントの通り、納税義務者に対しては評価額だけが通知され、その根拠は一切開示されないこと。それでも納税義務者は課税団体を信頼し、根拠の示されないまま納税義務を果たしてきた。

佐藤氏が問題視するもう一つの点は、評価の進め方の限界だ。「建物がすでに仕上がってしまった状態で、建築実務の経験がない担当者が竣工図面や工事内訳書を基に資材や設備を正確に拾い出すのは困難です」。

図2/固定資産評価(非木造家屋)に用いる部分別区分と再建築費評点基準表

評価の進め方をもう少し詳しく説明しておこう。家屋を評価する場合、建築資材などの原価を合計して求めるのが基本だ。総務省が告示する「固定資産評価基準」に従って、工事の内容を「主体構造部」から「その他工事」まで区分けし、それぞれに使用している資材や設備について評点数を求めていく。そこに、建物の使用などに応じた各種の補正係数を掛ける(図2)。

それらを足し込んだ再建築費評点に、年月の経過を踏まえた減価率に当たる経年減点補正率や、床面積、評点1点当たりの価額を掛け合わせたものが、家屋の評価額になる。

こうした評価のための計算は、そう簡単ではない。一つには、実際の工事内訳書が図2のような区分通りに書かれているわけではないからだ。

佐藤氏は一例を挙げる。「鉄骨であれば、主体構造部に使用するものもあれば、それとは別に補助部材として使用するものもあります。しかし、実際の工事内訳書では明確に区分されていません。仮に補助部材の鉄骨まで主体構造部の鉄骨として加えてしまうと、主体構造部が過大に評価されてしまいます」。

補正係数も厄介な存在である。補正を加える基準が明確なものがある一方で、不明確なものもあるからだ。

例えば、主体構造部の「工事形態」による補正。鉄骨造では、工事形態が「複雑」な場合には1.1を、「普通」は1.0を、「簡易」は0.8を補正係数として掛ける。ところが、この3つの差は明確に示されてはいない。「どう見るかは評価者次第。評点数を恣意的に増減させられる仕組みにもなっています」(佐藤氏)。

課税団体側が明らかにした課税ミスの具体例を見てみよう。東京都武蔵野市が2017年8月に公表したものだ。

案件は、地下が鉄筋鉄骨コンクリート造で地上が鉄骨造の築20年ほどの事務所ビル2棟。これらのビルで固定資産税と都市計画税の過大徴収が発覚し、還付金約2億2300万円が生じることが明らかになったという。

原因は、経年減点補正率の適用ミスだ。この例では、地上と地下で構造が違うにもかかわらず、鉄骨鉄筋コンクリート造の補正率を全体で一律に適用していた。同じ築年であれば鉄骨鉄筋コンクリート造は耐用年数が長いため、減価率は小さく、補正率は1に近い。その結果、築20年ほどのビルにもかかわらず十分に減価されず過大徴収につながった。