Mixed Realityから始まる産業革命

新潟発、Microsoft HoloLens で建設業を変える

建設業では技能労働者不足が深刻化しており、2025年には47~93万人の技能労働者が不足するといわれている※。担い手の確保・育成に加え、生産性の向上は最優先課題だ。新潟の総合建設会社、小柳建設は日本マイクロソフトと連携し協業プロジェクト「 Holostruction(ホロストラクション)」を推進している。Microsoft HoloLens を使ったデジタルトランスフォーメーションで、これまでの建設業の常識や働き方を変えていく。新潟から建設業の新時代が始まる。
※出典:国土交通省中央建設業審議会・社会資本整備審議会産業分科会建設部会 基本問題小委員会 平成28年審議 中間とりまとめ

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新潟から親子3代で建設業に新しい風を吹き込む

小柳建設株式会社 代表取締役社長 小柳 卓蔵 氏 会議室に突然、橋が現れた。現実の風景は何も変わっていない。椅子やテーブル、壁はそのまま存在している。両手も見える。空間に浮かぶ橋は3次元映像とは思えないほどリアルだ。最初は100分の1、次に50分の1、10分の1、そして1分の1の実物大になったとき橋の上に立っている感覚になった。
Microsoft HoloLens の体験会を開催すると、事前説明を聞いているときの表情と、本人が Mixed Reality(複合現実)を体験した後の表情との違いに驚くと小柳建設 代表取締役社長 小柳卓蔵氏は語る。「当社は国土交通省や県、市町村の担当者の方、記者の皆さんなどにMicrosoft HoloLens を体験していただく機会を設けています。みなさんテンションが上がりますね。Microsoft HoloLens は資料映像で見るのと、実際に自分で体験するのとでは感覚が全く違います。会議室に現場を持ってきて、その上を歩くことができる。まさに Mixed Reality、現実世界と仮想世界が一体化した新しい体験です」
五十嵐川災害復旧助成事業として小柳建設が手掛けた新潟県三条市の永田新橋。この設計データを用いて、Microsoft HoloLens のアプリケーションを開発した。 小柳建設が得意とする浚渫(しゅんせつ)事業。河川底面に堆積した土砂を計画通りに取り除くには高い技術力が要求される。 同社の体験会でデモとして使われているアプリケーションは、小柳建設が実際に工事に携わった永田新橋のデータをもとに、小柳建設とマイクロソフトが共同で開発した。信濃川の支流、五十嵐(いからし)川に架かる永田新橋は、2011年の新潟・福島豪雨災害に伴う橋の架け替えによって2016年に開通した橋だ。
1945年創業以来、同社は建設事業を通じて社会のインフラを支え、地域の発展に貢献してきた。また時代の一歩先を見据え、業界に先駆けて新たな技術にチャレンジするのも同社の特色だ。
「私の祖父である初代社長は、建設現場における安全性や効率性の向上を図る建設機械をいち早く採り入れました。また私の父である二代目の社長は、環境問題への関心が高まる前から『人間が汚したものは人間がキレイにしなければならない』という考えのもと土木工事の浚渫(しゅんせつ)に取り組みました。浚渫とは河川や湖沼などの底面に堆積した土砂を取り除く作業のことです。当社は、皇居外苑千鳥ヶ淵、神田川、隅田川などの浚渫工事で実績を積み重ね、『浚渫といえば小柳建設』と言われるほど高い評価を得ています。そうしたチャレンジ精神のDNAは今も受け継がれています。私には今、 Microsoft HoloLens で建設業界を変えていきたいという、強い思いがあるのです」

小柳建設と日本マイクロソフトの協業プロジェクト
「 Holostruction 」

小柳氏は Microsoft HoloLens を見た瞬間に、その可能性を直感したという。 9年前に同社に入社する以前、小柳氏は金融系の企業に勤めていた。外の目から見ると、建設業が自ら変わらないことが気になっていたという。「少子高齢化で人材確保が難しい中、3K(きつい、汚い、危険)のイメージで人がなかなか集まらない。またデータの改ざんや耐震偽装事件などにより不透明な業界といったレッテルも貼られました。建設業は社会インフラを担う誇りと情熱がもてる仕事です。当社の社員も人のため世のため、懸命に働いています。その姿を見るにつけて建設業に対する世の中の評価を変えていきたいと考えるようになりました。世の中を変えるためには、まず建設業自らが変わらなければなりません」
2016 年7月、カナダのトロントで開催されたマイクロソフトのイベントで、小柳氏は Microsoft HoloLens と運命的な出会いを果たす。「見た瞬間にこれこそ建設業のためにあるデバイスだと思いました。デジタルトランスフォーメーションで建設業を再編しなければならない時代です。Microsoft HoloLens を活用することで、建設業の“変わらない仕組み”や“人の意識”を一気に刷新できると直感しました。すぐその場で、Microsoft HoloLensを使いたいがどうしたらいいだろう? とマイクロソフトに相談したのです」
この出会いが、Microsoft HoloLens を活用した小柳建設とマイクロソフトの協業プロジェクト「 Holostruction(ホロストラクション) 」へとつながっていく。Microsoft HoloLens を活用したデジタル化で、建設業にイノベーションを起こすプロジェクトが動き出した瞬間だ。

