2020年の送配電部門の法的分離を間近に控え、電力システム改革が急ピッチで進む中、電力業界は未曾有の環境変化に見舞われている。そんな中、関西電力の関係会社である関電サービスは、2016年8月、生き残りをかけて構造改革に乗り出した。将来を見据えた中期経営計画を策定し、自ら変革への道を歩み出した同社。その経緯と今後の展開について、関電サービス 代表取締役社長の竹田芳弘氏に話を聞いた。

電力システム改革の進展を受け
構造改革をスタート

関電サービス株式会社
代表取締役社長
竹田 芳弘

2016年の電力小売り全面自由化に続いて、2020年には法的分離も予定され、電力業界はかつてない激動の時代を迎えている。こうした中、大手電力会社のグループ企業は大きな岐路に立たされている。関西電力の関係会社である関電サービスもその1つだ。

関電サービスの設立は1985年。関西一円に約50カ所の営業拠点を持ち、電気使用量の検針や工事受付、配電線路の用地交渉、関電ガスの小売関連業務など、地域に密着したサービスを関西電力とともに展開してきた。

だが、電力システム改革の流れの中で、今後は電気料金低廉化のためには、関係会社といえども価格競争力がなければ受託できないことも十二分に想定する必要がある。さらに、スマートメーターの普及が進み、人手による検針業務などの受託量が急減していくことも、同社の経営基盤を揺るがす一因となっている。

こうした中、同社もまた、業界生き残りをかけてビジネスモデルの変革を迫られている。同社代表取締役社長・竹田芳弘氏は語る。

関電サービス株式会社
代表取締役社長
竹田 芳弘

「例えば、かつては関西電力グループの強みであった業務拠点の体制が、強みだけとは言い切れなくなった。時代の変化から取り残されないためには、自ら変革を起こして業務の抜本的な見直しや業務拠点の集約などBPRを行い、競合他社に優る業務基盤を確立しなければならない。それが当社の経営課題となっています」

しかも、電力システム改革により継続的に仕事を受託できる保証はない。親会社に依存する経営体質を変え、自ら仕事を獲得する「自律経営」へとシフトしない限り、競争に勝ち抜くことはできない――こうした危機感から、同社の経営陣は構造改革に向けて、大きく舵を切ることとなる。

BPRとRPA導入を同時並行で
進める
中期経営計画を策定

関電サービス株式会社
取締役 経営企画部長
近藤 忠司

だが、いざ構造改革に着手しようとすると、思わぬ壁が立ちはだかった。

「従来のグループ会社の使命は、電力会社の指示を確実に遂行すること。このため、当社には経営戦略を立案する部隊、すなわち会社の経営や組織、業務などを考える企画部門が脆弱だったのです」(竹田社長)

そこで、関電サービスが構造改革のパートナーとして白羽の矢を立てたのが、KPMGコンサルティングだった。同社が電力業界について豊富な知見を持ち、戦略立案から人事改革、経営管理、BPR、IT導入に至るまでエンド・トゥ・エンドのサービスを提供できる点を高く評価。こうして2016年8月、経営企画部を増強し、同社の支援のもと、中期経営計画の策定に向けたプロジェクトが発足する。

 

構造改革を進めるにあたり、プロジェクトチームが最も重視したのが、「風土改革」だった。同社は、親会社とのつながりからセクショナリズムに偏りがちで、全社的な観点から戦略を考えることの重要性を、まず社内に認識してもらう必要があった。

こうした中、KPMGコンサルティングは毎週のように各部門のヒアリングを行い、問題点の洗い出しと原因分析を実施。企画部門と一体となって、変革の必要性を訴えた。

その努力は、2017年度中期経営計画という形で結実する。この中期経営計画は、「関電サービス 明日創造プラン」と名付けられ、構造改革に向けて「6つの柱」と「11の取組み」が定義された。

