2017年度下半期版 デジタルマーケティング最前線
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なぜ日本企業はカスタマーエクスペリエンス向上に失敗するのか?
B2Bハッカー 飯室 淳史氏 × サイトコア ラース・ビルクホルム・ピーターセン 対談

サイトコア株式会社

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「カスタマーエクスペリエンス(顧客体験:CX)」の向上が、顧客に選ばれる企業になるためのカギになる——。このことが、グローバルでは常識になりつつあります。しかし、こと日本企業では、CX向上の成功例はまだ多くないのが実情です。こうした差はなぜ生まれているのか。その理由と打開策について、マーケティングのスペシャリスト・飯室 淳史氏に聞きました。

多くの企業が「CX」を正しく理解できていない

— 日本企業では、CX向上施策が失敗に終わるケースが多いといわれます。その理由はどこにあるのでしょうか。

飯室氏 問題は、製造業をはじめとする多くの企業が、CXの本質をつかめていないことにあります。CXは、顧客がモノやサービスを購入する際、期待した「成果」が得られたかどうかと深く関係しています。たとえば、量販店でカメラを購入する顧客は、買うこと自体が目的なのではありません。買ったカメラで旅先のきれいな風景を撮影したり、その写真を友人に見せるといった成果を得たくて、「買う」という行動を起こすのであり、企業はその成果を提供するために、モノやサービスを開発すべきなのです。
ところが、日本企業はかつて「作れば売れる」という時代を経験してきました。そのため、多くの企業がいまだに「モノを売る」ことだけに意識が向きがちで、顧客が求める成果には目が向いていません。結果、CX向上を支援するデジタルマーケティングソリューションを導入しても、使いこなすことができずに失敗します。実際、私もそうした企業をたくさん見てきました。その点、CXでは長い歴史を持つサービス業からは多くの学びがあると思っています。

ピーターセン 欧米をはじめとするグローバルでは、顧客が求める成果の重要性に多くの企業が気づいており、それに向けたマーケティング施策を展開する企業が増えています。
具体的には、eコマースサイトやメール、SNSから、コールセンター、営業担当者との対面まで、デジタル/アナログの複数チャネルにおける顧客行動をカスタマージャーニーとして可視化。それを一つながりの文脈(コンテクスト)として捉えようという「コンテクストマーケティング」の考え方が広く浸透してきているのです。
このアプローチによって、ある顧客の興味・関心に関する情報をチャネル横断的に集めることができれば、顧客が最終的に求める成果が何なのか、より容易に把握できるようになります。これにより、的確なCX向上施策を打つことができるというわけです。

— 日本企業は、どうすればそうした方向へシフトすることができるのでしょうか。

飯室氏 まずは「誰がCX向上にかかわるのか」という点を含めた、抜本的な改革が必要です。

CX向上を実現するキーパーソンは誰か?

飯室氏 CX向上は企業全体にかかわることのため、いきなりマーケティング担当者に一任したのでは改善は見込めません。必ず経営者自身がコミットし、CX重視の企業文化をトップダウン型で社内に根づかせていくことが肝心です。
具体的な流れを、私がGEヘルスケアのライフサイエンスでおこなったグローバルでのアプローチを基に紹介しましょう。初めに、取組みを主導する「エバンジェリスト」を現場部門側に配置します。ポイントは、トップダウン型といえど、経営者が恣意的に任命する方式は採らないこと。個人の思惑を排除し、客観的にCX向上に強い関心を持った社員を選出することです。

ピーターセン なるほど。エバンジェリストは、社内に広く情報を伝播させていく存在ですから、職位や立場ではなく、モチベーションの高さで選出するということですね。

飯室氏 その通りです。そこで私は、社員に対して定期的なミーティングや、CXの重要性を説いたメール配信などを繰り返し実施。MA(Marketing Automation - マーケティングオートメーション)ツールも活用し、CX向上に興味を持っていそうな社員を絞り込んでいきました。最終的には、全320名の社員から12名をエバンジェリストに任命。そこからは日々、エバンジェリストが自らCX向上を目指した取組みを立案・実施し、成功談・失敗談を交えて現場に発信しました。つまりエバンジェリストは、自らも現場にいる立場から、トップのメッセージを、社内に浸透させていく役割を担うわけです。

ピーターセン 付け加えると、エバンジェリストのなかから、特に優秀なスタッフをCCO(Chief Customer Officer)に任命することも効果的だと思います。CCOは、顧客満足向上施策を部門横断で取り仕切る、いわばCX向上の特命部長。日本企業ではまだ珍しい役職ですが、CX重視の文化を確立していくなかでは、関係者にしっかり権限を持たせることが必要だからです。

