Mixed Realityから始まる産業革命

京都発EVベンチャーが描く、デジタル時代の新しいものづくり

自動車業界に新風が吹き始めている。京都に開発拠点を置くEV(電気自動車)ベンチャー、GLMは様々な分野の170社以上とエコシステムを構築し水平分業型の新しいビジネスモデルで EV の可能性を拓く。GLM 代表取締役社長 小間裕康氏が見据えているのは自動車ビジネスの未来だ。世界に挑むベンチャーが Microsoft HoloLens に見たポテンシャルとは?エコシステムを成功に導くうえで欠かせないコラボレーションツールとしての期待を語る。

[ 小間裕康氏プロフィール ]

水平分業型の「KYOTO生産方式」で
自動車業界の常識を打ち破る

―そもそも自動車産業のイメージがない京都で、なぜ EV メーカーを起業したのですか?
GLM株式会社 代表取締役社長 小間 裕康 氏 小間:京都は1997年に地球温暖化防止京都会議(COP3)で「京都議定書」が締結されるなど環境への意識が非常に高い地域です。また、世界で活躍するテクノロジー企業が集積しており、これらの企業の技術を結集すれば、京都の中だけで EV の基幹システムができると言われていました。
私が京都大学大学院経営管理教育部に在学中、大学内で活動していた「京都電気自動車プロジェクト」に参加したのが、GLM を起業する原点となりました。同プロジェクトの人的ネットワーク、企業間ネットワークを継承し2010年に事業化したのが GLM です。
自動車業界は伝統的に設計開発から生産までを自社グループで行う垂直統合型の大量生産方式となっています。GLM は様々な企業の“強み”を集めてものづくりを行う水平分業型の生産方式。我々は「KYOTO生産方式」と呼んでいますが、この方式はこれまでの自動車業界の常識を打ち破るものです。

GLMが2016年に発表した EV スーパーカー、「GLM G4」。想定価格は4000万円で、“EV版フェラーリ”とも呼ばれる。GLMの「KYOTO生産方式」が、革新的なプロダクトを可能にした。

投資家からの資金調達や、
マーケティングフェーズの強力な武器に

― Microsoft HoloLens の複合現実は、ビジネスのどのようなフェーズで役立つでしょう?
小間:企業が継続的に成長していくうえで投資のフェーズは重要です。Microsoft HoloLens は、ベンチャーと、ベンチャーのビジョンや技術力に共感し支援する投資家との間で、理解や信頼を築く架け橋としての役割を担えると思います。
例えば「 EVメーカーになる」と言うと、100人会えば100人とも「そんなことは無理だよ」という話から始まります。重厚長大な自動車産業の常識からすれば至極当然のことです。投資家など否定的だった方々に対し、最も説得力があるのは開発現場に足を運んでもらって、「この会社は本当に自動車をつくるかもしれない」と実感していただくことです。
しかしベンチャーにとって、資金調達フェーズではまだ実物がなく、PC 上のデータしかありません。当社も初めは、京都のパートナー企業の協力のもとで試作を繰り返しました。アメリカの投資家に説明したときも企画書では全然理解を得られず、試作の EV が動いているところを撮影した動画を見てもらい、ようやく京都の開発現場に来てもらう道筋をつけました。
様々な困難を乗り越え、GLM が2014年に発表したEV「トミーカイラZZ」。その後2015年に海外ファンド、国内ベンチャーキャピタル、国内外事業者から増資を受け、量産を開始した。「2015年日経優秀製品・サービス賞 優秀賞」受賞。 小間:当社のように開発先行型の企業が「つくりたいもの」の説明や技術のプレゼンテーションを行う場合、Microsoft HoloLens を使って完成形の 3D モデルを“体感”してもらうことは、投資家や利益関係者の理解を得るのにとても有効です。説得力はもとよりインパクトが違います。プロダクトの見た目だけでなく、内部構造まで説明できるのも大きなメリットです。
さらに、マーケティングリサーチのフェーズでも活用できるでしょう。Microsoft HoloLens を使って、お客様に実物大の 3D モデルを見てもらい、生産開始前に様々なフィードバックを得たり、そこで予約を取れたりすると、いわゆる受注生産のスタイルで事業が行えます。クラウドファンディングのように、自動車ビジネスが大きく変わる可能性があります。

