2017 REVIEW

※本企画に掲載の製品名、社名、その他は各社の商標または登録商標です。

題字中塚翠涛氏

既存の優位性を破壊する新しいビジネスモデルを日本からー日経ビジネスオンラインでは、今までにない画期的なビジネスや新たな市場の創出を目指し、『Digital Business Summit2017』を開催した。当日は日経ビジネス『次代を創る100人 2017』にも選出されたイノベーターのほか、デジタルビジネスを支援するIT企業やコンサルティング、さらには映画界からもヒットメーカーが登壇し様々な角度からイノベーションの本質と可能性に迫った。 日時:2017年6月9日(金) 会場:六本木アカデミーヒルズ

INNOVATORS TALK
常識を覆し、新しい価値を創るための“戦い”

反対意見が多いほどイノベーションとして有望

セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社 代表取締役社長 阪根 信一氏

映画監督 大友 啓史氏
 最初のプログラムはイノベーター対談。セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ 代表取締役社長 阪根信一氏に映画監督の大友啓史氏が話を聞いた。

 阪根氏は全自動洗濯物折り畳み機「ランドロイド」や、いびき・睡眠時無呼吸症候群を解消する医療デバイス「ナステント」など誰も思いつかないような革新的な商品を開発し注目を集めるイノベーター。一方の大友監督は数々のヒット作を手掛け、大河ドラマ『龍馬伝』でNHKが長年積み重ねてきたドラマの作り方を変革し、映画「るろうに剣心」では日本のアクション映画に新たな可能性を示した邦画界きっての革命児だ。

 「ランドロイド」はAI、画像認識、ロボティクスを活用して衣類の折り畳みと仕分けを自動で行う家電ロボット。その開発ストーリーの始まりは2003年にまで遡る。「イノベーションに大事なのはテーマの選び方」と語る阪根氏は「世の中にないもの」「人々の生活を豊かにするもの」「技術レベルが高いもの」を基準にテーマを探した。しかし、思いつくアイディアはどれも特許出願や論文掲載済み。リサーチに2年を費やし技術者の発想だけでは限界があると感じていた時、女性の視点が大事と考え夫人に意見を求めたところ出てきた答えが「洗濯物を自動で折り畳む機械」だった。半信半疑で検証プロセスにかけると世界中のどこにも例がなく、マーケット・リサーチでニーズの高さを確認できた。研究スタッフは「誰も挑戦していないのは不可能な証拠。大手家電メーカーでもできないことをできる訳がない」と反対したが、阪根氏は「反対が多いアイディアは、大企業では実現が難しく、競争を排除できる。続ければイノベーションになる」と逆に成功を確信したという。

 2008年衣類の「折り畳み」に、2012年に衣類を見分ける「画像認識」に成功、構想から実に11年の時を経った2014年のゴールデンウィークにプロトタイプが完成、2015年のCEATECで衝撃のデビューを果たした。当初5人いた研究メンバーのうち、この時残っていたのは1人だけだった。

 一方スタートアップ企業が開発を続ける上で大きな課題となるのが資金調達。特に製品化し事業として拡大するには多くの知見を持った大手企業との協業が不可欠だ。阪根氏はあるイベント後に大和ハウス工業に直談判。「ランドロイド」が同社のベンチャー支援の条件にある「健康」「福祉」に当てはまる商品だったことに加え、「世の中の役に立つものを作りたい」という阪根氏の熱い思いが大企業を動かした。大和ハウス工業は、商品の魅力、阪根氏の人柄とともにそのスピード感を高く評価している。(⇒関連動画

 その大和ハウス工業の提言もあり、ランドロイドは家庭だけでなく高齢者施設での活用をもう1本の柱にして事業の安定・拡大を目指す構えだ。

 「尖った技術、製品であればあるほどSNSで爆発的に跳ねる時代。真摯にイノベーションを起こそうと努力し、それを適切なタイミングに発表すれば一夜で世界が変わる」と語る阪根氏。荒唐無稽とも思えるアイディアを「技術力」と「推進力」そして「製品への愛情」で形にしたイノベーターは、日本の技術が世界に羽ばたくことを願いながら、「ランドロイドが当たり前にある未来」に思いを馳せる。
対談を終えて
イノベーションに至るカギはリスクを取る勇気だと思っていました。阪根さんは、むしろ誰もやってないことをやる以上、リスクテイクは当然という信念を持ち、しかもそのスタンスがとてもニュートラルで興味深く感じました。柔らかい感性を持った経営者が、しなやかにボーダーを越え、リスクをチャンスに変換していく。経営者のマインド変化とともに、日本のイノベーションは新次元を迎えている、改めてそう思いました。

大友 啓史監督

関連動画

Interview:

大和ハウス工業 新規事業開発グループ長 金城 次巳氏

「出資の決め手となったこと」
「ランドロイドの実用性」

PANEL DISCUSSION
日本のスタートアップ登場!
私たちはどのようにビジネスを立ち上げたか

身近な課題を吸い上げ、スピード重視で立ち上げる

MIKAWAYA21株式会社 代表取締役社長 青木 慶哉氏

株式会社ファームノートホールディングス 代表取締役 小林 晋也氏

akippa株式会社 代表取締役社長 金谷 元気氏
 パネルディスカッションでは新聞販売店のネットワークを中心に高齢者支援サービスを展開するMIKAWAYA21の青木慶哉氏、IoA(animals)という考え方でクラウド型の牛群管理システムを提供するファームノートホールディングスの小林晋也氏、Airbnbの駐車場版とも言える、駐車場シェアリングサービスを手掛けるakippaの金谷元気氏が登壇した。

 青木氏は、かつて経営していた新聞販売店で若者の新聞離れに直面する一方、顧客である高齢者が日常生活の中で多くの困りごとを抱えていることを実感して高齢者に寄り添うサービスを立ち上げ、小林氏はソフトウェアの受託開発をしている過程で知った様々な業種の課題の中から、農業の非効率な部分を効率化することにビジネスチャンスを見いだし、その中でも酪農や畜産がIT投資に対する抵抗感が比較的低いことに着目した。金谷氏は、停電で電気の重要性に気づくのをきっかけに「必要不可欠なもの」の提供を目指し、社員全員に募集した困りごとの中から駐車場シェアリングサービスを思いついた。

 スタートアップで大事なこととして青木氏が語ったのは「なるべく多くの人に会うこと」。高齢者社会に向けた「幸せの種まき」と思って、サービスのインパクトを多くの人に伝えることに注力したという。小林氏は人とのつながりの重視するのと同時に「事業計画に時間をかけない。先に着手する方が勝ち」とスピード感を強調する。金谷氏は「実現したい世界を創ることを諦めずに、言い続けると人は集まってくる」と語り、「論理的に考えず、行けるという感覚」で行動することの重要性を挙げた。

 失敗例については、異口同音に「死なない限り(倒産しない限り)は失敗ではない、だから失敗したことはない」と語り共通のメンタリティを見せた三者。今後については「高齢者のために温かさを大事にしながら最新テクノロジーを取り入れる」(青木氏)「世界の農業の頭脳を目指し、農家の皆さんが勇気を持って前に進むための道具を提供する。」(小林氏)「低価格のデバイスを配って“どこでも駐車場”を加速する」(金谷氏)とそれぞれの抱負を語った。

 きっかけやアプローチは三者三様だが、課題を見つけてビジネスの可能性を探る、志を共にするネットワークを作る、素早く事業を立ち上げる、そしてそのツールとして最新のテクノロジーを取り入れることがスタートアップの要諦と言えそうだ。