鳥居 暁氏 ボクシーズ 代表取締役 タグキャスト 代表取締役社長
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トイレやレストランの待ち時間にイライラ。テーマパークの混雑でせっかくの思い出が台無しに…。誰もが経験する行列の待ち時間が、ビッグデータとAIの進化により近い将来なくなるかもしれない。連載第2回は、「空席情報」が創り出す、新たなビジネスモデル誕生の現場に迫る。

バカン

2016年設立。主要事業はコミュニティ型の空席情報検索プラットフォームの開発、運営。 トイレの空席情報をリアルタイムに利用者に届けるクラウド型のトイレ空席管理IoTサービス「Throne」(スローン)や店内の混雑状況をセンサーとカメラで自動取得あらゆる空席情報を検索できるプラットフォーム「VACAN」(バカン)を提供。

「主力事業の空席情報検索プラットフォーム誕生のきっかけは、子どもが生まれたことだったんです」。現在バカンで社長を務める河野 剛進 氏が懐かしそうに語る。子供連れで食事に行った際、行列で待たされ、子供が泣いてしまった嫌な経験が、河野氏の心に灯をともした。そして家族と過ごす時間を少しでも大事にしたいという思いから誕生したのが、トイレの空席情報をリアルタイムに利用者に届けるクラウド型のトイレ空席管理IoTサービス「Throne」 (スローン)。この開発を契機に、「空席情報」を軸としたビジネスにギアがかかった。間もなく本格的にサービス展開される新サービス「VACAN」(バカン)はその代表的サービスだ。現在、大宮駅において東日本旅客鉄道株式会社と共同で、点在する複数のレストランやみどりの窓口で実証実験が行われている。空き状況が一目でわかるデジタルサイネージを設置し、来店者の店舗への送客状況や利用者の満足度を計測するもので、多方面から注目を集めている。「空席待ちゼロ」の先にある未来のビジネスとは――。

子どもが「時間」の価値を教えてくれた

子どもが「時間」の価値を教えてくれた

ーーもともと起業を志されたのはどういったきっかけがあったのでしょう。

大学に入って都会に出てきたときに、地方との違いに愕然としました。都会はこんなに発展しているのに、地方はシャッター商店街だらけ。このまま自分の生まれ故郷が廃れていくことに危機感を感じたのです。学生のころに起業家の方々とお会いする機会があり、日本や世界を盛り上げる取り組みを見て、起業を意識しました。自分もいつか起業して、新しい価値を生み出しながら、生まれた宮崎はもちろん、日本全体を活性化させたいと考えるようになりました。最初は日本を俯瞰できるようなシンクタンクで経験を積み、次はよりグローバルで、成長が見込める事業会社の立場で起業に向けた準備を行いました。

ーー「空席情報」をビジネスにするアイデアの源泉はお子さん誕生がきっかけだったそうですね。

はい、もともと仕事中心の生活を送っていたのですが、子どもの誕生をきっかけに、家族との時間も大切にしたいと考えるようになりました。子どもを連れて食事に行くと、行列で待たされて子供が泣いてしまい、結局、食べずに帰ってしまうことがあるんですね。家族との楽しい時間も、その瞬間に悲しい体験となってしまいます。また、外出時に授乳室がなかなか見つからず、妻の外出が難しくなってしまったことも度々ありました。そんな自分の子育て生活のなかで感じた課題を何とかしたい、という思いが発想の原点です。

もともと、普遍的なニーズに応えるサービスをやりたいと考えていましたが、それがこれらの経験から「時間」というキーワードに帰着しました。

行きたい場所が空いているかどうか、瞬時にわかることで、無駄な時間を減らし、楽しい時間に変えることができるのでは。徐々に空室情報ビジネスが形作られていきました。

リアルな場での空席情報が一目でわかる

リアルな場での空席情報が一目でわかる

ーー具体的には、どのようにサービスを作っていったのでしょうか。

最初に作ったのは、トイレの空き情報がわかる「Throne」(スローン)というサービスです。これも、私自身がトイレの行列で不便を感じた経験から生まれました。トイレが混雑して何回も行ったり来たり。この問題を解決したいと思っていました。導入先は、会社やホールをイメージしました。たとえば、仕事をしている途中でトイレに行き、行列で待たされると、思考も途切れてしまい、生産性が下がったり、ストレスがたまる原因となったりしてしまいますよね。トイレの空き状況が瞬時にわかることで、生産性を改善するのではないかと考えています。また、カプセルホテルに導入した際は、トイレとともにお風呂の混雑状況をわかるようにしました。お風呂の混雑のストレスが緩和され、顧客満足度向上に一役買っています。

ーー現在は飲食店を中心にサービスを展開されていますね。

「VACAN」(バカン)というサービスです。飲食店を中心に空席情報をデジタルサイネージでお客さんに伝えられるようにする実証実験を行っています。飲食店を訪れる際、グルメサイトで空席情報を確認したり、予約ができたりすればよいのですが、そういうケースばかりではないですよね。トイレやフードコート、カフェ、授乳室など、予約できない領域の空間は非常に多くあると考えました。飲食業界は働き手不足で、お店側がランチ予約のオペレーションまで手が回らないという話も聞いたことがあります。空席情報がリアルタイムにわかるようになれば、利用者は待たずにすむし、導入した飲食店は顧客満足度や回転率の向上なども目指せます。レストランが複数入ったビルの1階にデジタルサイネージで各店舗の混雑状況を表示させれば、どのような店舗が入っているかを見つけやすくなり、空きのある店舗がフックとなってお客様が巡回し、噴水効果やシャワー効果によって顧客単価上昇を期待することができます。将来的には、リアルな場でどのような人がどのような行動をしているかを可視化することで、Webの世界では当たり前となっている行動解析などを実現したいと考えています。