少数精鋭の企業でも
グローバルなコラボレーションが可能になる

―様々な企業と水平分業型で EV をつくっていくプロセスで Mixed Reality は使えますか?
小間:GLM の社員は20数人で、ほとんどがエンジニアです。現在、デザイン会社、部品メーカー、エンジニアリング会社、情報機器メーカーなど様々な分野の170社以上の企業をアライアンスパートナーとして、企業ネットワークを構築しています。パートナー企業は国内のみならずグローバルに広がっています。水平分業型のものづくりはコラボレーションが生命線となるため、チーム作業で完成イメージやビジョンの共有を可能にする Microsoft HoloLens への期待は大きいものがあります。 さきほど私も Microsoft HoloLens を体験しましたが、場所に依存することなく一緒に作業ができる感覚というのは初めてです。ケーブルレスなので、3D モデルの周りを歩きまわって、内部構造を覗き込むこともできるなど作業性に優れています。当社の社員も「 VR は視界を全て覆ってしまうので作業するのは危険だけれど、シースルーで現実世界と 3D モデルを一体化する Microsoft HoloLens はぜひ使ってみたい」と凄く興味を持っています。 例えば社内のエンジニアが社外のデザイナーと打ち合わせを行う際、お互いに Microsoft HoloLens を装着して同じ 3D モデルを見ながら会話をすることで、設計とデザインの不整合を確認しやすくなり、早い段階から完成度を高めていくことができます。また海外のエンジニアリング会社と詳細設計の検討を行う場合、時差をうまく利用すれば開発スピードもアップできるでしょう。同じ 3D モデルに対し「ここを確認しておいてほしい」とお互いが寝ている間にチェックマークをつけたりできるのは非常にいいですね(笑)。

Microsoft HoloLens を体験中の小間氏。指先のジャスチャで 3D モデルを自在に呼び出し、操作できる。

Mixed Reality による
デジタル時代の新しいものづくりのスタイル

―走るためのパーツ群をパッケージ化してプラットフォームとして技術を他社に提供、企業が求めるオリジナルデザインを共同開発していく――。画期的なアプローチを GLM では進めていますね。
旭化成株式会社と共同開発した次世代クロスオーバー車のコンセプトカー。車両内部は「トミーカイラZZ」のプラットフォームを活用しているので、コンセプトカーながら“実際に走る”ことができる。(写真提供:旭化成) 小間:自動車メーカー以外でも、GLM の技術プラットフォームをご活用いただくことで、初期投資を抑えながら比較的短期間でオリジナル EV を開発し販売することが可能です。家電、IT、化学、ファッションブランドなど様々な分野のプレイヤーに自動車産業と自動車市場を一気に開放します。電気自動車は、IoT、AI など先進の ICT との親和性が高く、従来の自動車業界の枠を超えて異業種とのコラボレーションによりその可能性を無限に広げることができます。
そのコラボレーションの過程で Microsoft HoloLens を使うことで、共有のワークスペースを構築したり、新しい自動車づくりへの理解を深めたりと、エコシステムの輪の広がりを加速できると思います。
これからは異業種とのグローバルなコラボレーションによってイノベーションを創り出す動きがますます活発化していきます。そうなったとき、現地現物にこだわっていては先へ進めません。デザイナー、エレクトロニクス、販売会社といったビジネスに関わる多くの企業からフィードバックをもらう場合、Microsoft HoloLens は非常に強力なツールとなりえます。 Mixed Reality によるデジタル時代の新しいものづくりのスタイルは、EV の開発、製造、販売など自動車ビジネスのあり方を根底から変えるポテンシャルを秘めています。こうしたテクノロジーを駆使しながら、京都から世界へエコシステムを大きく広げ、パートナー企業やお客様と一緒に自動車産業の新しい未来をつくっていきたいですね。

京都から世界へ――。少数精鋭のベンチャー企業が産業を変えていく。そこでの Mixed Reality のインパクトを語ってくれた小間氏。

小間 裕康(こま・ひろやす)
GLM株式会社 代表取締役社長

1977年生まれ。京都大学大学院経営管理教育部卒。1999年、株式会社コマエンタープライズを設立。国内外の家電メーカー向けの事業を展開し、年商20億円まで成長させる。2010年、京都電気自動車プロジェクトの流れを汲み、現GLM株式会社を設立。京都府の運営する「次世代自動車パートナーシップ倶楽部」内に、京都の部品メーカーを中心とした『京都電気自動車開発ワーキンググループ』を設立し、開発を進めた。2014年、ベンチャーとして初の量産EVスポーツカーの国内認証を取得、「トミーカイラZZ」の納車を開始し、2015年にトミーカイラZZの量産を開始。

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