鳥居 暁氏 ボクシーズ 代表取締役 タグキャスト 代表取締役社長
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レストランで「注文時間0分、会計時間0分」を実現する12言語対応の夢のアプリに注目が集まっている。業務改革を達成するためのツールとして、また訪日客のプロモーション装置として活用が期待される。ここで注目すべきはアプリに使われている要素技術だ。さまざまな業界で、位置情報をビジネスチャンスに変えることができる未来の技術に迫った。

ボクシーズ

2006年設立。主な事業はUI/UX コンサルティング、システム開発など。レストランで「注文時間0分、会計時間0分」を実現する12言語対応アプリ「Putmenu」など数多くのサービスを手掛ける。

タグキャスト

2013年設立。ビーコンが発信する識別情報と電波強度によりアプリを制御する特許を保有。屋内位置情報サービス『TAGCAST(タグキャスト)』を提供。

「この動画をご覧ください。2年半前に描いた未来のイメージが、実は今現実のものになりつつあります」。

帝人、タグキャスト、セルクロスの3社が共同開発した表面認証ビーコン「PaperBeacon(ペーパービーコン)」の活用イメージ映像。「Putmenu」もまだこの段階では未来のイメージとして動画が描かれていた。

そう興奮気味に語るのは、ボクシーズ、タグキャストの両社で社長を務める鳥居 暁氏だ。本動画は、2015年にタグキャスト、帝人、セルクロスの3社が共同開発した表面認証ビーコン「PaperBeacon(ペーパービーコン)」の活用イメージを表現したもの。教育現場や飲食店での活用シーンも当時はまだ夢物語だった。

「我々にしか実現できないもので勝負する」―。鳥居社長の熱い思いが、夢を現実に変えた。レストランで「注文時間0分、会計時間0分」を実現する12言語対応のアプリ「Putmenu(プットメニュー)」は、動画で描かれた未来のイメージを現実に変えた。

「不便さ」の突き詰めに光明あり

「不便さ」の突き詰めに光明あり

ーー2017年7月に発表された「Putmenu」は、モバイルコンピューティング推進コンソーシアムが主催するMCPC award 2017のグランプリ・総務大臣賞を受賞するなど、高い評価を受けています。どのようなサービスなのでしょうか。

Putmenuは、飲食店に来たお客さんが自分のスマートフォンで注文から会計までを行えるアプリです。タグキャストが開発したTAGCASTという位置情報技術と、帝人とともに開発したPaperBeaconというビーコンが使われています。Putmenuは、飲食店の売上拡大と人手不足を解決できるテクノロジーとして非常に評判がよく、2017年7月にPutmenuの運営を開始したESOLA Shibuyaというイタリアンレストランには、飲食業界の方やPOSメーカーの方も来店して、導入や連携を検討されているようです。

2018年1月からはイオンモール幕張新都心のフードコートで導入を開始しました。カウンターに並ばずにスマホで注文と支払いができ、従来の呼び出しベルを店舗で受け取る必要もなくなります。

ーーPutmenuのアイデアの源泉はどこにあったのでしょうか。

私はいつも、世の中で不便と思われていなくても、「実は不便なモノやコト」は何だろうと考えています。例えば、飲食店の呼び出しベルは店員に来てもらう機能しかありません。食べ終わったら、会計に並ぶ必要がある。もっと便利になるためには、どうしたらよいのだろう、といった形で思考を広げ、生まれたのが「Putmenu」です。しかし、私が本当のビジネスチャンスと考えているのは、「Putmenu」で使われているTAGCASTの技術です。

私は、2006年にボクシーズを立ち上げ、Web制作から始めて、スマートフォンアプリ開発などを行ってきました。単なるアプリ開発だけでなく、お客様のビジネスを具体化できるようにプランニング、クリエイティブ、ディベロップメントの総合力を提供することをモットーとしていたのですが、ビジネスを続けるうちに、危機感が生まれてきました。アプリ開発は、ちょっとしたアイデアがあればよいものを作っていけますが、競争が激しく、資金力のある会社にアイデアをマネされてしまえば立ち向かえなくなることもあります。アイデアだけで勝負するのではなく、我々にしか実現できないもので勝負する必要があると考えたのです。

