ハイテク・ベンチャー大国として、イスラエルがプレゼンスを急激に高めている。人口当たりのエンジニアの数は世界第1位。高い技術を必要とするライフサイエンス、サイバーセキュリティー、IoT、自動運転、フィンテックなどでひときわ強さを見せており、イスラエル生まれの革新的技術が世界各国の先端分野で新たなイノベーションを起こしている。そして今、日本とイスラエルの企業双方が互いをビジネスパートナーとして注目するようになった。様々な立場から意見を交換し、日本とイスラエルのテクノロジー分野での連携の現状、そして未来について考察する。
司会:日経BP社 ビジネスメディア 発行人補佐 酒井耕一

スタートアップがひしめく世界屈指のIT産業先進国
スタートアップがひしめく世界屈指のIT産業先進国

――本日は、先日イスラエルで現地の企業を取材してこられた国際ジャーナリストの蟹瀬誠一様、産業界から東陽テクニカ セキュリティ&ラボカンパニー の櫻井俊郎様、投資サイドからグローバルIoTテクノロジーベンチャーズの安達俊久様、イスラエル大使館経済部のノア・アッシャー公使参事官の皆様にお集まりいただきました。

蟹瀬氏私は米国やフランスの通信社やニュース週刊誌で記者として主にアジア・パシフィックを中心に活動してきました。折しもニュースではエルサレムの首都問題が取り上げられているように、ジャーナリズムの観点ではイスラエルは紛争国というイメージが強かったのですが、今回実際に現地を訪れるとその先入観は覆されました。最も驚いたのは、イスラエルは世界トップクラスのIT先進国だったこと。インテルのCPUの8割以上がイスラエル製、自動運転のコア技術がイスラエル発である、ドローンがイスラエルで軍用に開発されたものといった事実を知り、また先日はサイバーセキュリティ国際会議「サイバーテック東京」で最先端技術に触れ、イスラエルの印象は一変しました。

櫻井氏東陽テクニカは欧米のハイテク測定器を企業の研究部門や大学に提供する会社として60年以上の歴史があります。近年はクラウドの登場などにより関連するテクノロジーの高機能化が急速に進み、導入企業が技術を使いこなせないという現実に直面しています。特にサイバーセキュリティーではその傾向が強いことから、2016年にサイバーセキュリティーサービスに特化したセキュリティ&ラボカンパニーを設立しました。

設立に当たっては北米、欧州、そしてイスラエルのサイバーセキュリティー関連の企業や団体を調査・訪問しました。その際、イスラエル・テルアビブでスタートアップ、大学、VC(ベンチャーキャピタル)が非常に精力的に活動していることが目を引きました。ユニークな技術がイスラエルで次々と生まれている理由に納得できたので、大きな可能性を秘めたイスラエルに注力していくことを決断しました。現在、いくつかの在イスラエルのスタートアップと連携し、日本の産業界に貢献すべく取り組んでいます。

日本とイスラエルの輸出入・貿易額の推移
スタートアップへ投資し、育て上げるスタイルが世界の潮流に――安達氏
スタートアップへ投資し、育て上げるスタイルが世界の潮流に――安達氏

安達氏私は伊藤忠商事の情報産業部門に所属し、20年間にわたってベンチャー企業の商権獲得と投資を行ってきました。1990年代はシリコンバレーを中心に活動していましたが、97年にイスラエルとの関係を深める転機が訪れました。イスラエルで創業しモバイル通信事業課金システムの巨大企業に成長したアムドックスの技術者たちと出会い、彼らの会話のレベルが極めて高く、高度な技術力に裏打ちされた会社であることがよく理解できたのです。一方で、マーケティングに関しては不得手だという印象を持ちました。以来、イスラエルに目を向け、17年間で十数社のスタートアップへ投資を行いました。大成功には至っていませんが、投資を継続することでスタートアップが日本市場で展開できる仕組みを作っていくことが大切だと実感しました。その後、伊藤忠を退社し、2016年に産業用のIoTに特化してイスラエルのスタートアップと日本企業を橋渡しする当社を設立。デジタル化で後れを取る日本企業をイスラエルの技術でサポートするのがミッションです。

アッシャー氏イスラエルは中東の典型的な国の姿とはかけ離れた、とてもユニークな国。日本の企業幹部の方には、私がイスラエルの魅力をどんなに説明するよりも、一度現地を訪れれば即座にイスラエルを好きになってもらえるといつもお話しします。今日お越しのお三方には同意していただけるでしょう。

日本からの投資額は3年間で20倍に拡大
日本からの投資額は3年間で20倍に拡大

アッシャー氏2014年の安倍首相とネタニヤフ首相の相互訪問以来、両国は親密さを増しています。特筆すべきは経済面での結びつきで、日本企業による投資額は20倍に、進出した日系企業数は2倍へ伸長。川の岩が取り除かれ、一気に水が流れ出したという印象です。日本企業からの当大使館経済部への問い合わせが非常に増えており、逆にイスラエル企業からはテクノロジーのリーダーである日本と組んでグローバルのリーダーを目指したいという声が日増しに多くなっています。

イスラエルへの日本企業進出・投資額の推移

蟹瀬氏安達様はなぜ1997年という早い段階でイスラエルの産業に着目できたのでしょうか。

安達氏当時、これからは膨大な通信データを扱う世の中になると確信していたので、アムドックスの技術の将来性に引かれました。このような技術を生むイスラエルには何かある、という直感で動き出したのです。つてを頼りながら少しずつコネクションを広げ、スタートアップに広くアプローチするネットワークを築きました。イノベーションの世界では、ミドルステージやレイターステージのベンチャーを高額で買収するよりも、スタートアップへ投資してある程度時間をかけて育てていくのが主流になっており、当社は日本企業がまだ発掘していないスタートアップを紹介するというモデルに限定して取り組んでいます。

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主催:イスラエル大使館 経済/協力:日経BP総研
主催:イスラエル大使館 経済/協力:日経BP総研

お問い合わせ先:イスラエル大使館 経済部
Israeljapaneconomy@israeltrade.gov.il