スマートフォンやタブレットでもリアルタイムで空席が分かるのは、痒い所に手が届くサービスといえる。

ーー起業からVACANのサービス構築まで、好調に事業を展開されていますが、成功の秘訣などはあるのでしょうか。

このようなサービスをやりたいと考えている人は少なからずいると思うのですが、我々の場合はタイミングがよかったのではないかと思いますね。たとえば、AIの技術1つ取ってみても、リアルタイムで解析できるような高速化が実現できたのは最近ですし、インフラが急速に整備され、センサーの価格も下がって利用しやすくなっています。また、このようなサービスを求める需要が顕在化してきたことも感じていますね。人口が減少する中で、飲食店業界のお客様も、いかに来店者に喜んでもらうか、お店をどのように見つけてもらうかと意識するようになり、ECではできない、現実世界での体験をいかによくするかを考えるようになっていると思います。。

ワクワクの連鎖が新たなサービスを生み出す

ワクワクの連鎖が新たなサービスを生み出す

ーー起業時には、どのようなご苦労がありましたか。

IoT特有の難しさだとは思うのですが、ハードウェアを安定稼働させることに非常に苦労しました。プロトタイプはすぐ作れても、そこから先の製品として安定稼働させ、サービスとして提供できるレベルまで持って行くのは非常に大変でした。我々は、ワクワクの連鎖を生み出すトップチームということを掲げていますが、苦しい局面でもワクワクすることが面白いサービスにつながり、よい品質のサービスにつながると考えています。自分たちが作りたい世界を想像し、利用してくれる人が喜ぶ顔を想像しながらワクワクすることを大事にしているのです。開発で大変だったときも、文化祭的なノリで手分けしながら乗り切り、「これが出来たら俺たちかっこいいよね」と声を掛け合いながらサービスを作っていきました。

ーー資金面やパートナーの面での苦労はありましたか。

資金調達は、これまでやったことがない未知の世界で、どのような人に提供してもらうのがいいのか、それによってどのような影響が出るのかがわからない状態でスタートしました。さまざまな人からアドバイスをいただきましたが、意思決定するのは自分なので非常に不安でしたね。結果的に、エンジェル投資家の方に支援してもらったことは非常に良かったと感じています。そのおかげで、ネットワークや知見を得ることができ、苦しいときに一緒になって前向きに支援してくれたと感謝しています。

スタートアップ支援家の方々も、スタートアップの経営者を集めたコミュニティを作って情報交換できるようになるなどの支援を行ってくれました。また、東京都の支援によって、大企業の新規事業支援の担当者とのコネクションもでき、大企業がどのようなスタートアップと付き合いたいと考えているかを知ることができたことも大きいですね。「小さくなるな」と言われ、「将来どうなりたいかを強く思っている起業家と僕たちは付き合いたい」ということを大企業のメンターの方に教えてもらいました。

インフラを探している中で、マイクロソフトとのご縁もでき、Microsoft BizSparkというスタートアップ支援プログラムに参加させていただきました。Webサービスを広げるなかで、Microsoft Azureを使えば利用者が増えても柔軟にスケールできることになり、安心して事業を拡大することができます。マイクロソフトが、セキュリティが高く、安定して利用できるサービスを提供してインフラ部分を支えてくれたおかげで、事業を行えていると感じています。お客様からセキュリティは大丈夫か、安定して提供できるのか、などを聞かれることが多いのですが、Microsoft Azureを使っていると答えると安心してもらえますね。サポート体制も手厚く、エバンジェリストが我々のエンジニアを支援してくれて、SNSでもやり取りできるような気軽な関係となったことも、サービスを素早く開発できた一因だと思います。

ーー最後に今後の抱負を教えてください。

現在は商業施設や百貨店がお客さまですが、フードコートや大学の食堂などにも可能性があると考えています。また、観光地に導入すれば、人気の場所の行列での待ち時間を低減できます。逆に知名度が低くても、面白い観光スポットを知るきっかけにもなる。観光地全体の活性化につながります。同じように、商店街全体で我々のサービスを使うことによって、立地は悪くてもよいお店をお客様に見つけてもらい、商店街全体が盛り上がっていければいいですね。起業を考えるキッカケにもなった、地方の活性化に貢献したいという思いがありますから。日本は人口が減少していますが、特にアジアでは2050年頃までは人口が増加していくと思うので、グローバル展開も目指していきます。

混雑がわかるということは、将来を予測する材料にもなります。リアルな場所で、人がどう動き、モノがどのように流れているかが可視化されることで、その場所の価値を最大限に引き出すことができれば理想的ですね。

未来のパートナーを募集中です

未来のパートナーを募集中です

  • パートナー募集

    営業体制を構築してくれる、例えばディベロッパーに対してより良い提案をするコンサルティング営業のご協力を頂ける会社などを募集中です。

  • 用途募集

    飲食店だけでなく、駐輪場や駐車場など、画像認識やセンサーと連携した新しいサービスの用途でサービス展開できる企業を募集しています。

  • 人材募集

    利用する方がより使いやすいサービスになるよう、アプリのエンジニアやWebサービスを一緒に立ち上げてくれるエンジニアを募集中です。

河野 剛進

株式会社バカン 代表取締役

東京工業大学大学院にてMOT(Management of Technology:技術経営)を学んだ後、市場リスク管理やアルゴリズミックトレーディングなどの金融領域における研究員として三菱総合研究所に入社。グリーで、事業戦略、経営管理、新規事業立ち上げ、および米国での財務・会計に従事する。エルピクセル株式会社では経営企画室長を務め、2016年6月に株式会社バカンを設立。現在に至る。社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。

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