日経ビジネスオンラインスペシャル

Future Work Now(未来の働き方を今からはじめよう)

デジタル技術の活用で、労働環境は劇的に変わりつつあり、人間は新たな付加価値創造と活躍の場が求められる。
ユニークなキャリアと高い専門性を持つ多様なEYのプロフェッショナルたちが、近未来の働き方について、「エマージングテクノロジー」「組織・人材」「オペレーション」という3つの変革視点から解説する。

膨大なエクセルシートを作成し、税務情報を管理。人手と時間を必要とする“トラディショナル”なオペレーションに忙殺される――。そんな税務の世界が「デジタルタックス」という新しい流れによって大きく変わろうとしている。グローバル企業やインターネット企業にとって、タックスの最適化が国際競争力を高めるための重要な経営課題になっている。

国際性豊かな税務エキスパートを育んだ海外での教育、仕事、育児経験

鵜澤 カーンズさんのキャリアはユニークで、日本人でありながらオーストラリアで長く働いていらしたそうですね。

カーンズ もともと父親の転勤で私が高校生のときにオーストラリアへ行き、現地の大学を卒業後、いったん帰国して会計事務所に就職しましたが、オーストラリアで日系企業のお手伝いをしたいと思いオーストラリアに戻りました。その後3人の子どもを育てながら、ずっとパートタイムで働いてきましたが、今回、EY Japanの一員であるEY税理士法人へ出向して久々にフルタイムで働いています。

鵜澤 今回のテーマは「Future Work Now(未来の働き方を今からはじめよう)」ですが、タックス(税務)チームも今年3月にグランドオープンした東京ミッドタウン日比谷に拠点を移しました。働き方はどう変わってきましたか。

EY Japanが考える変革の時代における成長のキードライバー

カーンズ 複数階に分かれていたオフィスが同一フロアに集約されたことで、他部門の社員と「あの件ですが……」とすぐに打ち合わせができるようになりました。ハブと呼ぶエリアで議論したり、コーヒーを飲みながらアイデアを出し合ったりして、コラボレーションする場が増えたと思います。リモートワークという形態の働き方も増えてきていますね。
 なにより、EYの新しい拠点の周囲には、皇居前広場の緑、映画館や様々なショップ、飲食店など職住近接のような環境にあって、そこでEYは先進的な働き方を実践しているという実感があります。

EY Japanが考える変革の時代における成長のキードライバー

“伝統的”な税務業務にデジタル化の動き、その理由は?

鵜澤 カーンズさんの東京での役割を教えてください。

カーンズ 日本の大企業はグローバルに管理できる税務機能をつくり始めていますが、人材不足などの課題があり、テクノロジーを使わざるを得ない状況にあります。税務業務をデジタル化する、つまり「デジタルタックス」という新しい枠組みが生まれ、そのサービスを展開するために、今日本のリーダーをしています。

鵜澤 デジタルタックスとは聞きなれない言葉ですが、“伝統的”なイメージの強いタックスの世界にデジタル革命が起きているのはなぜか、少し具体的にお話しいただけますか。

カーンズ タックスのデジタル化には4つの側面があります。1つめは、グローバル企業の活動はもちろんのこと、インターネットの世界でもビジネスは国境を簡単に越えてしまい、課税をどこでするべきかが問題になっています。タックスはビジネスモデルの変革にタイムリーに対応しなければなりません。2つめは、納税データ報告の迅速化など各国の税務当局が進めるデジタル化への対応が必要になっています。3つめは、各社における税務の効率化を進めるためのテクノロジーの活用です。そして4つめに税務データをきちんと管理し、税務リスクやコストの可視化に活用していくためにデジタル化が必要になっているのです。

EY Japanが考える変革の時代における成長のキードライバー

鵜澤 なるほど。タックスのデジタル化により、税務データは戦略的な意思決定に活用されるようになるわけですね。ところで、そうしたデジタルタックスを実現するためのカーンズさんのチームには、どのような特徴がありますか。

国際性豊かな税務エキスパートを育んだ海外での教育、仕事、育児経験

カーンズ EY税理士法人の「タックス テクノロジー・アンド・トランスフォーメーション」チームは、アジア太平洋(APAC)地域チームの一員です。APACで積極的に活躍しているのはシンガポール、香港、オーストラリア、ニュージーランド、マレーシア、フィリピンで、地域のリーダーは香港にいます。総勢70人ほどのメンバーがいますが、日本もそれらの国々と肩を並べ、イニシアティブを発揮しています。
 そしてAPACの「タックス テクノロジー・アンド・トランスフォーメーション」チームの特徴は、各チームメンバーに必ず違う国のカウンセラーがアドバイスする仕組みになっていることです。それにより、地域の中でクオリティの均一化、意識の統一化が図れるのです。

EY Japanが考える変革の時代における成長のキードライバー

鵜澤 おもしろいですね。日本国内で閉じることなく、あえてインターナショナルな環境で働くようにしているのはEYならではの先進的な考え方ですね。競合と比べ、EYの優位性はどんなときに感じますか。

