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芸術視点での金の価値/ブリオン・ジャパン 平井政光&裕人礫翔 対談

芸術視点での金の価値/ブリオン・ジャパン 平井政光&裕人礫翔 対談

店頭のみだった金の現物取引をオンライン化させた英国ブリオンボールトサービスを日本に紹介し、ブリオン・ジャパンCEOとして活躍中の平井政光氏。今回、金箔を用いたアート作品や障壁画の復元などを手掛ける裕人礫翔(ひろと・らくしょう)氏を対談の相手に、金の価値を芸術という視点から捉えていく。

店頭のみだった金の現物取引をオンライン化させた英国ブリオンボールトサービスを日本に紹介し、ブリオン・ジャパンCEOとして活躍中の平井政光氏。今回、金箔を用いたアート作品や障壁画の復元などを手掛ける裕人礫翔(ひろと・らくしょう)氏を対談の相手に、金の価値を芸術という視点から捉えていく。

平井:今回、裕人礫翔さんのご紹介で、普段は非公開の妙心寺の塔頭のひとつである天球院で対談させて頂くことになりました。こちらは狩野山楽・山雪筆による「虎図」「梅遊禽図」「牡丹・槇図」「牡丹唐獅子図」等の金碧画で有名で、裕人さんはその高精細複製プロジェクトにも取り組んでいらっしゃるとか。

裕人:劣化防止のため展示できない美術品の複製を作って展示したり、国外に流出してしまった屏風絵などを復元して、元あった寺社に戻したりする、キャノンさんの「綴プロジェクト」に参加させて頂いているんです。今ご覧になっている障壁画の本物は重要文化財に指定されていて、京都国立博物館に収蔵されていまして、ここにあるのは複製なんです。まず作品を15分割してカメラで撮影してつなぎ合わせ、色の調整をして和紙にプリントするんですが、金は印刷では出ないので、実際に金箔を貼る作業をしていきます。本物のほうは300年、400年もの時を経てエイジングされていますので、それを現代の新しい金箔を使って、経年変化したようなかたちにしていくんです。枯れた侘び錆びの金を復元するっていうのは、これまで誰もできなかったんですね。

平井:敢えてこの枯れた感じを絶妙に表現するのは、素人の僕からしても、かなり難しいだろうなと想像できますね。

裕人礫翔

裕人:昔の箔は厚かったので、自然に経年変化することで、へこんだところ、前に出てくるところがあります。ところが現代の箔は、1万分の1ミリで非常に薄いので、そのままでは復元できない。そこで、部位ごとに漆や膠で作った厚い糊、光る糊、錆びた糊などを乗せることで箔に凹凸感を持たせ、経年変化を表現していくんです。本物と比べても、1メートル離れると、専門の学芸員の方もわからないぐらいの仕上がりになるんです。金って面白いもので、朝、昼、夜で絵の表情が全然違います。浮き立ってくるかたちが全然違いますのでね。そのへんも金の魅力でしょうか。

平井:我々が普段扱っているのとは、全然違う角度の金の世界観は興味深いですね。おそらく、一般の消費者の方が抱いていらっしゃる金のイメージって、むしろ、こういう美術品だったりするんです。こういうふうに使われてきて、こういう表情、こういう見え方もあるから価値があるっていうのが、金の価値の源泉だと思うんです。どこの国でも、時代が変わっても、こういった金の装飾、金の芸術は必ずあるじゃないですか。

裕人:そんな中でも、この金の侘び錆びっていうのは、なかなか世界でも類を見ないんじゃないでしょうか。300年、400年もの歳月を重ねても、金の持つ品の力が、やっぱりありますね。どこか僕らのDNAの中に、このイメージはみんな持ってるんですよね。フランス人は、この枯れ感が分かるセンスを持っています。いろんなブランドさんが興味を持たれて、ウチにも来られますね。

平井政光

平井:枯れてきてなお、心華やぐっていうのは金のすごいところですね。ピカピカしている新しさではなくて、あえての劣化が、むしろ価値を生んでいるというのは興味深い。華麗で、それでいて、味のある金の使い方。その一方、絢爛豪華な権力を象徴する金があったり。

裕人:時の将軍がそういう使い方をしていますね。権力の象徴として、後ろに金の屏風を置いて、酒を酌み交わしながら松明を焚く。一方、お寺なんかは逆にそれを美術として残していく。使い方が違うんです。

平井:秀吉の金の茶室も象徴的ですよね。

裕人:そうですね。でも、あれは理に叶っているんです。1本のろうそくの明かりで一番明るく見えるのはあの金なんです。あの茶室に入ると幻想的な世界になりますね。権力の象徴でもあるし、芸術的なところもあるし、両方兼ね備えていたのかなと思います。

対談

平井:金の茶釜も意味があるって言いますね。鉄釜だと鉄分が入ってしまい、お茶の色がちょっと濁ってしまいますが、金は成分が溶け出さないとか。お仕事の中で銀も扱われていますが、やっぱり金のほうがテンションがあがるものですか。

裕人:それはありますね。圧倒的に違います。これは医学的に証明はされてないですけど“箔屋、がん知らず”っていう諺のようなものがあって、金箔を扱っている人は健康やと(笑)。

平井:食品やお酒でも金箔が入っているものもありますよね。祝い事の金っていうのは、やっぱり、おっしゃるようにテンションがどことなく上がるものですね。

裕人:海外に行ってデモンストレーションをすることがあるんですけど、海外の子供たちも、僕の作業よりも金箔を見たとき、圧倒的にテンションが上がりますもんね。金に触れた子供は、もう、顔が生き生きとしている。世界じゅうどこでもそうですね。

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