日経ビジネスオンラインスペシャル

Future Work Now(未来の働き方を今からはじめよう)

デジタル技術の活用で、労働環境は劇的に変わりつつあり、人間は新たな付加価値創造と活躍の場が求められる。
ユニークなキャリアと高い専門性を持つ多様なEYのプロフェッショナルたちが、近未来の働き方について、「エマージングテクノロジー」「組織・人材」「オペレーション」という3つの変革視点から解説する。

EY Japanの新オフィスがある東京ミッドタウン日比谷の21階に、最先端のテクノロジーを体感できる「EY wavespace」が2018年内にオープンする。ここで多様な専門性を持つEYメンバーと議論を重ねることで、自社の課題を発見したり、ビジネスイノベーションを生み出したりすることが可能になる。グローバル企業に対してデジタル戦略コンサルティングを行っているヘレン ベントレー氏に、EY wavespaceを活用する利点、デジタル時代の働き方、人とテクノロジーとの関わりなどについて、EYで人事・組織コンサルティング事業を統括する鵜澤慎一郎氏が聞いた。

鵜澤 ヘレンさんは英国から来日して8年目ですね。なにがきっかけで日本企業に関心を持たれましたか。

ヘレン もともと日本のビジネスとテクノロジーに興味があり、オックスフォード大学で日本企業の海外マーケティング戦略をテーマに論文を書きました。その過程で、日本企業の強みと弱みが分かってきたので、そこで働きたいと思うようになりました。
 大学卒業後、再び来日し、国際的な大規模イベントに携わり、海外向けのキャンペーン展開などのコミュニケーション戦略を担当しました。その後、大手広告代理店に転職し、グローバルにビジネスを展開する大手自動車メーカーなどに対して、海外向けのブランディング戦略やデジタル戦略のコンサルティングを行いました。

EY Japanが考える変革の時代における成長のキードライバー

鵜澤 主に、日本企業の海外マーケティング戦略を支援されてきたわけですね。どのようなところが日本企業の課題と思われますか。

ヘレン インターナショナル(国際)コミュニケーションという側面が、日本の企業はあまり強くないと思います。国際イベントのキャンペーンでは、開催地が安全・安心であることに加え、国民の「イベントへの期待感」を世界に見せていくかという国際コミュニケーション戦略を提案しました。結果として、海外からの集客や来場者の満足度など、そのイベントを成功に導くことができたのです。

鵜澤 コンサルティングの価値提供のあり方も多様化しています。国際コミュニケーション的視点も今後のグローバルコンサルティング場面では不可欠な要素になりそうです。

EY Japanが考える変革の時代における成長のキードライバー

新たなビジネスイノベーションを生みだす「EY wavespace」

鵜澤 現在のヘレンさんのEYでの役割について教えてください。

ヘレン 最先端のデジタルテクノロジーラボ「EY wavespace」を、2018年内に日本の新オフィス、東京ミッドタウン日比谷に開設するプロジェクトを担当しています。 EY wavespaceは、AI(人工知能)、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、ブロックチェーン、サイバーセキュリティといった「最先端技術のショーケース」であると同時に、クライアントとEYがコラボレーションしながらデジタル戦略を考える「ハブ」でもあるのです。
 EY wavespaceの中でクライアントは最先端のテクノロジーを活用したさまざまなツールを体験できます。そうした環境で、EYのコンサルタントやエンジニアなどと議論を重ねることで、自社の課題を発見したり、解決の糸口を見つけたり、新たなビジネスイノベーションを生みだしたりすることができるのです。

鵜澤 EY wavespaceはグローバルネットワークも大きな特徴ですね。私も先日、マドリードのEY wavespaceに行って、その先進性とナレッジ豊かなメンバーとの交流に触れましたが、個人的にも大きなインパクトでした。

ヘレン その通りです。今はNYやロンドン、スペインなど世界17拠点にEY wavespaceがあります。アジア太平洋地域には、シンガポール、香港、シドニー、上海に拠点があり、東京は5番目のEY wavespace。2018年内にオープンすれば、日本のお客様もグローバルネットワークを使い、世界の拠点とコラボレーションしながら、さまざまなデジタル戦略をつくれるようになります。

