デジタル革新を生み 未来を紡ぐ人材育成:FUJITSU Digital Business Collegeの全貌

知識としてではなく身体に叩き込まれたイノベーティブマインド
講師・受講生との継続的な関係構築も大きな成果

株式会社そごう・西武事業デザイン部
シニアオフィサー 楠本 博紀 氏

デジタル革新を推進できる人材を育成するために2017年度に第1期が開講された「FUJITSU Digital Business College」。前回はその監修委員長を勤めた多摩大学大学院教授の紺野登氏にインタビューを行い、開講に至る背景やカレッジの意義、カリキュラムの柱などについて話を聞いた。今回は受講者の声を紹介したい。ご登場いただくのは、株式会社 そごう・西武 事業デザイン部でシニアオフィサーを務め、カレッジでは部門長コースを受講した楠本 博紀氏だ。カレッジの最終発表では最優秀賞を獲得した同氏に、受講の経緯、印象深かったカリキュラム、そこから得た学び、そしてそれを活かした現在の取り組みについて話を伺った。

「百貨店をひっくり返す」ミッションのため
藁をも掴む思いでカレッジを受講

――まず現在どのようなお仕事に従事されているのか、簡単にお教えください。

楠本事業デザイン部という部署でシニアオフィサーを務めています。私は入社した当時は外商部門、その後は25年間システム部門におりましたが、2017年7月に突然、事業デザインをやってほしいと言われました。このときは実際に何を行えばいいのか、見当もつきませんでした。そもそもデザイン思考とは何なのかすら知らなかった程でした。

――まさに青天の霹靂ですね。楠本様が任された事業デザインとは、具体的にどのようなものなのですか。

楠本百貨店の事業モデルを、根本から見直す仕事です。現在の百貨店の事業モデルは誕生してからすでに100年が経過しており、経営トップは「このままでは先がない」という危機感を持っています。今までの百貨店はお客様がほしいと思う商品を店に並べ、お客様の欲望を喚起して売上につなげるという事業モデルですが、最近では十分なものが身の回りにあるため、このモデルが成立しにくくなっているのです。わかりやすい例がミレニアル世代の購買行動です。スティーブ・ジョブズやジャック・マーに代表されるノームコアのようなシンプルなファッションを好み、自分にあったものがありさえすれば特に高価なものはほしくない、という人が増えています。お客様がこのように大きく変化しているのですから、百貨店も自分たちをひっくり返すくらいの、大改革が必要だと考えています。

――その大改革の方法論を学ぶため、富士通デジタルビジネスカレッジ(以下 カレッジ)を受講することになったのですね。カレッジの存在を知ることになったきっかけは何でしたか。

楠本事業デザインを任されることになった時、以前からお付き合いのある富士通の営業さんから、デジタルビジネスカレッジの話を聞きました。デザイン思考が学べるということで、藁をも掴む思いで申し込みをしました。

――受講されたのは部門長向けのクラスでしたね。カリキュラムの中で最も期待度が高かったのは何ですか。

楠本1つはやはりデザイン思考です。未来に向けて自分たちをひっくり返すには、このような思考方法が必要になるだろうと考えました。それからもう1つ、シリコンバレーに行けることも魅力でした。数々のスタートアップを輩出しているシリコンバレーで、実際に何が起きているのかを自分自身の目で見たいと思いました。

ワークショップで究極まで追い込まれ
自分の知恵を絞り出すことを体験

――実際に受講されて、最も印象的だったことは?

楠本シリコンバレー研修の5日間です。現地のスタートアップやスタンフォード大学の方の話を聞くことができ、この地でどのようにビジネスがインキュベートされているのかを、肌感覚で知ることができました。またワークショップの場で自分自身でビジネスモデルを考え、それを講師の先生方に審査されるという経験も、刺激的な体験でした。自分が考えたモデルが先生方から徹底的に否定され、何度も何度も作り直すという経験をしたのですが、究極まで追い込まれて自分の知恵を絞り出すということがどのようなことか、身をもって理解することができました。

――そこではどのようなモデルを考えたのですか。

楠本「Experimental Department Store」という、お客様のライフスタイルや体験したいシチュエーションに合わせて、商品を揃えて体感してもらうという、新しい百貨店のありかたです。最終的には満点をいただきましたが、後で冷静になって考えてみると、このようなモデルは常に目新しい売り場を作る必要があり、そのコストを考えると消耗戦になると気がつきました。ビジネスモデルを自分で作るだけではなく、それを徹底的に否定されるという体験もしたことで、第三者的な視点も持てるようになったと思います。

――カレッジでの経験全体を通じて、他に得たものはありますか。

楠本イノベーションを生み出すためのマインドセットやスキルを、身体に叩き込むことができました。これらを知識として知っているだけでは、実際にイノベーションを生み出すことはできません。カレッジではしっかりと時間をかけ、正しいアプローチで教えていただきました。また半年間コースを受講する中で、先生方や他の受講生の方との人脈もつくれました。現在も交流が続いていますが、このような関係を持つことができたのは1つの財産になります。2017年11月には、コースの垣根を超えて成果物を発表する「文化祭」の開催など、先生方をはじめとする関係者をうまく巻き込んで交流の場もあり、事務局の運営も素晴らしかったです。

――イノベーションを生み出す上で、人脈の存在は重要だと思いますか。

楠本とても重要です。会社からはイノベーティブなことをやれと言われますが、社内の他の人は現業の仕事に従事しているため、社内で変わったことをしている人は孤立しやすいです。しかし社外に同志がいれば、精神的な支えになります。これは大きな存在です。

――カレッジの最終発表では最優秀賞を獲得しましたね。

楠本シリコンバレーでの体験の後、カレッジの仲間と共に、百貨店の強みを活かす方法を一緒に考えました。百貨店の強みを突き詰めていくと、大きく2点に集約できます。1つはお客様と長年にわたって培ってきた信頼関係。つまり人的資産です。もう1つは百貨店の立地です。例えば西武池袋本店がある池袋駅周辺は戦後すぐに闇市が発生し大きく栄えるなど、人が自然と集まる場になっています。このような一等地にあることも、百貨店の大きな強みです。この2つをどのように活かすかが、未来の百貨店にとって重要な課題になるはずです。