なかでも、構造改革の目玉となったのが、BPRによる業務集約化とRPAの導入である。同社では、2017年2月から、KPMGコンサルティングとともにRPA導入の検討を開始。まずは、システム入力作業が大半を占める共架業務(電柱を利用した電話線やケーブルテレビ通信線などの設置申し込みを処理する業務)の契約手続きにRPAを適用することを決めた。同時に、ロボットと人の役割を分担させ、人の手待ちを極力なくす業務フローの見直しに着手、BPRと定型業務のロボット化を並行して進めていった。

「本来は業務フローを改善してからロボットを導入したほうが、コストも工期も最小化できるのですが、電力システム改革が先行している以上、我々もスピード感を持って取り組まなければ時代の変化に取り残されてしまう。BPRとRPA導入を同時並行で進めていくことになったのは、そのためです。その分、現場には相当の苦労をかけてしまいました」と、プロジェクトリーダーの取締役経営企画部長・近藤忠司氏は語る。

関電サービス株式会社
取締役 経営企画部長
近藤 忠司

こうして2017年8月、RPAの運用がスタート。結果として、共架業務の作業量の約20%削減を達成することができた。4月から、共架業務全体にRPAの適用を拡げ、約40%の作業量削減を見込んでいる。

「3月末には、関電ガス関連の入力業務へのRPA導入も完了し、本番稼働しています。今は、RPAが適用可能な業務を50件ほど洗い出し、今後2年間で導入を加速させる計画を練っているところです」(近藤取締役)

定型業務にロボットを導入し
人財の付加価値を高める

RPA導入を機に、同社では競争優位の確立に向けて、さまざまな取り組みを本格化させている。

その1つが、新たな契約形態への転換だ。これは、RPAによる工数の削減分を先取りすることで、導入当初から契約金額を値下げし、かつ効率化効果とリスクを折半するというもの。いわゆるメリットシェアの契約である。こうした先進的な試みは、業界内では過去に例がなく、「これを皮切りに、今後もさまざまな形でWin-Winの契約形態を提案していきたい」と竹田社長は語る。

さらに、同社では競争力の強化に向けて、人事制度の改革も進めている。

これまでは、関西電力からの転籍者がマネジメント職を独占していたが、今後は人事制度を見直して、キャリアパスや評価・報酬制度、教育制度を再整備。プロパー社員にも経営幹部への道を開き、次世代の関電サービスを担う人財の育成に注力していく。

また、RPAにより定型業務を自動化することで、社員がより付加価値の高い仕事に集中できる環境を実現。優秀な人財を活用することで、競合他社に優る企業体質を実現していくのが狙いだ。

同社では2018年度を「実行の年」と定義し、事業の多角化にも着手。既存事業に加えて、情報処理や不動産、広告、旅行関連などさまざまな分野の免許を取得し、真の自律経営を実現するべく着実に地歩を固めつつある。

「この1年半で、構造改革は順調に進み、自律経営の芯の部分をしっかりと固めることができました。とはいえ、2020年に法的分離が行われれば、電力業界に第2の環境変化が起こるでしょう。来るべき大変革に備える意味でも、再度計画を見直し、必要に応じて軌道修正を行っていきたい。今後の改革を継続させていく意味でも、外部の専門家の力添えを得る意義は大きい」

そう語る竹田社長。1年半で延べ40人のプロフェッショナルを投入したKPMGコンサルティングの支援体制を、こう評価する。

「当社のようにしがらみの多い会社が構造改革を行うには、まず風土改革から始める必要がある。『こうあるべき』と、大所高所から物を言われても、おそらく失敗していたと思います。その点、KPMGコンサルティングは、当社の現状を全て許容した上で、何度も軌道修正しながら最適な提案をしてくれた。親身になって相談相手となってくれたからこそ、皆が納得いくまで議論を交わし、中期経営計画をまとめ上げることができたと感じています」

電力システム改革という未曾有の試練の中で、競合他社に「優る」べく、自ら変わることを決断した関電サービス。同社は、変化を恐れぬチャレンジ精神と不退転の決意を武器に、グループ子会社から自律企業へと大きな変貌を遂げつつある。

KPMGコンサルティング 執行役員 パートナーの宮坂修司氏(左)と竹田社長

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