ーーそこで生まれたのがTAGCASTなのですね。

2012年、ある展示会で参考出展されていたBluetooth機器を見たときに、新たな可能性を感じました。GPSは、屋外の位置情報を利用するために有効ですが、Bluetoothは、屋内でも位置情報を利用できるのではないかと思いつきました。これまでの屋外のGPSに加え、屋内のどの部屋にいるのか(インドアGPS、Room IoT)、どのテーブルに座っているのか(テーブルGPS、Table IoT)、の2段階で位置情報を利用することを考え、その場所に応じてスマートフォンのUXが変わっていけば、ユーザーが便利になっていくと考えました。たとえば、飲食店の場合、スマートフォンのGPSを使ってお店までナビゲーションしてもらい、Room IoTでお店の中に入ったことがわかればPutmenuでメニューを表示させ、スマートフォン上で注文と会計をしてテーブルにつけばTable IoTで注文情報とテーブル番号を結び付けて、お店が料理を出すことができるというわけです。食べ終わったら、会計不要で退店できます。

TAGCASTは屋内での位置情報をインドアGPS、テーブルGPSに細分化している。

ーーTAGCASTの開発にはどのような苦労がありましたか。

チップ自体は調達していますが、基盤の設計からファームウェアの開発まで我々で行い、アプリサイドのSDKやインフラとなるクラウドの開発まで行っています。Table IoTのPaperBeaconを共同開発した帝人をはじめ、複数の大手企業が我々の構想に賛同してくれて協力してくれました。ただ、資金調達には非常に苦労しました。誰もやっていない新しい挑戦に資金を出してくれる企業を見つけることが何年もできませんでした。諦めることなく開発を続けることで、エンジェル投資家の理解と協力のもと、資金支援を得ることができたので、結果として独立性の高い体制を作れたのは、よかったと思っています。

PaperBeacon(ペーパービーコン)は、飲食店や教育現場、工場など幅広い応用が期待される。

サティア・ナデラも認めたPutmenuの可能性

サティア・ナデラも認めたPutmenuの可能性

ーー支援の1つとして、マイクロソフトのスタートアップ支援プログラム「Microsoft BizSpark」を利用されたそうですね。

さまざまな人とのつながりの中で、マイクロソフトのエバンジェリストの方と出会い、我々の事業構想をご評価いただきMicrosoft BizSparkの制度をご紹介いただきました。実は動画で使っているMicrosoft Surfaceもマイクロソフトに貸していただきました。

クラウドプラットフォームとしてMicrosoft Azureを使って感じるのは、マイクロソフトがスタートアップを支援していこうと強く考えていることですね。我々はクラウドを使って新たなチャレンジを行おうとしていますが、単純に契約でつながっているクラウドプラットフォームではなく、マイクロソフトのように人と人でつながっている企業とビジネスを進めることができたのは、非常によかったと思います。実際、エバンジェリストの方々と日々情報交換しながら、クラウドの技術をフル活用して開発を行うことができました。

米国マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏に、de:code 2016のプレゼンテーションで力強くPutmenuをご紹介頂いたときは、本当に夢のようでした。

「PutmenuはIoTを活かした魅力的なソリューションで、すべてのレストランに提案できる」(Putmenu is a fascinating solution where they taking what is IoT and bring in it to all restaurants.)とプレゼン頂きました。

振り返ると、これが我々の自信につながり、多くの壁を乗り越えると共に、機能がめざましく進化していきました。そして、1年半後、総務大臣賞を受賞することができました。

PutmenuはMicrosoft CEOのサティア・ナデラ氏がプレゼンテーションの中でも紹介した。

ーーPutmenuでは、Microsoft Translator Text APIを使って12言語に対応しています。それほど多くの言語に対応したのはなぜですか。

もともと10言語からスタートし、経済産業省のIoTおもてなし実証事業に採用されたことを契機に、ロシア語、その次にスペイン語と追加して、12言語になりました。今後も増やしていく予定です。

Microsoft Translator Text APIで興味深かったのは、開発中に「Nice!」と入力してみると、他の翻訳エンジンでは「ニース!」と都市名になったのに対して、Microsoft Translator Text APIでは「素晴らしい!」という日本語になったことです。翻訳精度も比較的高いと感じましたね。

位置情報が社会を変える

位置情報が社会を変える

ーーTAGCASTでは、Table IoT、Room IoTのように、IoTという言葉が使われています。多くのデータが収集できるPutmenuの可能性をどのように考えられているのでしょうか。

