経営者のためのテクノロジー講座「AI/IoT」編 ~AI/IoT活用が生み出す新たなビジネスチャンス~

テクノロジーの進化は日本の産業界を大きく変えようとしている。人工知能(AI)によるデータ解析、あらゆる機器がインターネットでつながるIoTによるビジネス変革などの成功事例も増えてきた。テクノロジーの持つ可能性を知り、それをビジネスの力に変える。経営者に課せられた使命と期待に応えるため、日経ビジネスオンラインでは2018年4月20日に「経営者のためのテクノロジー講座」を開催した。今回のテーマは「AI/IoT」。当日は最新の技術動向や成功事例、関連ソリューションなどが数多く紹介された。

デロイト トーマツ
コンサルティング

テクノロジーを成長のエンジンにする
グローバル事例に学ぶAI/IoT戦略

多くの日本企業がAI/IoTをはじめとするテクノロジーのビジネス活用に本腰を入れて取り組んでいる。しかし、世界に目を向けると、欧米を中心に先進的な導入事例が数多く出てきており、一歩先んじている感は否めない。日本企業が欧米先進企業に追い付き、追い抜くためには、テクノロジーの「可能性」と「限界」を知ることが重要だという。本講演では日本企業が目指すべきテクノロジー活用戦略が示された。

テクノロジーがビジネス戦略を左右する時代に

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
執行役員 パートナー
Japan Technology Leader
安井 望

AI/IoTをはじめとするテクノロジーは、あらゆる産業を揺るがす可能性を秘めており、国内外で注目が高まっている。企業の戦略がテクノロジーで左右される時代になりつつある。「もはやテクノロジーの活用なしに、これからのビジネス戦略は語れない。経営者はこのことを強く認識すべきです」とデロイト トーマツ コンサルティングの安井 望氏は訴える。

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
執行役員 パートナー
Japan Technology Leader
安井 望

海外に目を転じれば、テクノロジーの活用による新たなビジネス創出がすでに現実化している。オンライン書店から巨大IT企業に変身を遂げ無人リアル店舗の展開を進めるアマゾン、デジタル技術を駆使し製造事業のサービス化に挑むGE(ゼネラル・エレクトリック)、AIとビッグデータによる顧客分析/店舗分析でオムニチャネル戦略を推進するウォルマートなどはその象徴だ。スタートアップ企業だけでなく、いわゆる重厚長大型企業もテクノロジーを活用したオープンイノベーションに乗り出している。

日本でも注目すべき先進事例は増えつつある。建設機械の遠隔稼働管理サービスや無人ダンプトラック事業などを展開するコマツ、無人農機や農機の見守りサービスを展開するヤンマー、ドローンによる世界初の防犯サービスを目指すセコム、ロボットが接客する「変なホテル」を運営するH.I.S.ホテルグループなどはその好例である。

「しかし、日本のケースは独自サービスや“おもてなし”を起点とした取り組みが中心。欧米先進事例はビジネスや経営へのインパクト、取り組みのスケール感で日本を上回っています」と安井氏は指摘する。

経営者がテクノロジーの本質を理解すべき

日本企業が欧米先進事例に追い付き、追い抜くためにはどうすべきか。まずAI/IoTなどのテクノロジーに対するアプローチを考え直す必要があるという。日本はテクノロジーを追い求める傾向が強く、無責任な期待を反映した動きも目立つからだ。

「『IoTを使えば何かできるのではないか』『AIを使えば業務を自動化できるのではないか』『デジタル変革を推進するため、まず専門組織を立ち上げた』などはよく散見される声です。危機感はあるものの、テクノロジーの導入が目的化しています。これでは経営への活用が成功する見込みは少ない」と安井氏は述べる。