EY Japanが考える変革の時代における成長のキードライバー
EY wavespace Madrid

鵜澤 EY wavespaceを使った海外の事例や価値について具体的に聞かせてください。

ヘレン クルージングカンパニーの事例をご紹介しましょう。従来は、紙ベースでの告知や、オペレーションが伝統的すぎて現代にそぐわなかったのですが、EY wavespaceを使ってビジネスモデルをゼロから作り変えました。カスターマージャーニーをつくり、あらゆるタッチポイントで簡単に予約ができるとか、さまざまなサービスを利用できるとか、顧客視点からオペレーションの流れやテクノロジーを劇的に変えたのです。しかもこのケースでは、単にオペレーティングモデルを刷新したというだけでなく、大きな利益の拡大ももたらしたのです。真の意味で企業価値を向上させることができたコンサルティング事例だと考えています。
 また日系企業のとあるコンシューマープロダクトの会社では、オセアニア地域で大きなバックオフィストランスフォーメーションをこのEY wavespaceを舞台に実現しました。さまざまなEYエキスパートと最新のテクノロジーも使いながら議論を生産的に進めることで、従来よりも短期間で課題の抽出や解決の方向性づくり、ロードマップ作りまでを行うことできました。その他にも、大きなバックオフィストランスフォーメーションを成功させることに繋げることができた事例などがあります。東京でのEY wavespaceはこれからですが、すでに海外の拠点で日本企業が活用する事例がでてきています。

鵜澤 これから東京は、国際都市としての魅力を高め、アジアのなかでもシンガポールや香港などと競争していかなくてはなりません。東京のEY wavespaceにも日本企業はもちろん、さまざまな国との事例や先端的ナレッジを集積することによって、アジアのハブを目指していきたいですね。

EY Japanが考える変革の時代における成長のキードライバー

人とテクノロジーの関係を考える3つのキーワード

鵜澤 仕事からちょっと離れて個人的見解でも良いのですが、ヘレンさんは人間とテクノロジーの関係は今後どのようになっていくと思いますか。

ヘレン キーワードは3つあると思います。マニュファクチャリング、レギュレーション(法規制・制度)、そしてコミュニケーションです。
 まず、マニュファクチャリングですが、ロボットが人間の仕事を代替するようになると、働く場所を奪われる人たちがでてきます。すでに顕著になっているのがマニュファクチャリング。仕事を奪われた人たちの新しい仕事を社会全体で考える必要があります。
 2つめはレギュレーション。レギュレーションは国によって違い、強くなるほどイノベーションを起こすためのハードルも高くなる。一方、レギュレーションがない国でビジネスをするのは、非常にリスク大きい。イノベーションのジレンマですね。
 そして最後はコミュニケーションです。テクノロジーの進化で、人間とモノとのコミュニケーションのレベルはとても上がりました。例えば、AIを活用した自動会話プログラムの「チャットボット(chatbot)」を使えば、機械が聞いてくる質問に答えるだけでレストランや航空券の予約などが簡単にできてしまう。モノと話す場面がどんどん増えてくると、人間同士のコミュニケーションが希薄になっていく可能性があります。
 すると、人とのコミュニケーションが苦手な人が増え、諍いやトラブルの多い社会になるかもしれません。そうならないためには、子どものころから人とのコミュニケーションをしっかりと学んでおくことが重要です。テクノロジーの進化とコミュニケーション教育は一緒に進めていく必要があると思います。

鵜澤 デジタル戦略というと、新しいテクノロジーをどうインプリメンテーション(実装)するかという議論に終始しがちですが、レギュレーションなどのリスク、マイナスの側面もきちんと考慮しなくてはならない。そしてもう一つ、職を奪われた人の仕事をどうつくるとか、コミュニケーションを活発にするとかは、ヒューマニズムの視点から解決すべき課題です。テクノロジーと人間社会とは深い関係があり、両者を俯瞰した統合的なアプローチが求められていることは重要な指摘だと思います。
 EYらしいと思うのはデジタルというテーマをテクノロジー一辺倒でとらえずに多面的に解釈し、さまざまな考察や支援ができることです。次回はぜひ組織・人材という視点から、未来の働き方を議論していきたいと思います。

  • ヘレン ベントレー(Helen Bentley)

    EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社
    デジタルストラテジー・イノベーション・エクセレンス 
    ディレクター

    英国オックスフォード大学を卒業後、海外に向けたキャンペーンのコンサルティングを担当、成功に導く。その後、大手広告代理店などを経て、EYアドバイザリー・アンド・コンサルティングに入社。グローバル企業に対して主にデジタル戦略、国際コミュニケ―ション戦略のコンサルティングを行う。

  • 鵜澤 慎一郎(Uzawa Shinichiro)

    EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社
    ピープル・アドバイザリー・サービス リーダー
    アドバイザリー・ビジネスデベロップメント リーダー
    パートナー

    EYで国内100名超の人事組織コンサルティングサービス事業責任者兼同社の経営会議メンバーをつとめる。事業会社人事及びコンサルティング会社で20年以上の人事変革経験を持ち、専門領域は人事戦略策定、HRトランスフォーメーション、チェンジマネジメント、デジタル人事。 大規模複雑なグローバル人事変革や最新テクノロジー活用による業務・システム改革、働き方改革を数多く経験。

PAGE TOP