新潟から Microsoft HoloLens を使って建設業を変革

どのようにデジタル化時代の建設業に変革していくか。小柳氏は3つのテーマを設けている。 1つめは計画、工事、検査、アフターメンテナンスのすべてを可視化し業務の透明性を図ること。政府が推進する i-Construction(建設業における ICT の全面的活用)を後押しできることを目指す。
「 Microsoft HoloLens を使うことで計画段階からお客様に対して何ができるのかをお見せできるため、品質や生産性の向上につながります。マンション建設の場合、設計事務所だけでなく発注者自身が計画段階から判断できるというのも大きなメリットです。市町村の担当者の方からは、道路や橋など土木工事の地元説明会で『こういうふうに補助整備されます』と Microsoft HoloLens で住民の方に完成予想図を見ていただくと理解を得やすいし、安心感が違うという話もありました」

建設業のデジタルトランスフォーメーションについてビジョンを語る小柳氏。

2つめは建築完了後も建造物に関わる情報を一元管理し必要なときに活用できるようにすること。検査員の負担軽減や検査員不足の解消に役立てていく。
「建物の中の配管がどうなっているのか、Microsoft HoloLens を使えば穴を開けて確認しなくてもわかるのでメンテナンスの仕方もスマートになります。また BIM / CIM データを活用した直感的な新しい検査基準の検討をはじめ、検査員の負担軽減や検査員不足の解消に役立つ仕組みも開発しています」
3つめは、現場に行かなくても現場判断や事業判断を可能にすること。物理的に行き来が難しい場所や危険な場所での作業の効率性、安全性の向上を図っていく。
「 PC の中の3次元映像も回転させていろいろな角度から眺めることはできます。ただ、PC 画面という2次元の世界で3次元映像を見ているのに過ぎないわけです。Microsoft HoloLens の場合、実際に人が動いて下から覗いたりまわりこんで見たり、直感的に判断できることが重要なポイントとなります。しかも複数人で同じ Mixed Reality の世界を共有できるため、『ここを見て』と指し示すと Microsoft HoloLens を装着したスタッフが同時にその箇所を覗き込むことが可能です。また技術者が2次元図面を見て頭の中で3次元に変換して考えることができるようになるまでには何年もかかります。Microsoft HoloLens はベテランも若手も同じ視界を共有できることから、人材育成にも大いに貢献するでしょう」

Microsoft HoloLens を装着して会議中。3人が同じホログラムを共有し、様々な検討が行える。

1/100スケールで再現された橋梁の3次元映像。縮尺を自在に変え、映像の周りを歩き回って確認できる(左)。1/1スケールにすれば、実際に橋の上に立ったイメージを体感できる(右)。

■ Microsoft HoloLens で建設業を「かっこいい」働き方に改革

「 Holostruction 」構想の発表は業界で大きな注目を集め、同業他社や関係省庁からの問い合わせや視察も増えているという。企業ブランディングの側面でも Microsoft HoloLens が果たす役割は大きい。
小柳建設では、今後実際に河川の掘削工事で Microsoft HoloLens を使う計画を立てている。「現場の事務所で職長、各作業員はもとより発注者の方も含めて、これからの工事の工程を3次元映像で見て、実物大のスケールで現場にいるかのように様々な角度から検証していきます。この幅に重機が入るだろうか。入らないから同じ機能でサイズの小さい重機を使うことにしようとか。実物大の3次元映像で重機や作業員の配置をシミュレーションすることも試してみたいですね。まず『使える』ということを実際の工事で実証していきます」

現場に行く前に、Microsoft HoloLens でミーティング。ケーブルレスのデバイスのため、どこでも気軽に使える。

そして、建設業に求められる社会的役割として、災害時の復旧作業がある。いかに作業員の安全を確保しながら迅速に作業を進めていくか。「当社はドローンをいち早く現場で活用しています。現場をドローンでスキャンし、そのデータをもとに Microsoft HoloLens を使って危険な現場に行くことなく綿密な計画を立てていく。ここのエリアには入らないほうがいいといった判断が事前にできるため安全性の向上にも役立ちます」
 Microsoft HoloLens を使って建設業の働き方改革を進め、業界のイメージを一新したいと小柳氏は語る。「 Microsoft HoloLens をはじめ先進の ICT により、将来的には建設業においても働く場所を問わないワークスタイルが実現できると考えています。遠隔地から現場を管理したり重機を操作したり、現場に行く時間を省くことでワークライフバランスを支援することも可能です。果敢にチャレンジを続け、建設業を、“かっこいい”働き方に改革していきたいと考えています」

 建設業の未来を見据え、小柳氏は胸に秘めた思いを口にした。「日本の建設技術は世界トップクラスです。日本の建設業を変えることは、世界を変えることになります。Microsoft HoloLens を使って新潟から建設業に新しい風を吹き込みたいですね」

新潟から日本の建設業を、そして世界を変えていく――。小柳建設のチャンレンジから目が離せない。

小柳建設株式会社 様
http://n-oyanagi.com/

1945年の創業以来、土木事業、建築事業、また自社開発の浚渫事業を軸に、総合建設業として地域社会の成長発展に貢献。人のため、世のため、実直に事業を運営してきた。i-Constructionの推進を通じて、「時代を引っ張る建設会社」にチャレンジし続け、先端技術の提供で、世界の人々に貢献している。

Holostruction 」紹介動画はこちら

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