2018.1.1 ISSUE

NIKKEI BUSINESS ON LINE SPECIAL

みんなのAIジャーナル

Interview 榊原 彰氏

「みんなのAI」ですべての人と組織の可能性を広げる

革新的な技術は高額であり ICT に関する専門知識も求められる。そのため多くの人や組織には手が届かない。マイクロソフトはその課題を解決するべく、すべての人や組織が使える「みんなの AI 」の実現に向け 、事業リソースを集中させている。「マイクロソフトは創り出すすべてのものに AI を導入していく。そして、あらゆる産業分野に平等に提供することで AI の民主化を加速させる」と、日本マイクロソフト 執行役員 最高技術責任者 榊原彰氏は力強く語る。誰もが使える AI は、人の、世界の未来にどのような可能性をもたらすのか。

すべての人や組織が使える最先端の AI をリーズナブルに提供

―マイクロソフトが掲げる「 みんなの AI 」に込められたメッセージは?
榊原:「みんなの AI 」が目指すのは、AI を最先端企業や財力のある個人だけが使う特別なものではなく、企業規模や性別、年齢、地域を問わず、誰もが平等に使えるものにしていく世界です。英語で表記すると“ Democratizing AI ”、つまり AI をすべての人のために民主化するという大志をもってその実現に取り組んでいく。手の届かない高価なサービスではなく、社会の重要課題を解決するために“誰もが手軽に、そしてリーズナブルに使えるサービス”として展開することで、AI の価値を高めていきます。
「みんなの AI 」というメッセージには、ビジネスのみならず社会貢献の意味合いが大きくあります。AIを使うことによって生活の質が向上し、働き方が変わる。これまで人ができなかったことができるようになることで、人の、そして世界の可能性が大きく広がります。
―誰もが AI を使えることによって世界はどのように変わりますか?
榊原:例えば、マイクロソフトでは全盲の方が周囲をスマートフォンのカメラで撮影すると、AI が画像認識し周囲で何が起きているのかを読み上げてくれるiOS用アプリ「 Seeing AI 」を無料で提供しています。商品や貨幣はもとより人の顔を認識し年齢、メガネの有無や表情なども教えてくれます。医療分野では、画像認識でガン細胞を検知したり、機械が文章の内容を理解するマシンリーディングを使って膨大な過去の症例や技術論文から診断をリコメンドしたりすることも可能です。
教育分野では、2020年から小学校で必修化されるプログラミング教育において、生徒がプログラミングでどういう間違いをするのかを AI にパターン学習させることで、生徒が苦手とする部分について AI が先生の指導をサポートするといった使い方も可能です。
そして少子高齢化が進む日本においては AI とロボティクスが果たす役割はとても大きいと思います。災害対策、公共インフラの整備など社会課題の解決には、IoT と AI を組み合わせて実現する予兆保全や傾向分析といった未来予測が必須になるでしょう。

様々な社会課題に対して AI が貢献できる局面はますます拡大していくと語る榊原氏。

AI が言葉の壁をなくし、働き方に気づきを与えてくれる

―AI によって働き方の質や内容はどのように変化していくのでしょうか?
榊原:AI が世の中に浸透していく顕著な例として、マイクロソフトの Cortana (コルタナ)のように会話する AI があります。会話する AI を利用したエージェント(ユーザーがやりたいことを自動的に代行してくれるソフト)は人の暮らしだけでなく仕事の進め方も根本的に変えていくでしょう。
ビジネスのグローバル化が進む中、海外とのやりとりに立ちはだかる言葉の壁も Office 365 のアプリケーションに導入されている機械翻訳でクリアできます。Word、PowerPoint、Outlook はもとより、音声通話や Web 会議ができる Skypeにも機械翻訳を導入しました。それぞれが母国語で話しても会話することが可能です。機械翻訳のライブ機能というサービスを使用すると同時に100人まで多言語で会話をすることさえ可能になりました。各国にまたがって業務を展開する企業のみなさんには朗報と言えるのではないでしょうか。
また日々の業務で時間をどう使っているか、どれだけ生産的な仕事をしているかなど、自分の働き方はわかっているようで気づいていないことも多いものです。クラウドサービスの Office 365 には働き方を分析してくれる AI エージェントがいます。例えば週次の会議中に20分程いつも他の仕事をしていると、「この会議に出る必要はないのではないか」と提案してくれます。AI のアドバイスが気づきになり無駄が見えてくることで、「改善してみよう」という気持ちにつながります。

