日経ビジネスオンラインスペシャル

芸術視点での金の価値/ブリオン・ジャパン 平井政光&裕人礫翔 対談

芸術視点での金の価値/ブリオン・ジャパン 平井政光&裕人礫翔 対談

店頭のみだった金の現物取引をオンライン化させた英国ブリオンボールトサービスを日本に紹介し、ブリオン・ジャパンCEOとして活躍中の平井政光氏。今回、金箔を用いたアート作品や障壁画の復元などを手掛ける裕人礫翔(ひろと・らくしょう)氏を対談の相手に、金の価値を芸術という視点から捉えていく。

店頭のみだった金の現物取引をオンライン化させた英国ブリオンボールトサービスを日本に紹介し、ブリオン・ジャパンCEOとして活躍中の平井政光氏。今回、金箔を用いたアート作品や障壁画の復元などを手掛ける裕人礫翔(ひろと・らくしょう)氏を対談の相手に、金の価値を芸術という視点から捉えていく。

平井:礫翔さんの金との出会いは?

裕人:西陣で金箔模様箔をつくる職人の家に生まれまして、ちっちゃい頃から、3代目になる父親の仕事を見て育ちました。西陣の箔工芸というのは、和紙に金箔を貼って、それを包丁で細く切って織り込んでいくわけです。ひと言で金と言っても、赤めにしたり、青めにしたり、もうちょっと光らせたり、錆びさせたりして何万種類という柄のものができるんです。なので、この侘び錆び、照り光りを操る技術を応用すれば、新しいものができるんじゃないかなということで、僕は10年ほど前に独立して、こうした仕事をやり始めたんです。

平井:復元や修復だけではないんですよね?

裕人:自分独自の作品を作ったり、パリの写真家とコラボをしたり、金の可能性を最大限に引き出すことで、多方面で仕事をしてきています。自分の作品は、あんまり日本で発表していなかったんですが、ニューヨークで10年ほど個展をやってきたり、あとは香港、東南アジア、中東……。こないだクェートに呼ばれたんですが、反応がいいですよね。こういう侘び錆びの世界観は、向こうにはないんですが、クェートの人は親日家で、理解してくれるんですね。

裕人礫翔

平井:お話を伺っていて、香港のお客さんが礫翔さんの作品に惹かれるのは、僕はイメージ的にすごくわかります。金に対する国民性、地域性みたいなものがあるような気がしますね。ヨーロッパの人のほうが、芸術としての金と、投資対象としての金とを区別して、割り切って付き合ってるようなイメージがあります。投資ということに関すると、間違いなくイギリスが一番進んでいると思います、取引量も多いですから。採掘であれば、北米ならカナダ、それからヨーロッパの大陸サイド、オーストリア、スロベニアあたりは金が採れるので、投資以外の周辺産業が強かったりする。中国、インド、アラブは、すごく大きい金のマーケットではあるんですけど、独特の金の保有文化があるんです。アジアの人は、投資と芸術や建築などの文化性とを明確に区別せず、絡み合っている面があるかもしれないですね。日本は日本でまた特殊で、ヨーロッパの人と違って、割り切らない部分がある。身近な存在ではない金に対する憧れが強いからかもしれないですね。神社仏閣に来ないと、実際の金って見られないので、金がどういうふうに我々の生活と関わっているかっていうのが見えづらい。金投資に関しても、ある意味、日本は後発というか、これからだなという感覚があります。そういったところで何かリードしていけるような、新しい形態ができてくると非常に面白いのかなと思うんですよね。金って、あらゆる投資や金融対象の中で最も普遍的に全世界の人たちに知られている。絶対的過ぎるゆえに、地域差や業者間で上げ下げの差がほとんどないんです。だから金というものは、それだけだと勝負できない。その絶対的な存在価値を、どういうふうにビジネスの中で使っていけるか、というところですね。金を使ったオンライン取引だったり、金を使った決済システムだったり。

平井政光

裕人:右脳と左脳の違いといいますか、同じ金を扱っていても、平井さんと全然違う頭の回転じゃないですか。逆に、すごい刺激を受けますね。ものづくりは得意なんですけど、お金を生むっていうことが、僕にしたら全然できないことなので。

平井:出発点は、本当に反対側からなんでしょうけど、金の魅力というところで、何かこれを生業にしていこうというような発想のところだけは、共通はしているんですよね。

裕人:箔を打つ業者さんはもちろんですが、仏壇屋さんにしろ織物屋さんにしろ、金を使う業界がほんとに小さくなってきました。でも、僕らは、敢えて金というものをどう表現するか、また新たにつくっていくのが仕事やと思っていますのでね。

対談

平井:金需要も、思ったよりはたくさんあるんです。統計局が発表している2年くらい前の国内のデータだと、投資保有が一番多いんですが、次の多いのが工業製品。スマートフォンや電気自動車、家電など、金を使ったパーツがないとはできないものが少なくないんです。礫翔さんのような宝飾芸術で使われているのも結構あって、そこの需要が伸びてくると、もう少し違うステージになってくるのかなとは思いますね。素材としての金の価値だけじゃなくて、そこに芸術性が付加されてくることで、価値が上がってくると、業界の裾野としては広がりがあるのかな、というのはすごく感じます。

裕人:金とプラスアルファ、僕らの工芸みたいなことがマッチングすることで、今までと違う、いろんな層に見てもらうっていうのを提案していけるといいんですけどね。

平井:こうした芸術に関わる部分は、金の絶対性や価値を高める上で大きな影響力がありますし、それは結果的に我々の業界にも、いい影響を及ぼすことになると思うんです。我々の業界と礫翔さんのようなお仕事の世界と、両方の側面から、金の価値というものを考えていくことは有意義だと思います。今回の対談をきっかけに、我々の仕事のほうでも大いに参考にさせていただきたいと思いますね。

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