テクノロジーの導入では、まずその特性を理解することが大切である。「例えば、AIは魔法の杖ではない」と安井氏は釘を刺す。「AI導入で何を目指すのか」「適用業務がAIに適しているのか」などを企画段階で十分に検討し、最適なAI技術を選択する。AIは学習データの整備が成功の可否を決めるため、ベンダーへの丸投げも禁物だ。「ユーザー企業とベンダーが協業し、データの精度を上げるために継続的な改善を行う。そのために業務部門と連携し、その知見を学習データに反映させていくのです」と安井氏は提案する。

またIoTは「ネットにつながるモノ」「データ分析と一連のプロセス」「それをハンドリングする人」で成り立つ。この3つが有機的に連携する環境や体制の構築が不可欠である。「どれだけ多くのモノをつなぎ、データを収集しても、この3つの要素がうまく機能しなければ、IoTの成功はおぼつかない」(安井氏)。

これに加え、経営者の意識変革も必要である。例えば、日本と米国のAI導入率を比較すると、日本は導入済みと検討中を含めても2割程度であるのに対し、米国の割合は半数近い46%に達する。背景には経営層のAIに対する理解度の違いがあるという。AIの本質を熟知し、どの業務に、どのように利用するか。このことを経営層が理解している割合は日本が8%。一方の米国は50%にのぼる。「日本では経営層がAIを十分に理解しないまま投資しているのです」と安井氏は懸念する。

欧米企業との比較もこの傾向を裏付ける。日本では情報システム部門長に代表されるトラディショナルなIT購入決定者がAI導入の推進役を担っているが、欧米ではCDO(Chief Data Officer:最高データ責任者)、CAO(Chief Analytics Officer:最高アナリティクス責任者)などのビジネス部門と連携する意思決定者がこの役割を担うケースが6割以上を占める。そしてその過半数はCEO(Chief Executive Officer:最高経営責任者)直属で活動している。

「すなわち、トップダウンによる意思決定のもと、ビジネス部門の意見を反映するAI活用が主流となっているのです。AI活用には経営層の関与とビジネス部門との連携が不可欠。欧米先進企業のCXOと同じ土俵に立てるレベルに到達できるかどうかがカギを握っています」と安井氏は主張する。

横並びを脱し、自社ビジネスを根本に考える

テクノロジーに対するアプローチの違いが、活用レベルの違いを生んでいることも強く認識すべきだ。日本企業は世界に比べて、AIやIoTを含む先端テクノロジーの影響度を高く見る一方、世界ではデータを企業経営に活用する「アナリティクス」のビジネスプライオリティが非常に高い。

この違いが顕著に表れているのがFintechで沸き立つ金融業界だ。海外では顧客サービスの向上や収益拡大のためにテクノロジーを活用する傾向が強いが、日本の金融機関はコールセンターの照会/案内業務や株式投資のサポート業務にAIを活用したり、バックオフィス業務にソフトウエア・ロボットを活用するなど、組織内の業務の効率化や生産性向上を目指す動きが目立つ。テクノロジーを新市場の開拓や事業の拡大につなげる動きはまだ少ないのが現状である。

「日本企業がテクノロジーの活用で飛躍を遂げるためには、自社ビジネスを根本に据え、活用の要否から判断する抜本的な意識改革が必要です」と話す安井氏。そのプロセスと要諦は図の通りである。「テクノロジーの可能性と限界を知り、経営課題を掘り下げ、その解決に向けたテクノロジー活用を検討する。ビジネス環境、システム環境、テクノロジーの理解度は企業によって異なるため、横並びの導入検討はすべきではない」と安井氏は強調する。

テクノロジーの特性を知り、できること・できないことを把握。その上で、経営課題の解決に向けた最適なテクノロジー活用を検討する。テクノロジーの導入が目的化すると、時間とコストの無駄になる。経営陣の理解とコミットメントが何よりも大切である。

こうした取り組みにおいて、経営陣の理解とコミットメントが不可欠であることは言うまでもない。「将来を見据えたビジョンのもとで、自社のビジネスの何を変革すべきか。そのためのテクノロジー活用が求められています」と話す安井氏。あらゆる業界でグローバル競争が激化する中、日本企業が目指すべき方向性を経営者は重く受け止める必要がありそうだ。

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