飯室氏 同意です。加えて、これらのプロセスは一朝一夕に進められるものではないので、数年というスパンで腰を据えて取り組むことが重要ですね。

基盤が整ったら、いよいよツールを導入

— こうしてCXの基本的な考え方が根づけば、デジタルマーケティングソリューションの活用効果も引き出すことができそうです。

ピーターセン 既に述べた通り、CX向上を図るには、顧客をコンテクストで理解することがポイントです。当社は、そのためのソリューションとして「Sitecore Experience Platform」を提供しています。
これは、Webサイト、メール、スマートデバイス向けアプリ、eコマースやSNSなど、さまざまな顧客接点でCXにかかわる情報を収集したり、その内容をオムニチャネルでの均質なコミュニケーション実現に生かしたりすることができるもの。顧客一人ひとりに向けたコンテクストマーケティングの実行基盤になるものです。

飯室氏 eコマースやCRMといった領域では、既に別のツールを活用中の企業も多いと思います。それらの既存ツールとの使い分けや連携はどのようにおこなうのですか。

ピーターセン Sitecore Experience Platformは、APIを提供することで、多彩な外部ツールやこれから登場する新たなソリューションやチャネル、デバイスなどと柔軟に連携させることが可能です。そのため、既存ツールは生かしたまま、一貫性のあるCXを継続的に提供していくことができます。
そもそも当社では、CXの成熟度を下の図のような7段階のモデルで定義しています。適切なCX向上施策を考えるうえで、各段階で使うツールが異なるのは望ましくありません。
Sitecore Experience Platformは、全段階の取組みをトータルにカバーできるということを念頭に設計されており、それが大きな強みとなっています。

Web上でカタログサイトを展開するという初期段階から、対応チャネルの拡大、パーソナライズ、顧客行動のリアルタイム分析、ニーズの予測の実現など、CX向上施策の達成度に応じて7段階に分けられている。

ヨガを紹介することで、ベビーフードの売上をアップ

— Sitecore Experience Platformの活用事例を教えてください。

ピーターセン 仏ダノングループの一員で、主に乳幼児向けの栄養食品ビジネスを展開するニュートリシア社では、母親をターゲットとしたCX向上施策を展開。妊娠中から、出産を終え子供が2歳になるまでの約1,000日間を「マザージャーニー」と定義し、段階ごとの顧客行動をつぶさに追いました。
これにより、たとえば健康志向の強い母親にはそれに見合ったベビーフードを提案したり、ダイエットに関心の高い妊娠中の母親には、効果的なヨガのプログラムを紹介するといったことを実行。コンテクストマーケティングの実践によって、顧客である母親が望むコンテンツを提供し続けることで、関係性強化と製品の売上アップにつなげています。

飯室氏 興味深いのは、ヨガの例のように、コンテクストに沿ってデータを見つめていくと、CX向上施策で検討すべきコンテンツは製品そのものでない場合があるということです。ただ、顧客が求めるものである以上、それを提供することが最終的には顧客と良い関係性を築くことにつながる。これは、従来型のマーケティング施策では、なかなか可視化できないポイントです。

ピーターセン おっしゃる通りです。これからは、オンライン/オフラインのさまざまなチャネルで、繰り返し顧客に選ばれ続けるための戦略を企業は考えていく必要があります。そのためには、目先の売上だけでなく、常に長期的な関係性構築を考えた施策を進めるべきです。
ただし、念押ししたいのは、飯室さんも言われた通り、こうした成功例はあくまでも経営者の意識改革や組織の整備がおこなわれたうえでの話だということ。デジタルツールは“魔法の杖”ではありません。入れればうまくいく、という考えは捨て去った方がよいでしょう。

飯室氏 ありがとうございます。CX向上で目指すべきは、ツールを導入することでも、競合他社に勝つことでもありません。
当の企業が顧客に選ばれ、「ありがとう」と言ってもらえるようになること——。非常にシンプルですが、そこから逆引きで、必要な施策やソリューションを検討していくことが、成功には欠かせないのです。

(左)B2Bハッカー
飯室 淳史 氏

(右)サイトコア
ラース・ビルクホルム・ピーターセン 氏

サイトコア株式会社

本社
東京都港区南青山2-11-16METLIFE青山ビル 3F
お問い合わせ先
info-jp@sitecore.net
03-5413-6900

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