カーンズ やっぱりグローバルな連携ですね。EYは世界150以上の国と地域に展開していて、本当の意味で協力的な体制を構築したグローバルなネットワークがあります。デジタルタックスも含め新しいイニシアティブやプロジェクトに関わるたびに実感しています。

鵜澤 そうですね。私の理解では、EYは世界最適な成長戦略やアカウントポートフォリオを考えるので、戦略を世界的に共通化して促進しやすいですね。もう1つ、People-Oriented Cultureと呼んでいますが、お互いを尊重し合ったり、助け合ったりする文化がEYグループ全体に脈々と受け継がれています。こうした戦略としての「世界共通性」と「人を起点に考える企業文化」の両面から、グローバルネットワークが構築されていると思います。

ブロックチェーンを活用した先進事例でEYがリード

鵜澤 欧米のグローバル企業に後塵を拝し、多くの日本企業はオペレーション機能や業務プロセスのグローバル集約化が進まずに国・地域で別々に管理しつづけることの問題が指摘されがちです。税務の世界ではどうですか。

カーンズ その意識はここ3年ぐらいでだんだん変化してきたように思います。本社主導で税務コストを管理し、国際競争力をつけようという動きが次第に広がりつつあります。
 企業は第一に売り上げを伸ばすことに関心を払いますが、実は税金コストや税務リスクは会社の経営管理上とても重要であり賢くタックスマネジメントしないと企業の持続性は保てません。これだけのクロスボーダービジネスになってきたときに、税務コストの最適管理に積極的に取り組んでいる欧米企業に対して、日本企業は大きく遅れをとってしまっています。企業の業績指標として経常利益率(ROE)が注目されるにつれ指標を構成する実効税率管理と税務機能の最適化に取組む必要性が高まり、税務機能の最適化のためにテクノロジーの活用も含めたプロセスの効率化を図る。最もトラディショナルであり、人の専門性に頼っていたタックスという世界が劇的に変化し始めているのです。

鵜澤 EYのデジタルタックスの具体事例を挙げて、どのようにグローバルビジネスの世界に貢献できるものかをぜひ教えてください。

カーンズ ビットコインの中核技術として知られる「ブロックチェーン(分散型台帳技術)」は、実は高いセキュリティを求められるタックスの分野でも活用されています。 オーストラリアでは、銀行が税務当局に提出する年金回りの申告書の作成・提出プロセスにブロックチェーンを使い始めています。申告書は個人ごとに提出するため膨大な量になり、しかも信用情報ですので、これまでは多くの人手と時間を必要としていました。EYは銀行と税務当局とともに新たなシステムの開発に携わりました。
 また、ヨーロッパでは、海上保険業界においてブロックチェーンを応用し、海上保険のスマートコントラクト(契約の自動化)を実現しました。海上保険に関わるサプライチェーンは複雑なうえに関連当事者も多く、天候によって遅延が生じるなどの事象の発生による海上保険の掛け金再計算のために長い場合は120日間もかかる状況がありました。その従来の仕組みをデジタル化するため、EYが中心になって取りまとめ、法律・会計・税務のすべてを考慮したうえでブロックチェーンの活用によってスマートコントラクト化を実現したのです。

鵜澤 ブロックチェーンというテーマはどうしてもテクノロジーの部分に焦点が当たりますが、実際のビジネスに適用するには法律・会計・税務などの多分野を包括的に考慮した進め方をしないと変革は実現しないという大事な示唆だと思います。コンサルティング、タックス、リーガルといったあらゆるエキスパートがグローバルスケールで集まり、ワンストップサービスとしてクライアントにサービス提供できることがEYならではの価値だと言えますね。

  • カーンズ 裕子(Yuko Kearns)

    EY税理士法人
    タックス テクノロジー・アンド・トランスフォーメーション
    エグゼクティブディレクター

    オーストラリア登録税理士。2009年EYシドニー事務所入所。15年よりEY税理士法人東京事務所に駐在。日系多国籍企業のグローバル税務コーポレートガバナンス体制構築、税務テクノロジーの活用など、グローバル対応の必要性が高まっている企業の本社税務機能のご支援に注力。税務のデジタル化を推進するEYタックス テクノロジー・アンド・トランスフォーメーション チームの初代メンバーの一員として税務コーポレートガバナンス体制の構築と効率化の支援を提供している。

  • 鵜沢 慎一郎(Uzawa Shinichiro)

    EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社
    ピープル・アドバイザリー・サービス リーダー
    アドバイザリー・ビジネスデベロップメント リーダー
    パートナー

    EYで国内100名超の人事組織コンサルティングサービス事業責任者兼同社の経営会議メンバーをつとめる。事業会社人事及びコンサルティング会社で20年以上の人事変革経験を持ち、専門領域は人事戦略策定、HRトランスフォーメーション、チェンジマネジメント、デジタル人事。 大規模複雑なグローバル人事変革や最新テクノロジー活用による業務・システム改革、働き方改革を数多く経験。

PAGE TOP