ノンプログラミングで AI を構築し競争力や生産性を向上

―ビジネスでイノベーションを起こすためにマイクロソフトの AI を利用するメリットは?
榊原:現在、マイクロソフトでは「 Microsoft Cognitive Services 」として画像認識、音声認識、感情認識、機械翻訳など29種類の API を学習済みの機能として提供しています。利用者はアルゴリズムの開発も、学習のために大量のデータセットを用意する必要もなくAPIを呼び出すだけで最新の AI テクノロジーを利用できます。
さらに、Microsoft Cognitive Servicesのアドバンテージとして、顧客の要望に応じて完全にその顧客のためだけの API をカスタマイズできる点が挙げられます。また「 Azure Machine Leaning Studio 」という機械学習の環境を用意していることも大きな特長です。クラウド上で様々な関数などをドラッグ&ドロップで組み合わせることにより、お客様の用途に合った機械学習のモデルをスピーディーに構築することができます。
ビジネス戦略上、自社が保有しているデータセットだけで AI を構築・運用したい場合なども、マイクロソフトの AI ならセキュリティを担保しながら実現可能なのです。

cognitive services:29種類のAPIを提供

画像認識や音声認識をはじめとした多様な API を提供し、ビジネスにおける AI 活用のスピード化を支援。さらに、カスタム API を用いれば、自社だけのデータセットによる AI も構築可能だ。

榊原:実際のビジネスシーンでも活用が広がっています。その一例が米マクドナルドのドライブスルーでの実証実験です。
米マクドナルドではドライブスルーにおけるオーダーの聞き間違いによる回転率の低下が課題となっていました。正確な受注により回転率の向上を実現するために同社が導入したのがマイクロソフトの AI です。お客様がマイクに向かってオーダーした内容を音声認識の API がテキスト化し、文章を理解する API やキーワードを抽出する API により商品名やオプション、個数などを抽出する。様々な API を使って注文を自動化することで、オーダーの聞き間違いが劇的に減少し回転率も改善されました。

cognitive services:29種類のAPIを提供

米マクドナルドのドライブスルーにおける AI 実証事例。人間の発話を AI が理解し、複雑なオーダーも正確に抽出・整理することできる。

―日本の国内企業の AI 導入を容易にし、導入効果を出すための支援体制は?
榊原:AI 導入のハードルを下げるために製造ラインの設備保守など用途に対応したAzure Machine Learning Studio用のテンプレートも用意しています。またお客様がカスタマイズした AI ソリューションを外販したり、テンプレートとして登録したりできる仕組みもあります。業界を熟知したお客様が開発したソリューションは同業の他のお客様にもメリットが大きいでしょう。
プロトタイプの作成や PoC のフェーズからマイクロソフトの技術者がお客様と一緒になって開発していくマイクロソフト コンサルティング サービス ( MCS )や、Microsoft Azure をご契約いただいたお客様に対しAI活用の検討段階からエンジニアがサポートするサービスなど支援体制の充実にも力を入れています。研究価値の高いテーマに関してはマイクロソフトとの共同研究という道も開かれています。

8,000人のエンジニアを結集した世界最高レベルの研究組織

―マイクロソフトの AI テクノロジーの優位性はどこにありますか?
榊原:AI 分野にフォーカスした8,000人のコンピューターサイエンティストとエンジニアを結集した世界最高レベルの研究組織である「 Microsoft AI and Research Group 」の存在は大きな強みです。マイクロソフトの最新のAI テクノロジーはここから生み出されています。その技術力の高さは様々な AI のベンチマークで証明されています。例えば、マイクロソフトの音声認識 API の誤認識率 5.1% は、人間の誤認識率 5.9% 以下であり、画像認識 API の誤認識率 3.5% は人間の誤認識率 5.1% を大きく下回っています。
―AI が人間の仕事を奪うのではないかといった不安を抱く人もいます。
榊原:マイクロソフトでは、“ AI は人間の能力を補完し補助するシステムである”と定義しています。この考えに基づき AI の開発に向けた社内規定を定め、倫理的に正しく設計しているか、機械学習させるためのデータの入手経路に問題はないかなど細部にわたってチェックしています。
また、AI 分野のリーダー企業とともに研究団体「 Partnership on AI 」の設立に参加し、AI に関する倫理的問題、技術普及などに取り組んでいます。
“地球上のすべての人々と組織がより多くのことを成し遂げるために可能性を最大限に引き出す”というマイクロソフトのミッションを実現するために AI は不可欠です。チャレンジする人や企業、誰にでも大きなチャンスと可能性をもたらす、それがマイクロソフトの目指す「みんなの AI 」なのです。

マイクロソフトの「みんなの AI 」に関する情報はこちら

https://blogs.technet.microsoft.com/jpai/

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すべての人や組織が使える最先端の AI をリーズナブルに提供
AI が言葉の壁をなくし、働き方に気づきを与えてくれる
ノンプログラミングで AI を構築し競争力や生産性を向上
8,000人のエンジニアを結集した世界最高レベルの研究組織

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