Putmenuは短期的には、人手不足とインバウンド対策を特徴にしています。しかし、中長期的には、デジタルトランスフォーメーションによる飲食ビッグデータに大きな可能性を秘めています。飲食店が注文と会計のビッグデータを、お客さまに紐づいた状態で蓄積できれば、さまざまなアプローチやプロモーションに役立ちます。Microsoft AzureのCognitive ServicesなどのAIを活用すれば、将来の可能性が広がります。

ーーO2O施策などに悩んでいる企業などの助けになっていくのでしょうか。

我々の位置情報は、その部屋やそのテーブルを特定し、顧客体験やユーザービリティ向上のためにある、と考えています。位置情報をクーポン配布やしつこい広告などのプッシュ配信で使ってしまうと、ユーザーに嫌われてしまいます。その一方で、Putmenuは顧客体験を革新させるために位置情報を利用しています。顧客体験の先に、収集した飲食ビッグデータをアドテクノロジーと連携して活用し、そのお客さまが興味を引きそうな料理や商品の情報をさりげなく適切なタイミングで薦めるのは、店舗のブランディングと広告のROI改善になります。これは、プロモーションの新しい手法になっていくのではないかと思います。

TagCastが拓く未来のサービス

TAGCASTが拓く未来のサービス

ーー本当のビジネスチャンスはTAGCASTにあると先ほど伺いました。TAGCASTで描くことができる未来の可能性について教えてください。

TAGCASTは、電気・ガス・水道のようなインフラになるテクノロジーです。

位置情報を都市空間に整備することで、スマートフォン利用者にその場に応じたサービスを提供できるようになります。

たとえば、ボクシーズでは、千葉ロッテマリーンズの球団公式の総合アプリ「Mアプリ」を開発していますが、球場にTAGCASTを整備することによって、球場IoTを整備して、オーロラビジョンとコネクティッドしたイベントやマップでの球場案内など、球場にいる人が便利になる取り組みを提供しています。飲食店だけでなく、工場や観光などのさまざまな業種で利用でき、その場にいる人の常識を変える体験を提供するのがTAGCASTなのです。

将来、持ち運べるAIスピーカーに「どこの部屋」の「どこのテーブル」に居るのか伝えられたら、とても便利になります。

TAGCASTはさまざまなサービスのインフラとなる可能性を秘めている。

ーー最後に、今後の抱負をお願いします。

2020年の国際的なイベントを契機に世界中の方々がスマートフォンを持って日本を訪れます。それまでに、できるだけ我々のTAGCASTを整備して、ストレスフリーのサービスを少しでも多く提供していくことが目標です。また、今はBluetoothで位置情報を提供していますが、今後は新たなセンサーデバイスが出てくると思いますので、それらの技術を追いながら、2020年以降もより便利でより快適なサービスを作っていきたいと考えています。

未来のパートナーを募集中です

未来のパートナーを募集中です

  • 資金調達・販売協力

    サービスを世の中に広げていく資金やマーケティングの力がまだまだ足りません。

  • パートナー募集

    TAGCASTの可能性を知っていただき、我々の技術と特許を活用して共同でジョイントベンチャーを作っていきたいです。

  • 人材募集

    テクノロジーで世の中を変えたいと熱い思いを持っているエンジニアの方を大募集中です。

ボクシーズ

TEL:03-6268-9991 
WEB:http://boxyz.com/

タグキャスト

TEL:03-3239-6821 
WEB:http://tagcast.jp/

鳥居 暁氏

ボクシーズ 代表取締役 / タグキャスト 代表取締役社長

1975年生まれ。東京電機大学電子工学科卒。98年に富士通にシステムエンジニアとして入社し、信販基幹システムの開発標準化、インフラの設計構築に携わる。クラビット株式会社(現:ブロードメディア株式会社)の営業を経て、2006年ボクシーズを設立。2012年12月に屋内位置情報サービスのTAGCASTを発表し、2013年5月にタグキャストとして分社化。TAGCASTは、CEATEC AWARD 2014のソーシャル・イノベーション部門でグランプリを受賞。2015年5月に帝人株式会社とテーブルを特定できる表面認証ビーコン「PaperBeacon」を発表。2016年と2017年にMicrosoft Innovation Awardファイナリストを受賞。2017年7月に“注文 0 分” “会計 0 分”世界初の飲食店を開始。2017年11月にMCPC award 2017で総務大臣賞を受賞。

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